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Flu memo

Made by Minato Nakazawa, on 16 July 2009. The latest update was done on 6 April 2011 . Contact address is nminato[at]med.gunma-u.ac.jp ([at] should be replaced by "@").

これまでインフルエンザについてメモで書き散らしてきたことをまとめて採録しておく。公衆衛生学講義資料の疾病予防とスクリーニングの説明と,2009年6月25日の教室セミナーで新型インフルエンザの社会的インパクトについて発表したときの英文プレゼン資料から大半の画像を削除したものも参照されたい。また,2009年12月15日に荒牧で行った1年生向けの講義の資料に加筆修正したものも参照されたい。

2011年4月6日(当日のメモ
2011年3月 31日付け厚生労働省からのニュースリリースで,新型インフルエンザ(A/H1N1)が季節性インフルエンザと変わるところが無くなったので,「新型インフルエンザ等感染症」とは認められなくなったと発表されていた。東日本大震災と原発災害があまりにも大きな問題であるために見過ごすところだったが(当事者にとっては見過ごせない大問題は他にも多々あること――長野県栄村の3月12日未明の地震災害とか――は忘れてはいけないと思う),これで2009年春に始まった「新型インフルエンザ」騒動は終結したことになる。
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2010年2月8日(当日のメモ
昨年11月に書いたメモy_tambeさんからいただいたコメントに返事を書いた。こうしてコメントいただけるのはありがたい。
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2010年2月3日(当日のメモ
基本的に昼飯時に時々しか読んでいないので1ヶ月以上かかってしまったが,漸く瀬名秀明著(鈴木康夫監修)『インフルエンザ21世紀』文春新書,ISBN 978-4-16-660733-4(Amazon | bk1)を読了した。しかし,最後まで読んでも,これが名著だという結論は変わらなかった。最後に高山先生との対談をもってきたのが読後感を引き締めている。インフルエンザについて何か語りたい人は必読の基本文献といえる(もちろん,本書で紹介された専門家の言葉の中には疑問を感じる点もいくつかあるが,それも含めて瀬名さんの書き方がフェアなのが良い)。なお,あとがきの最後に書かれていた言葉「本書の主題であるインフルエンザ・パンデミックは,世界の問題である。よって本書も無償の活動として執筆・監修された。本書の印税の一部は取材費に充てられ,残りのすべてはインフルエンザと直接関係のない慈善事業に寄附される」は深いと思った。欲を言えばどういう慈善事業に寄附されるのかを明示してほしいところだが,プロの作家である瀬名さんが3ヶ月をかけて(それでも本書の内容の広さと深さから言ったら,よくぞ3ヶ月でここまでのものを仕上げたものだと感銘を受けるが)無償でやった活動だという点,ただ脱帽するのみである。
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2010年1月22日(当日のメモ
NEJM論文『インフルエンザ21世紀』を読み進めた。本当に濃い本なので,なかなか読み了えられない。今日のところでは,Reichert TA, Sugaya N, Fedson DS, Glezen WP, Simonsen L, Tashiro M (2001) The Japanese experience with vaccinating schoolchildren against influenza. NEJM, 344: 889-96.(原文pdf)を読まねばと思ったのが収穫だった。『インフルエンザ21世紀』の記述から受けた印象としては,学童へのインフルエンザワクチン集団接種をしていた時期と,インフルエンザ等に起因すると思われる超過死亡が低くなっていた時期が一致しているという,時系列の集団ベース研究のように思われたが,そんなにクリアなんだろうか? 偶々時期が一致(どうやって「一致」といえるのかも,実は難しい問題だと思うが)している他の現象は無いのだろうか? と思われた。ともかく元論文を読んでみなくては何ともいえないが。
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2010年1月20日(当日のメモ
『インフルエンザ21世紀』の続きを読んだ。学際的共同研究の面白さが述べられていたところ,確かにそうだなあと思いつつも,なかなか意思疎通が難しい面があって困ることも多いんだよなあとも思ったり。
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2010年1月7日(当日のメモ
