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【第1312回】 グローバルウェルフェアプロジェクトの集会(2023年3月23日)
- 6:00起床。81.90 kg。
- 牛肉野菜炒めを作って玄米ご飯と食べ、プラ容器包装を集積場所に出してから六甲へ。朝からグローバルウェルフェアプロジェクトの国際シンポジウムに参加。
- 最初の発表は勝ニ先生によるウイルス性下痢の話。ウイルス性下痢のグループは2015年から共同研究開始。アイルランガ+神戸+感染研(片山先生、後に北里大学へ異動)での研究。主なターゲットはロタ、ノロ、サポ。いずれもRNAウイルス。ロタは組織培養可能だが、ノロとサポはまだできない。インドネシア各地でサンプリング。
- ロタは乳幼児の重症下痢の最も重要な原因。ワクチンはあるが2016年に世界で13万人の5歳未満児がロタで死亡。ロタとはラテン語で車輪を意味する。発見者が電顕像から名付けた。AからJまでの型がある。通常ロタといえばAのこと。ゲノムは二本鎖RNAからなる。11の遺伝子セグメントからなる。6つの構造タンパクと6つの非構造タンパクをコードしている。そのうち3つのタンパクが抗原性に強く関わる。2つ以上の型の同時感染により、児の体内で組み換え(genetic reassortment)が起こる。ロタワクチンはロタテック(5価ワクチン)とロタリックス(1価)がメジャーで、いずれも経口投与する。液体として冷蔵保存だが、2年ないし3年保存可能。真空凍結乾燥のものも既開発。馬のロタウイルスG3に似た型(e-G3)がインドネシアでは人に感染している。次世代シークエンサーで解析し、内海さんが筆頭で2018年に論文発表。東部ジャワでは2015-2022の間にインドネシアで優占しているロタウイルスの型は大きく変わった。e-G3からG9やG1にシフト。ワクチン戦略も変更する必要。今年のJMVに載ったYamani LN et al.論文でG12P RVAについて報告、組み換えが起こったことを示唆。
- ノロは一本鎖RNAウイルス。全年齢に下痢を起こす。糞口感染だけでなく、人から人に接触感染する。日本では冬に流行するが亜熱帯のインドネシアではどうか。一年中患者が出ていることがわかった。遺伝子型も多様。感染力が強く10-100のウイルス粒子で感染する。無症候感染者も多くのウイルス粒子を排出する。ローカルな流行が起きると下水経由で海水を汚染、貝が濃縮してアウトブレイクに至ると想定される。無症候感染ボランティアから便サンプルを得て分析。内海さんが筆頭で2017年に論文発表。家庭内で人をスイッチしながら、違う遺伝子型のノロウイルスの感染が断続的に長期間続くというデータがある(Juniastuti et al.投稿準備中)。
- 2人目の発表はアイルランガ大学からSITIさん。HIV。サブタイプの地理的分布。CRF01_AE:アフリカからヨーロッパ、アジア、北米へ拡散。主に性行為を介して感染。インドネシアも全土を通じてCRF01_AEが優占している。パプアなど東の方はやや少なくB型が多い。タイ経由がメインっぽい。系統樹解析の結果からの解釈が主だったが、系統樹作成アルゴリズムを変えた場合の安定性はどうなのか? と思ったが、この場で質問するにはマニアックすぎる気もするので控えた。
- 質疑応答は小川先生の院生からたくさんの質問が出た。
- 休憩を挟んで、次の発表は梅屋先生。ウガンダでのフィールドワークに基づく、"Gospel sounds like the witches' spell"というタイトルの話。キリスト教徒への弾圧から暴君として知られるアミン元大統領の動画から始まった。16ミリフィルムで撮影されデジタル化された動画資料がたくさんあり、それを分析した。tipo、lamなど自発的なナラティブの方が雄弁。エスノグラフィー的な分析。ジョパドーラ語でtipoとは殺された人のゴーストのこと。儀礼などで避けることは可能。時間が経つとtipoはchenになる。lamは呪い。老人の権利であったり。遠く離れるとlamの効力は弱まる。アミンの右腕ACK(Ofumbi)の死とともにオカルティックな噂が流れたときも、tipo絡みの話がたくさん。modernityの呪いに掛かっていたとも見ることができる。
- 次は宮本さんのホンジュラスの報告。CCRAM-10でコミュニティレジリエンスを、ソーシャル・キャピタルスケールは別途調べ、他に基本情報も得て、関連性を分析。ともかくbondingが災害準備性に逆効果というのが最大の発見。
- 次は小川先生。モンゴルでのLower Secondary Educationにおける教授法と成績の分析。MDGs2+3からSDG4へという流れを背景に。就学率だけではなく教育の質が重要に。モンゴルは2050年までの教育計画が出ている。公教育は無料。有料の私立学校もある。合わせて22万人がLower Secondaryに就学中。9割以上。数学の成績と学費の散布図。公立学校はピンキリ。私立学校は60%以上の成績(ただし私立学校の中では学費と成績に相関はなさそう)。私学2つ、公立4つで教員と生徒の活動を調査、分析。公立のうち2つは農村部にある。授業の様子を録画して分析。1クラス当たり5日記録。クラスのパタンを2つに大別(板書中心か、アクティブラーニングか)、教員の活動区分は13カテゴリに分けて整理。生徒の行動は11カテゴリに区分。好成績私立学校では科目によって(+同じ科目でも単元によって)教員の時間配分が大きく異なっていたが、成績の悪い公立学校では違う科目でも時間配分が似ていた。成績の悪い学校では、授業についての説明に長時間が費やされていた。個人指導の時間が好成績学校>低成績学校。成績の低い学校ほどアクティブラーニングの時間が短くノンラーニングの時間が長い傾向があった。
- 最後の総合討論では小川先生の院生から宮本さんにたくさんの質問があった。なぜbridgeingはpositiveなのにbondingがresilienceにnegativeな関連をもっていたのかについては司会の方からも追加質問があり、そこはこの研究のfindingの肝でもあるので、伝わって良かったと思う。
- 長い階段を登って鶴甲から六甲に移動し、フロンティア館6階の国際部に行って4月からのアジア・オセアニア部門長としての挨拶とか写真撮影とか。その後は名谷に移動し、メール送受信とかしていたが、疲れたので終わっていないが帰宅。
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