Latest update on 2018年3月7日 (水) at 15:42:47.
【第721回】 また木曜日になった(2014年7月3日)
- 気がついたら5:30だった。椅子の上で眠っていた。医療人類学の準備がまだ終わっていないので,7:00までに終わらせたい。
- 6:15現在,まだ終わらない。戸外は雨が降っている。早めに六甲に行っておくべきだろう。
- 午前中の講義はPhysical Activity Assessmentのreviewをしたので疲れた。
- 午後は人口学特講と医療人類学特講なわけだが,人口学特講では年齢別初婚確率のモデルと年齢別有配偶出生率と年齢別出生率のモデルをカバーした。Rコードを示して説明したが,理解度は微妙かも。医療人類学特講のディベートテーマは,製薬会社によるDrug Warsは正当化されるかどうかについて。いろいろな議論が出て面白かった。その後,儀礼や信仰が精神状態を介して健康に及ぼす影響について簡単に解説し,来週のディベートテーマとして菜食主義を挙げて完了。
- 名谷に戻って郵便物を受け取った。人口問題研究と公衆衛生学雑誌の最新号に加え,Amazonに注文していた"Agent-Based Computational Demography"という本(略してABCD本)が届いたのでパラパラとめくってみたが,少し期待はずれかも。高かったんだがなあ。Amazonからの箱には,Soul Flower UnionのCDが2枚入っていた。Soul Flower Unionはデビュー盤の『カムイ・イピリマ』を入手し,時々聞いていたのだが,今回改めてAmazonを眺めていて欲しくなった『カンテ・ディアスポラ』と『Exile on Main Beach』を買ってみたもの。帰ったら聴いてみよう。
- ダイエーでズボンを買い,直通終バスで帰宅。名谷駅のローソンで買った食パンのうち2枚に,マンゴーコンポートを載せて晩飯。
- 高野秀行『西南シルクロードは密林に消える』講談社文庫,ISBN 978-4-06-276501-5(Amazon | honto | e-hon)を読了。若かったからできたのだろうが,やったことが無茶苦茶である。ゲリラ部隊にエスコートして貰って密入国とか,普通に考えたら,絶対にやろうとは思わない。少数民族にとっては,元々自分たちの住んでいたところに後から勝手に国境ができただけのこと(p.419)で,自由に往来しているし,それは黙認されている。なるほど,パプアニューギニアのギデラと呼ばれる人たちが,ビザ無しでオーストラリアのトレス海峡諸島と往来したり,逆にトレス海峡諸島民がビザ無しでパプアニューギニアに来たりするのと一緒だ。ぼくも,ギデラのフィールド調査中に,連れて行って貰いたいなあと考えたことはあった。けれども,いろいろ考えたらできなかった。そこをやってしまうのが高野さんの凄いところだ。誰も行ったことのない場所に行き,誰も見たことのないものを見て,誰も知らない話を書きたいという辺境ルポライターの面目躍如といったところ。本書で綴られた高野さんの行動は,目的は主張するのだけれども,途中経過は流れに任せているので(またそうするしかない。そこはフィールドワークもある程度共通),探検でも冒険でもないのだが(最後の方で,高野さん自ら『私は「モノ」として運ばれていたのだ』と書いている),先入観や偏見をもたずに,実際に体験したことを鋭く切り取り,文献的知識から世界史あるいはアジア地政学的に位置づけた解釈を書いてくれているので,実に読み応えがあって,大変面白かった。以下メモ。(1)p.50の地名にtypo。麻糖鎮と麻塘鎮はどちらが正しいのか?(2)p.83の鵜飼いの話。先日の人類生態学研究会で聴いた江西省の鵜飼いとはまた違った方法でやっていて興味深い。(3)p.238のジャングル歩行におけるヒル襲撃の鬱陶しさの描写は,ギデラの村と村の間を歩いたときに経験したそれを思い出した。ヒルを悪役にしたハリウッド映画構想は,読んだだけで想像してしまった。近い映像が脳裏に浮かぶものとしては,梶尾真治の『サラマンダー殲滅』における「飛びナメ」か。なお,ヒルは軟体動物ではなく,分類上はミミズと同じ環形動物である。(4)p.352「ヤムイモはここが原産地である」は,確かにインドシナ半島起源説が広く受け入れられてはいるが学術的には異論もあるところ(このページなど参照)。(5)p.359『「観念の縛り」というのはかくも強烈』という話は,昨日の医療人類学特講で説明したネタの事例に使えそうだな。(6)p.372「東アジア文化圏」の話は,オセアニアの人々もインスタントラーメンも味の素も好きなので,むしろモンゴロイド文化圏なのでは?
△Read/Write COMMENTS
▼前【720】(会議と講義準備(2014年7月2日)
) ▲次【722】(夜行バスで長野へ(2014年7月4日)
) ●Top
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]