昼はとよだの日替わりランチを食べつつ,久々に瀬名秀明著(鈴木康夫監修)『インフルエンザ21世紀』文春新書,ISBN 978-4-16-660733-4(Amazon | bk1)を読み進めた。主としてウイルス学について書かれている第2章を読んでいて,世をときめく東大医科研の河岡義裕教授が若かりし頃,ウィスコンシンで進めていたインフルエンザウイルス研究のかなりの部分が,瀬名さんの父上である生化学者・鈴木康夫氏との共同研究として達成されたことを知った。これまでも何度か書いてきたが,やはり名著だと思う。インフルエンザウイルスの分類の謎についても歴史的な経緯の説明がきちんとなされていて,もし1980年に,それまで3つの亜型とされていたものを,(免疫沈降法で区別できないからといって)一緒くたにH1亜型としてしまわなかったなら,昨年来の「新型」はそれまでの季節性のH1N1と表記上も区別できたはずだった,ということがわかった。ただ,少し気になった記述が1つ。変異したインフルエンザウイルスが出現する仕組みとして3つを取り上げ,遺伝子再集合によるもの(1)は,点突然変異によるもの(2)や宿主の抵抗性による淘汰によるもの(3)とまったく違うといった主張がされていたように思うが,むしろ,これら3つはそれぞれまったく異なるメカニズムだと言うべきではなかろうか。見方を変えれば,(1)(2)は変異型が生まれる仕組みであるのに対して,(3)は誕生した変異型が定着する仕組みなわけだから,必ずしも(1)と(2)(3)との違いを強調するのは合理的ではないだろう。
それにしても,「はてな」で見つけた書評(千早振る日々さんと自治体職員の読書ノートさん)には概ね同感だったのに対して,アマゾンにあった酷評には驚いた。酷評した方の求めていた情報と本書のターゲットが違っていたとしても,感染症を理解し対策するという視点に立てば本書の重要性がわからないはずはないと思うのだが,そこを切り捨ててしまうとは。
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2009年12月26日(当日のメモ
瀬名さんの本は読み応えがあるだけに時間がかかるのだが,木村盛世『厚労省と新型インフルエンザ』講談社現代新書,ISBN 978-4-06-288026-8(Amazon | bk1)は各駅停車で読むのにちょうどいい長さだった。疫学,公衆衛生学の重要性を訴える主旨はいいと思うんだけれども,事実誤認とか思いこみとか粗すぎる説明とかが多く,突っ込みどころ満載なのがちょっと。後で時間があったら突っ込んでみようと思うが,それより先に某査読を何とかしないと。
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2009年12月24日(当日のメモ
昼,とよだの日替わりを食べつつ,瀬名秀明『インフルエンザ21世紀』文春新書を読む。なかなか深い記述が多くて唸らされる。今年山ほど出たインフルエンザ本の中では一押し。
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2009年12月19日(当日のメモ
瀬名さんは本当にディテールの取捨選択のセンスがいいと思う。WHOが進藤さんとかに配っている端末がiPhoneでなくてブラックベリーだとか,最後の高山先生(群大にも非常勤講師に来ていただいている)との対話が日比谷公園を歩いて抜けた先にあるホテルのカフェで行われたとかいうディテールは臨場感を高める。それに対して,取材の過程では本に書かれたことの10倍くらいの情報量が得られたはずだけれども,省いた方が物事の筋道がわかりやすくなるようなディテールもあるので,そこはかなり大胆にばっさりと捨てていると思う(書かれなかったことについての想像だから,これが当たっているという保証はないが,たぶん当たっていると思う)。小説も『パラサイト・イブ』や『ブレイン・ヴァレー』に比べると『デカルトの密室』の方が遥かに完成度が高くなっていると思うけれども,やはり瀬名さんは天性のサイエンス・コミュニケータであって,こういう仕事での表現力と構成力は世界でもトップクラスだと思う。
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2009年12月17日(当日のメモ
瀬名秀明著(鈴木康夫監修)『インフルエンザ21世紀』文春新書,ISBN 978-4-16-660733-4(Amazon | bk1)は,いきなり,「まえがき」で痺れた。夜の地球儀(欲しい!)によって地球上のヒトの営みのネットワークを想像しながらインフルエンザを考えるという導入は科学的好奇心をそそりつつも,優れて詩的で美しいイメージが浮かぶ。危機感を煽る本やウイルスそのものについての解説書やHow to本は多いのだが,これほど総合的に(いうなれば公衆衛生学に近い)立場で「インフルエンザ」という対象を捉えようとした本は,山本太郎『新型インフルエンザ 世界がふるえる日』岩波新書,ISBN 4-00-431035-0(Amazon | bk1)(ただし,山本太郎本の「新型」はH5N1高病原性鳥インフルエンザがヒトからヒトに感染する能力を備えた場合を想定している)以来で,かつ,そのパースペクティブは山本太郎本を凌駕してさえいるように感じる。その分,厚さも山本太郎本の倍くらいあるのだが,これを正味3ヶ月で仕上げられたとは凄すぎる。瀬名さんがサイエンスコミュニケータとして凄いのは,冒頭で発揮されている詩的表現力もさることながら,いわば構成力というか,横道に逸れそうなところや不要なディテールを捨象する力だと思う。短期間でこれだけ取材したら飽和しそうなものだが,うまく取捨選択して,すっと頭に入ってくるストーリーを作り上げていることに感心した(まだ読んでいる途中だが)。
