Taylor L "Covid-19: WHO calls for booster shot ban until end of September"(BMJのNews,2021年8月5日)は,ワクチン接種が進んでいるイスラエルや欧米で3回目接種(Booster shot)をしようとしているのを,せっかくCOVAXファシリティを作って途上国にもワクチンが公平に行き渡るようにしたかったのに,Boosterのためにワクチンを優先使用されたら,ますます低所得国のワクチン接種が遅れてしまって世界のCOVID-19終息が遠くなる(アフリカでは7月下旬にCOVID-19による死亡が80%増えたが,ワクチン2回接種受けた人は2%しかいない)ということで,WHOのアダノム事務総長が9月末までBooster shotは待ってくれと呼びかけた話。しかしたぶんイスラエルや欧米はこの呼びかけを無視して3回目接種に走りそう。日本は2回目接種が終わらないので9月末までならBooster shotはしないと思うが。このようにCOVAXファシリティによって世界に公平にワクチンを行き渡らせる構想は画餅に帰したことを考えると,Taylor L "Why Cuba developed its own covid vaccine---and what happened next"(BMJのFeature,2021年8月5日)で同じジャーナリストLuke Taylorが,キューバがワクチンを独自開発した理由を読み解いているのに合点がいく。そもそもキューバはGDPの割に医療水準は高くて,チェルノブイリで被爆して白血病や甲状腺がんになった子どもの治療を引き受けたりしてきたし,HIV/AIDSのARTでも安価な薬の開発へのブラジルとタイの貢献は有名だが,実はキューバもARTに使える薬を独自開発してきた国だが,この記事でTaylorは,キューバはワクチンについても国家ワクチン接種プログラムに入っている11種類のワクチンのうち8種類を国内生産していて,ポリオ,ジフテリア,麻疹,風疹,百日咳は排除に成功しているし,血清群B髄膜炎菌ワクチンは40ヶ国以上に輸出していると書いている。そういう背景の元に,キューバ政府はCOVID-19のワクチンとしてAbdala(第三相臨床試験の結果,3回接種で92.28%の発症予防効果があり,重症化や死亡は100%防げるとCIGBが発表している)を7月9日に認可し,中南米で最初にCOVID-19のワクチン開発に成功した国となったとのこと。その後もSoberana 1,Soberana 2,Soberana Plus,Mambisaというワクチン候補を開発しているそうで,これらはすべてNovavaxと同じくタンパクサブユニットのワクチンで,mRNAワクチンと違って極端な低温保管は必要なく,製造コストも安いとのこと。ただ,ベネズエラが6月24日からキューバのワクチン輸入を開始したが,他のワクチンが足りないにもかかわらず拒否する人が多いので,PAHOが,キューバ政府に対して,もしAbdalaについて第一相から第三相までの臨床試験が完了しているのなら,学術雑誌にデータを公表することが非常に重要で,それができればCOVAXのスキームを通して他の低中所得国にAbdalaを配布することができると勧めているとのこと。まあ確かに学術雑誌に論文が載っていないとなあ。