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【第1579回】 講義2つ(2017年5月8日)
- 6:30起床。昨夜作ったおかずを温め直して朝食。今日は環境・食品・産業衛生学がある他,原書講読も始まる。さて卒業研究をしている2人は,どれくらいちゃんと論文を読んでくるだろうか。
- 学生2人ともちゃんと読んで予習してきていたが,やはり専門用語の訳し方は知らなかった。それを学ぶのが原書講読の意味の一つだからいいのだが。日本語で専門用語として確立していない場合は無理に訳す必要はなく,カタカナ表記で良いことも多いと知っておくと良い。validとreliableの違いとかefficaciousとeffectiveの違いを訳し分ける必要とかニュアンスの話をした。次回もこの続き。
- 昼はカップ麺で済ませた。水筒にはニルギリを詰めてきたのだが,ダージリンとかシッキムのようなデリケートな紅茶に比べるとボディが強いので水筒保存でもそんなに劣化しないな。Amazonに注文していたステンレス製のコーヒードリッパーが届いたので,このニルギリを飲み尽くしたらコーヒーを淹れようと思う。
- 4限の講義は食品衛生についてで,触れねばならないトピックが多いので時間がギリギリまで掛かってしまった。表示について時間を取り過ぎたので,来年からは経緯の話はやめて現在消費者庁がやっていることに絞ろうと思う。その分,豚肉を生で食べた場合の感染リスクとして寄生虫はもちろんだがE型肝炎のリスクが高いこととか,最近アニサキス感染が増えていることとかを,タイ肝吸虫の話に加えて,食中毒のところをもう少し深めたい。
- ふと目にとまった東大美女図鑑という企画で,医学部健康総合科学科の人が房総半島で釣りをしている写真とともに「実習で」と書かれていたのは,たぶん人類生態学教室が非常勤講師2人とともにやっている医療人類学実習だろう。学部レベルでこういう実習ができるのは大変贅沢で羨ましい。非常勤講師を雇う予算が無いとできないし,それ以上にカリキュラムに余裕が無いとできない実習で,東大以外の保健学科ではまず無理と思う。ちなみに現在健康総合科学科となっているのは,自分の出身学科である保健学科の後身なのだが,他大学の保健学科と最も大きな違いは,必ずしもパラメディカル専門職者を養成するわけではないということだ。ぼくが学生だった頃は1学年36人中で看護コースで看護師・保健師・助産師の国家試験の受験資格を得る人は4人しかおらず,他の32人は医療関連では何の受験資格も得られなかった(ほぼ検査技術科学専攻と同じくらいのラボテクニックは実習するが,統計情報処理と社会調査の実習にも同じくらい力を入れていて,逆に病院実習が皆無だった。病気よりも健康を対象にするのだから当然と思う)。主に理科二類から進学していたが,人が健康に生活することを丸ごと考えようと思ったら文系的なセンスも必要だし工学的なセンスも有効なので,今では理科三類を除く全科類から進学があるようだ(とはいえ,主に理科二類と文科三類からだと思うが)。人の一生のなかで医療の世話になっている時間に比べて,普通は健康に日々を過ごしている時間の方がずっと長いわけだし,保健学科の守備範囲をパラメディカルに限定するのは勿体ない。けれども,多くの大学の保健学科は医療技術短大が併合されて4年制化するのと同時に保健学科と改称したという歴史をもっているため,どうしてもパラメディカルの枠組みから抜け出せない(というか,抜け出そうともしていない。実際高度な知識とスキルをもったパラメディカル養成への社会的ニーズも大きいし)。公衆衛生大学院は,本来なら保健学科がアドレスしても良いはずの対象を扱ってはいるものの,やはり専門職学位としてのMPHをとらせる養成機関としての色合いが強く,健康というテーマに真正面から取り組むものにはなっていない大学が多いように思う。そういうことを考えたら,健康総合科学科(その前は健康科学・看護学科で,その前が保健学科だった)という学科名には誇りをもってアピールすべきと思うのだが,昔からマスメディアに就職する保健学科出身の「美女」たちは,なぜだか医学部卒という肩書きを被せられているのが残念だ(もしかしたら本人は内心嫌なのかもしれないが)。先日東大王とかいうクイズ番組に出ていた八田さんも,人口学の講義に出席していたから学科の後輩なのだが,肩書きは東京大学医学部となっていた。twitterで取り上げられていた方が,もし将来マスメディア関係に進むとしたら,断固として医学部出身ではなくて健康総合科学科出身と主張して欲しい。
- ゴールデンウィーク明けということで,Amazonに注文していた本が何冊も届いた。杉江松恋(2017)『ある日,うっかりPTA』角川書店,ISBN 978-4-04-105257-0(Amazon | honto | e-hon),Chris Brunsdon and Lex Comber (2015) "An Introduction to R for Spatial Analysis & Mapping", Sage Publications, ISBN 978-1-4462-7295-4(Amazon | honto | e-hon),Walter Willett (2013) "Nutritional Epidemiology, 3rd Ed.", Oxford Univ. Press, ISBN 978-0-19-975403-8(Amazon | honto | e-hon),David I Kertzer and Tom Fricke [Eds.] (1997) "Anthropological Demography: Toward a New Synthesis", Unversity of Chicago Press, ISBN 0-226-43196-7(Amazon | honto)である。杉江松恋さんはバトルロワイヤルIIの著者として知ったが,川端君とも知り合いで,PTA会長をしていたことは知っていた。この本はその経験をまとめたもので,3年間も会長をされただけあって,いろいろなことを経験されているし,語り口が大変面白い。長野市での自分の経験(2004年度に副会長として活動の概要を知ってから2005年度に会長をした)と比べてもいろいろ違うのが面白かったが,組織や役割を超えた人のつながりが大事という点は共通しているように思った。BrunsdonとComberの本はフルカラー印刷で空間統計学をわかりやすく説明しているように思った。エビデンスベーストヘルスケア特講で谷村先生をゲストにお呼びしている回の参考書として推薦できるかもしれない。Willettの本は初版は随分前に読んだが,いつの間にか第3版が出ていたことに気づいて買った。514ページから529ページへと厚さは微増だが,"Surrogate sources of dietary information"が無くなり,"Assessment of physical activity in nutritional epidemiology"と"Genetics in dietary analyses"と"Policy applications"が追加されていて,内容は随分違うようだ。
- 湊川公園のスーパーで肉,コンニャク,豆腐,めかぶを買って終バス2本前で帰宅。
- 鶏もも肉とコンニャクとキャベツとピーマンをオリーブオイルで炒め,トウガラシと醤油で味付けしたおかずを作って晩飯を済ませたら睡魔に襲われて眠るしかなかった。
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