結局,先日触れたJAMAの論文を紹介することにした。RCTにおける非劣性試験(Non-inferiority test)の考え方は面白いのだけれども,先行研究を検索しているときにどこかで見た批判の通り,どこまでの差ならば劣っていないとして受け入れるという基準値の決め方が曖昧なところが弱点かと思う。あと,この検定をするために必要なサンプルサイズの計算が,どうしても本文と微妙に合わないのが困った。Christensen E (2007) J. Hepatol., 46: 947-954.の説明がとてもわかりやすかったのだが,そこで説明されている式を使うと,JAMAの論文に書かれているサンプルサイズ計算部分の後半とはぴったり合うのだが,前半と合わないのだ。この論文のキモは,看護師が発熱している呼吸器系患者のケアをするときに着用するのが普通のサージカルマスクでもN95レスピレータに比べて9%以上は防御効果が劣っていないという点にあるわけだが,同じ割合だったらサンプルサイズが小さい方が信頼区間は広くなるはずで,下限がマイナス9%を下回る可能性も増えるはずだから,「サンプルサイズが足りなかったんじゃないか」という批判を免れることができる(2群間で有意差がないというだけでは,サンプルサイズが小さくて差を検出できなかっただけという可能性を否定できない。もちろん,power.prop.test()で,予想される差を検出するのに必要なサンプルサイズを計算することはできるが,通常それはきわめて大きい値になる)。
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2009年12月16日(当日のメモ
高崎駅での乗り継ぎ待ち時間にくまざわ書店に寄り,瀬名秀明著(鈴木康夫監修)『インフルエンザ21世紀』文春新書,ISBN 978-4-16-660733-4(Amazon | bk1)と,はやみねかおる『都会のトム&ソーヤБ祺人は夢に舞う〈理論編〉≫』,講談社,ISBN 978-4-06-269427-8(Amazon | bk1)を買った。後者は子供たちのリクエストによるのだが,前者はパラパラと見ただけで瀬名さんの本気を感じた。昨日まで数日かけて作った資料など,これに比べたらまるで話にならない(当り前だが)。『ミトコンドリアと生きる』に匹敵する名著の予感がする。サイエンス・コミュニケータとしての瀬名さんの実力が存分に発揮されたのだろうという面と,インフルエンザウイルスを地道に研究されてこられた(そして瀬名さんの父上でもある)鈴木康夫氏の力とがうまく噛み合った結果なのだろう。
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2009年12月15日(当日のメモ
7時に起きて講義資料作りを再開した。「新型」インフルエンザ対策への公衆衛生学的視点などというタイトルにしてしまい,全学部1年生からの選択の講義なので,工学部とか社会情報学部とか教育学部の学生にもわかるように話さなくてはいけないし,インフルエンザの基礎的な話もしなくてはいけないだろうし,「新型」に関する情報は日々激しくアップデートされているために講義準備が大変になってしまったのである。
カギカッコつきで「新型」と書いているのは,揶揄しているのではなく,この言葉がただ新しい型という意味ではなく,特定のウイルス株を指す固有名詞であることを強調しているだけである。そう書かざるを得ないところが,インフルエンザウイルスの呼称が,分類体系として破綻している,少なくとも不十分であることを意味していると思う。
時間概念を含んでいないのにrateと呼ぶのが疫学用語として不適切だという示唆には同感だけれども,割合の英語はproportionであるべきで,ratioではないと思う。
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2009年12月8日(当日のメモ
奥村さんのblogのコメントで知ったが,変な記事だ。死亡率でなく致命率(CFR)のことだと思うが,日本の方がずっと低いんだけどなあ。この記者さん,日本のことはどうだと思ってこの記事を書いたんだろうか。あくまで現時点では,だが,世界平均とされる数値の方が,平均してはいけない値を含んでいる可能性の方が高いと思うが。
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2009年11月26日(当日のメモ
 このところ,三中信宏『分類思考の世界:なぜヒトは万物を「種」に分けるのか』講談社現代新書,ISBN 978-4-06-288014-5(Amazon | bk1)を読んでいる。相変わらず古今東西縦横無尽に話がつながっていくのは凄いと思うが,前著『系統樹思考の世界』よりは,つながりを追いやすいように感じるのは慣れか? 各章のタイトルのリズムが良いのと,日常から非日常を経て形而上へというジャンプの仕方もこなれているように思うので,そのおかげかもしれない。本書の結論というか着地点は,「種」を発見するとか「分類」を構築することが「パターン認識」である(p.299)と喝破し(注:中澤の趣味としては,patternは「パターン」でなくて「パタン」と表記したいが),「種の実在」に引導を渡したことだと思うし,その点は得心がいく。
