ProNASのサイトのトップページを眺めていたら,Brahney J et al. "Constraining the atmospheric limb of the plastic cycle"(ProNAS,2021年4月20日)とEllis EC et al. "People have shaped most of terrestrial nature for at least 12,000 years"(ProNAS,2021年4月27日)が目に付いた。前者は海洋汚染で大問題になっているマイクロプラスティックを離れた場所に運ぶ大気の役割について,観察データと大気移動モデルを使って分析し,米国西部の大気中のマイクロプラスティックは主に道路(84%),海洋(11%),農業土壌塵(5%)を含む二次的な再排出から来ていることを示したというもので,後者は,1万年前までに人類が火を使ったり狩猟をしたり動物の家畜化や植物の栽培化などを通してさまざまな程度の土地利用をしてきたが,地上の自然が大きく破壊的に変わったのは最近のことだというパラダイムが自然科学者や保全主義者や政治家の間に広まっていたのを批判し,12000年前でさえ人類社会は地上に広がって温帯林の95%,熱帯林の90%に居住しており,地上の3/4近くは人類が住んでいたこと,現在の脊椎動物の種の豊かさや生物多様性が過去の人類の居住パタンに大きく影響されてきたことを示した論文のようだ。どちらも人類生態学者としては目を通しておかねばならない。
Bernal JL et al. "Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant"(NEJM,2021年7月21日)は,UKでアルファ株とデルタ株について,ファイザーのmRNAワクチン(BNT162b2)とアストラゼネカのウイルスベクターワクチン(ChadOX1 nCoV-19)を1回または2回接種した人での有効性を評価した論文。アルファ株に対しては1回接種でも50%近い有効性があり,2回接種ならファイザーで93.7%,アストラゼネカで74.5%の有効性があったが,デルタ株に対しては1回接種だとファイザーで35.6%,アストラゼネカで30.0%の有効性しかなく,2回接種でもファイザーで88.0%,アストラゼネカでは67.0%の有効性にとどまっていたという報告。