 ただ,「分類」がヒトに備わった本能のようなものであるとしても,それがヒトの世界認識のために役に立つことは確かだろう。1つ1つの事象が個物としてしか認識できなければ,我々はまともに他人とコミュニケーションできないはずだ。そこで思うに,ある分類体系が多くのヒトに共通するパタン認識として意味をもつためには,同じところに分類されたものは,できるだけ同じ性質をもっている必要があるのではないか。
 この視点からすると,インフルエンザウイルスの分類はまともに機能していないと思う。つまり,「季節性」のA型インフルエンザウイルスと「新型」のA型インフルエンザウイルスが,同じH1N1という分類に属していながらも感染力や病原性などに大きな違いがあるというのなら,HA(hemagglutinin)が16亜型,NA(neuraminidase)が9亜型あって,それぞれ1番目の亜型からなるというH1N1という分類は,機能に関して内部の共通性を欠いた分類だと言わざるを得ない。
 そもそも,HAはホスト細胞表面の受容体であるシアル酸に結合することによって細胞内への侵入の最初の段階を果たし,NAは細胞内で増えたインフルエンザウイルスを細胞表面のシアル酸から切り離して次の細胞へ送り出すところで主に働いていて,ともにウイルスvirionの表面にあり,そのうちHAがホストの抗体の主な標的となるため,感染力は主にHAの亜型によって決まると考えられている。HAとNAの亜型によってインフルエンザウイルスを分類することは,その意味では妥当なのだろう。
 問題は,同じH1なのにヒト由来と豚由来で大きく異なり,しかも同じヒト由来のH1でも多様性があるという点にある。「新型」は,『PB2とPA分節は北米の鳥ウイルス由来,PB1分節はヒトのH3N2亜型ウイルス由来,HA(H1),NP,NS分節は古くから豚で蔓延していたウイルス由来,NA(N1)とM分節はユーラシアの鳥インフルエンザウイルスが豚に適合し蔓延していたウイルス由来,という四種類のウイルスが遺伝子再集合を起こして生まれたもの』(出典:河岡義裕,堀本研子『インフルエンザ パンデミック:新型ウイルスの謎に迫る』講談社ブルーバックス,ISBN 978-4-06-257647-5(Amazon | bk1),pp.81)であって,豚のH1とヒトのH1は大きく異なっているとのことだ。素人考えだが,それなら,HAの亜型を16種類に限らず,もっと増やせばいいのではないだろうかと思う。少なくとも,豚のH1の主なタイプをH1s,ヒトのH1の主なタイプをH1hと書くことにするだけでも,「新型」などという一時的にしか通用しない表記にする必要がなくなり,分類体系として有用になるだろう。難しいのは,先に書いたように,ヒトのH1と言っても毎年のantigenic driftがあって,細かく見れば多様だという点である。つまり,どこまで細かく分類すれば効率的なコミュニケーションができるかということだ。
 Deem MW, Pan K (2009) The epitope regions of HI-subtype influenza A, with application to vaccine efficacy. Protein Engineering, Design & Selection, pp. 1-4. [doi:10.1093/protein/gzp027]によると,ヒトの免疫系はHAタンパクの5つのエピトープ部位(AからE)に主に反応し,より古く抗体マッピングが行われたH1のエピトープ(AからE)が認識するアミノ酸配列は,H3のエピトープ(AからE)が認識するアミノ酸配列よりずっと短くて不完全であって,「1918年から2009年のH1配列は,元々同定に使われたエピトープの外側に多くの変異部位があることを示している(Alignment of H1 strains in 1918-2009 indicates many mutation positions outside the originally identified epitopes.)」とのことである。このことからDeem and Panは,H3のエピトープを使ってH1のエピトープをマッピングし,豚H1の多くのstrainの系統樹を描いて,これまでの抗体マッピングによって同定されたものと概ね一致すると書いているけれども,むしろ,もっと長いエピトープを使ってH1の下位分類を作ってしまう方が,分類体系としては合理的ではないかと思う。practicalには,ワクチンの交差反応性がある基準値より低いものは別の亜型とみなすとしたらいいかもしれない。この辺り,ウイルス学の専門家はどう考えているのだろう?
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2009年11月13日(当日のメモ
5:40起床。往路あさま510号。家を出る前に受信しておいたメールをチェックしたら,ユトレヒトで奮闘している若き天才からの活動報告が入っていた。彼は家庭を持ち,育児にも時間を割かねばならなくなったにもかかわらず,それを言い訳にせずに論文も書いて,ちゃんと実効を上げているところが凄い(眠ってないんじゃないだろうか?)。今回の仕事は,神戸の岩田健太郎先生との共同研究というところが,また素晴らしい。岩田先生が数理モデルを一部誤解されていたのはつい先月のことなのに,もう共著で,先日のワクチン接種の戦略転換に影響を与えたモデル論文を出すところまで持って行った(つまり,既に岩田先生は数理モデルの効用を理解されたということを意味するはず)という強烈なパワーはさすがと思う。なお,岩田先生のブログでもこの件は言及されていた(1回打ちにしたい根拠根拠となる論文。先月の日本版ACIPを1回か、2回か、の議論も必読)。
データは去年のものだから新型の話ではないが,先月でたJAMAの論文で,医療現場における接触に関しては,普通の手術用マスクのインフルエンザ感染防御能がN95レスピレータに有意に劣ってはいないというものがあった。飛沫を直接吸い込むことを防御するいう意味においては,いくらウイルス粒子は通り抜けられるサイズだといっても,手術用マスクをつけておくだけでも効果はあるのだろう,とは直感的にも思う。あと,あまり言われていないかもしれないが,屋外でのマスク着用は,飛沫やウイルスを吸い込まないためにというよりも,呼吸器の乾燥防止効果が大きいのではなかろうか。
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2009年11月10日(当日のメモ
押谷・虫明インフルエンザ本を読んでいたが,国際裏話みたいなものが多く,ある意味プロパガンダ的な部分が目立つ。虫明氏は,せっかくユトレヒトまで行ったのなら,前振りでちょこっとだけモデルの話を紹介するのではなくて,そっちをメインにまとめてくれれば良かったのにと思う。
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2009年11月4日(当日のメモ
23:00から『爆笑問題のニッポンの教養』で,爆笑問題の2人が医科研の河岡義裕さんを訪ねてインフルエンザの話を聞いていたので録画しながら見た。河岡義裕・堀本研子『インフルエンザ パンデミック:新型ウイルスの謎に迫る』講談社ブルーバックス,ISBN 978-4-06-257647-5(Amazon | bk1)に書かれていた内容と重なっていて概ね頷けることが多かったが,うがいの意味がまったくわからないのでしていないと断言されていたのはまずいのではないかと思った。確かにインフルエンザウイルスに対して直接の防御効果は薄いのかもしれないが,咽喉部や上気道が乾燥すればそこの粘膜が荒れて細菌感染や他のウイルスに感染しやすくなり,それだけすべての感染に対する防御能(大雑把な表現ではあるが)が低下するに違いなく,ひいてはインフルエンザウイルスにだって感染しやすくなるのではなかろうか。なお,インフルエンザウイルスの擬人化はテレビ的にうまかったと思う。
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2009年10月29日(当日のメモ
ユトレヒトの天才から,岩波『科学』11月号をご恵贈いただいた。ありがとうございます。たしかに集団免疫を念頭に置いた検討は必要と思う。ただ,日本は不活化ワクチンの皮下注,米国は弱毒生ワクチンの鼻への噴霧という経路の違いを考えたら,日本での検討には米国のα1の値は妥当でないかもしれない。仮にα1が0.05くらいだとしても結論は変わらないのだろうか。
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2009年10月28日(当日のメモ
河岡義裕・堀本研子『インフルエンザ パンデミック:新型ウイルスの謎に迫る』講談社ブルーバックス,ISBN 978-4-06-257647-5(Amazon | bk1)を読了した。現在までの知見についてよくまとまっていて,読みやすかった。第2相と第3相の臨床試験中の2種類の新薬の情報は知らなかったので,興味深かった(これらの製薬会社は株価が上がるかも?)。ただ,ぼくが個人的にいくつか気になっている点についての解は得られなかったのが残念だった。たとえば,p.221に載っているNature論文の図についての説明でも,1970年代生まれの2人が高い抗体価を示したことは,「一部の例外」というだけであった。感染せずに高レベルの抗体をもつことはありえないのだから,この2人の存在は,「実は新型インフルエンザウイルス(A型,H1N1)は今年4月より前から日本にも入ってきていた」「新型インフルエンザウイルス(A型,H1N1)と交差反応性のある抗原をもったウイルス株がかつて流行したことがある」「抗体価検査の特異性が十分でない」などの可能性を意味するかもしれない。何らかの解釈は必要だと思うのだが,相変わらずスルーされているのは何故だろうか。
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2009年10月24日(当日のメモ
新型インフルエンザのワクチンは,基準は満たしているというが,副反応の程度と頻度と,期待される効果の両方を考えると,普通の健康な人が打つ必要はないと思う。医療従事者とハイリスク者を除けば分の悪い賭けだと思う。そういえば,沖縄のホテルで,米国でも4割以上が「受けたくない」と答えているという内容の背景でワクチン接種風景が流れているニュースを見た。注射筒に入ったワクチンを鼻に入れて吸入させていた。日本は不活化ワクチンだから皮下注するしかないのだが,河岡義裕・堀本研子『インフルエンザ パンデミック:新型ウイルスの謎に迫る』講談社ブルーバックス,ISBN 978-4-06-257647-5(Amazon | bk1)によると,米国は弱毒生ワクチンなので鼻に噴霧するのだそうだ。同書によると,フルミストという名前のこのワクチンは,偶然発見された弱毒株のHAとNAを流行中のものに変えてワクチン株とするのだけれども,2歳以下と50歳以上は適用除外とされているとのこと。わずかな変異でも病原性が大きく変わってしまうということを,同書のワクチン以外の部分ではさんざん言っているわけで,もっと病原性が発現する機序がはっきりとわからないと使うのは躊躇われるから,生ワクチンを日本で認可していないのには一理あると思う。もちろん不活化ワクチンでは鼻や喉にウイルスがとりつくところでブロックできないわけで,感染拡大防止効果は生ワクチンより落ちるが,重症化を防ぐだけでも意味はあるだろう。だからワクチン接種に際して重要なのは,放っておいた場合にどれくらい重症化するリスクがあるかどうかのはずで,南北アメリカ大陸の重症化リスクからしたら,むしろ米国では細胞性免疫はつかない代わりに副反応が少ない不活化ワクチンを打つべきではなかろうか。日本はこれまでのところ重症化のリスクが低いので,ぼくは,普通の健康な人はワクチンを打たなくていいと思う。鳥取県が大学受験生もワクチン接種という方針を打ち出したというテレビニュースがあったが,試験当日に症状がある場合だけが問題なのだから,本当はインフルエンザのせいで受験できなかった場合のみ(要診断書として)別途再受験を認める,つまり大学が1回だけ(前期と後期があるから2回かもしれないが)余計に入試をしてあげれば済む問題だと思う。もちろん入試関係者は問題作りの手間が2倍になるし,試験監督の時間も増えてしまうわけだし,入試ということで手続きの公正と平等を担保することも面倒だが,安保闘争と大学紛争の頃には無試験で入学できたり逆に入試がなかったりした年もあったらしいので,そういうことに対して,社会全体が(1年だけでいいから)寛容になればいい。国内で臨床試験されていない輸入ワクチンを見切り発車で使ってしまうとか,ハイリスクグループでない「大学受験生」に,十分にあるとは言い難いワクチンを回すよりは,よほど筋がいいsocial engineeringだと思う。
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2009年10月2日(当日のメモ
5000万人分も輸入するのか。うーん,WHO・進藤医務官の批判は無視されたのだな。それにしてもこの記者発表速報,何箇所か,「接種」が「摂取」と誤変換されているのが,急いでやった感を漂わせている。感染拡大を防ぐのでなく「死亡者や重症者の発生を出来る限り減らす」のが目的ならば,優先順位4番目は幼児の保護者でなく,独居の高齢者と施設で集団生活している高齢者にした方がいいんじゃないかと思うし,国内生産が2700万人分確保できる見込みならば輸入しなくても足りると思うが。
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2009年9月7日(当日のメモ
「新型インフルエンザワクチン(A/H1N1)の予防接種について(素案)」に関する意見募集について。9月13日締め切りのパブリックコメント募集で,非常に短期間の募集だと思うが,すぐにでも決断が必要な話なので仕方ないか。
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2009年8月19日(当日のメモ
同じく昨日届いた日本公衆衛生雑誌の最新号の巻頭に掲載された特別論文は,元WHOの尾身茂先生による「新型インフルエンザ:公衆衛生学的視点から」というものだった。文中,「基本再生産数(reproductive rate: R0)」のカッコ内はbasic reproduction number: R0だと思うし(稲葉寿編著『感染症の数理モデル』培風館,ISBN 978-4-563-01137-6(Amazon | bk1)を参照),12.なぜ日本では重症例が報告されないか? (中澤注:7月13日という執筆時点では重症例は皆無だった)に挙げられている理由3つだけでは考察不足ではないかと思うが,それ以上に,内容自体が新型インフルエンザ対策だけをターゲットにした論考であって,「公衆衛生学的視点から」というには狭いのが残念だった。
名古屋で多発性骨髄腫に罹患していた80代女性が新型インフルエンザで死亡,国内3例目というニュースだが,本当に死因が新型インフルエンザなのだろうか。仮にそうだとしても,やはりハイリスクの人が亡くなったということなので,ウイルスの毒性が高まったわけではないと思うが。
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2009年8月18日(当日のメモ
15日に沖縄で新型インフルエンザによる日本人初めての死者(57歳男性)が報告された(腎不全で透析を受けていたというハイリスクな方だったが)と思ったら,今日は神戸市で70代後半の男性が新型インフルエンザで亡くなっていたことが報じられた。ただし神戸市の患者も腎不全で透析を受けていたとのことこなので,ハイリスクの人が感染すると危ないというのは季節性インフルエンザと違いはない。日本人で初めて重症化して呼吸器をつけた4歳児が報じられたのが12日で,14日は福島の9歳児,今日のニュースでは千葉の40歳男性の重症例(一時的に重症化したが既に回復している)が報じられるなど,この数日,急に重症例や死亡例が報じられるようになったが,何故なのだろう?
今日の新聞に報じられた西浦さんのPLoS One論文の0.5%という数値は,やっぱりアメリカ大陸のCFRと考えるべき(理由は6月17日に書いたことや,それ以外にも多くの可能性がある)と思っていたが,偶々これまで重症例や死亡例が報告されなかっただけで,今後急増する可能性があるのだろうか? それにしては重症化した患者が偏っているような気がするが。
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2009年8月11日(当日のメモ
週刊医学界新聞の巻頭記事は,押谷仁先生の新型インフルエンザ まだ来ぬ「第一波」に備えよ。結論はもっともだが,実は新型インフルエンザが大流行しようとしまいと,救急と産科医療の充実は必要なことで,その意味では,何号か前の神戸大学岩田健太郎先生の主張の方が筋が通っていると思う。
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2009年7月22日(当日のメモ
この時期の衆院解散についてのにしうらさんのご指摘は,形式的には尤もだと思うが,緊急の場合には法改正によらず省令とか閣議決定で対処できることが多いから,数ヶ月のスパンで衆議院がなくて立法できなくても行政上は問題ないような気もする(立法府が無責任で国民よりも政局のことしか考えてないのは今に始まったことじゃないし。とはいえ,それに慣れてしまっているのは良く考えると変なことで,だからこそ以前から,議員なんて選挙によらずランダムサンプリングにした方が民意を反映できるはずで,その代わりに議院内閣制を廃して国務大臣を直接選挙で選んだらいいと何度か書いているのだが……)。ここでにしうらさんと議論したときに書いたことは今でも生きていて,日本では患者数4000人を超えた現在でも死亡例が皆無であり,南北アメリカ大陸とは病態が違うのではないかとも思う。ハイリスクグループが注意すれば死亡を防げるというのなら,age-dependencyは季節性と変わらないといえるのではないか。もっとも,タイも致命率が高い点には注意が必要だろう。国によるCFRの違いが何に由来するのかメタアナリシスできないものか。
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2009年7月17日(当日のメモ
ワクチン輸入計画についてのWHOメディカル・オフィサーの進藤奈邦子さんのコメント(リンク先はともにNIKKEI NET)は,至極もっともだと思う。
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2009年7月16日(当日のメモ
昼食時に売店で買ってきたパンと太巻を食べながら,このメモでこれまで書き散らしてきたインフルエンザに関連した記載だけ採録してみた。
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2009年7月14日(当日のメモ
【再び謎】新型インフルエンザの新しいニュース(河岡グループによる。リンク先は朝日新聞記事)。動物実験の結果サルに肺炎を起こす毒性が強いという結果は,動物実験だからメカニズムがわからないとヒトへの適用可能性はわからないが言いたいことはわかる。しかし,「……20年以降に生まれたそれ以下の年代の血清では、抗体がある人はほとんどいなかった」(注:太字は中澤による)というのがわからない。少しはいたのだろうか。Natureに発表されたというから探してみたら(途中,非常によくまとまったレビュー論文が見つかった。まだ完全には掲載されていないのか,図が見えないものが多いのだが,これはこれで役に立ちそうだ),当該論文(pdf形式)(注:ただし最終版ではないようだ。群馬大ではダウンロードできたが,たぶん契約していないとダウンロードできないかもしれない)が見つかった。1999年に老人ホーム入居者及び職員(ドナーグループ1)から集めた血清ではKUTK-4(通常のヒトインフルエンザの2009年4月川崎株)への抗体価が高い人がほとんどいなかったけれども1918年より前に生まれた人でのみCA04(S-OIVの2009年4月カリフォルニア株)への高い抗体価を示した例が多かったのに対して,2009年4月に病院の入院患者と職員(ドナーグループ2)から集めた血清では若い人を中心にKUTK-4へは高い抗体価を示した人が多かったのに対して,CA04への抗体価が128(128倍希釈しても反応したという意味)以上だった人は1918年以前生まれが2人と,1977年,1978年生まれが各1人いたという結果だった(参照:Supplementary Informationのページの表9)。論文は,「これらのデータは,1918年パンデミックウイルスあるいはそれにきわめて関連の強いヒトH1N1ウイルスへの感染はS-OIVsへの中和抗体を導いたけれども,1920年代,1950年代,あるいは1977年以降にヒトで流行した多様な抗原性をもつウイルスへの感染は(S-OIVsへの中和抗体を)導かなかったことを示す」(These data indicate that infection with the 1918 pandemic virus or closely related human H1N1 viruses, but not infection with antigenically divergent human H1N1 viruses circulating in the 1920s to 1950s, and again since 1977, elicited neutralizing antibodies to S-OIVs.)と議論しているが,だとすると,ドナーグループ2でCA04に対して高い抗体価を示した1977年生まれと1978年生まれの2人は,どこでその抗体価を獲得したのかがわからない。ざっと見た限りではこの論文の中では論じられていないように思うが,4月時点で,既に感染して治癒した人が国内にいたということを示すとしたら,新型インフルエンザのストーリーが大きく変わってしまうので大変なデータなはずで,どうしてスルーされているのかわからない。ぼくが見逃しているだけか?
【公衆衛生学的には】週刊医学界新聞の最新号の表紙になっている,神戸大学岩田健太郎先生の新型インフルエンザ「次」への教訓という記事には,公衆衛生学的にはまったく同感というか,我が意を得たりという感じ。でも本当の問題は「その先」をどうするかだろう。
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2009年7月12日(当日のメモ
ProMEDメールで届いた情報によると,ミシガン大学病院のICUにパンデミックインフルエンザ(H1N1)2009ウイルスに感染して呼吸器を取り付けねばならず入院した10人のうち9人が肥満で,うち7人はBMI40を超える重度肥満だったそうだ(とProMEDメールの記事にはあったが,CDCのMMWRの表を見たら,BMI40を超えるのは6人で,後は39.7, 38.5, 34.2が1人ずついて,残り1人は身長が測定されていないためにBMI不明とのことだった)。このうち死亡例が3人出ていて,うち2人はBMIが48.7と50.2という重度肥満者であった(残り1人はBMI34.2の28歳男性で基礎疾患として喘息をもっている人だった)。この研究によって,肥満がこのインフルエンザウイルスの重症化と関係するかもしれないことが示唆されたとのことだ。もちろん入院の判定基準には肥満であるかどうかは含まれていないのだろうし,ミシガン州に肥満の人が多いということもないのだろうが,感染したけれども重症化しなかった人たちのBMIはどうなっているのかということと,他の場所では重症化した人たちのBMIはどうなっているのかが知りたいところだ。
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2009年6月25日(当日のメモ
セミナーは17:30から始めて19:00過ぎまでかかってしまった。ちょっと長過ぎたか。けれども,新型インフルエンザへの社会の反応を歴史的視点も含めて世界規模で概観するには,全然時間が足りなかった。英語でも説明したから,というのも時間が掛かった大きな理由ではあるが。
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2009年6月12日(当日のメモ
【フェーズ6宣言】5:30起床。朝刊トップ記事は,WHOのフェーズ6宣言だった。南半球での広まり方を受けて,香港flu以来のパンデミックを宣言したのは定義から当然だけれども,2007/2008冬にはごくわずかだったのに2008/2009冬には日本での流行の大半を占めるに至ったタミフル耐性のAソ連型だって,あるいはワクチン株として使われていたA/Brisbane/59/2007(H1N1)類似株とか,A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)とかA/New Caledonia/20/99だってH1N1だったわけで,もちろんantigenic driftで生じた株だったから定義から言って新型ではないわけだが,広まり方という意味では大陸を越えて広まったには違いないので,例えばあれらに比べて,現在感染拡大中の新型株の広まり方はどれくらい速くて広いのか(20世紀のパンデミックが6〜9ヶ月かかって全世界に広まったのに比べて速いということは示されているが,交通網の発達が前世紀の比ではないので,むしろ欲しいのは,季節性株との比較だと思う。先日聞いた話だと2.5倍程度?)を示してくれると,なぜWHOが事態を重く見ているのかがわかると思うが,そういう情報は新聞記事にはなかった。また,押谷先生が先月と同じく,若者に重症例が多いので季節性インフルエンザとはまったく違う病気だという主旨のコメントをされていたが,一般の人は,なぜ約500例に至った国内感染者の中で重症例が皆無なのか,納得しがたいのではないだろうか。確率0.2%の現象であっても,500例の中では1例も起きない可能性は0.998の500乗で,約37%はあることだから,偶然まだ重症例が出ていないだけであっても不思議はないことは知っておくべきだろう。しかし例えば重症化率が1%もあるのに500例中重症例が0である可能性は0.7%未満(0.99の500乗は0.00657)なので,絶対値としてそれほど重症化しやすくはないらしいといえるだろう。押谷先生も,せっかくコメントするなら,リスクコミュニケーションとしては,海外データでいいので(ただし発生当初のメキシコは除いて),若者の重症化率が季節性インフルエンザに比べて何倍だから注意が必要なんだとコメントしてくれれば誰でも納得がいくだろうに(調べてもよくわからないのだが,これも先日聞いた話からすると1.5倍程度か?)。そうした納得の上で,公衆衛生的な政策をどうするかということを考えるべきであって,なし崩し的に物事が進んでいくのは気持ち悪い(と多くの人が感じていると思うのだが,どうだろうか)。なお,WHOの声明の中では,

We know that the novel H1N1 virus preferentially infects younger people. In nearly all areas with large and sustained outbreaks, the majority of cases have occurred in people under the age of 25 years.

In some of these countries, around 2% of cases have developed severe illness, often with very rapid progression to life-threatening pneumonia.

Most cases of severe and fatal infections have been in adults between the ages of 30 and 50 years.

の部分が季節性インフルエンザとの違いを説明していると思うが,せっかく数字は出していても,これだけでは一般の人は納得しがたいと思う。最初の点は,若者の相対的なmobilityの高さによる初期感染機会の多さで説明がつくかもしれない。2番目の点は日本には当たらないし(500例中0と100例中2の頻度は有意に異なる)その理由もわからない。3番目の点は,日本ではまだ症例不足でわからない。そういう意味で,日本での報道は,むしろ上記2点を説明してくれた方がいいと思う。
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2009年6月8日(当日のメモ
午後は非常にお忙しいところを高山先生においでいただき,特別講義をしていただいた。世界の国別人口がベンフォードの法則に当てはまっているという話から(先月の/.Jに参考になりそうなスレッドがあったのを思い出した。そこからリンクされていたこのpdfもわかりやすい),我々の認識は等差数列になりがちだけれども,自然は等比数列であることが多いという話につなげる導入はさすがだった(実は後者はむしろべき乗則の方が符合する話だと思うが,違和感を感じさせなかった)。AIDS対策は最終的には戦争を無くすことという話はまったく同感。コスタリカに学ぶべきだと思う。途中ちらっと触れられた話については,確かに,0.1%と0.15%の差,10%と25%の差は,一見大きくないような気がするが(0.1%と60%の違いに比べたら,の話。もちろん60%のままヒトからヒトへ感染するわけじゃないが),結果として約4万の死亡の差があるならば,たしかに大きな差だと認識すべきなのかもしれない。それと,0.15%でも人工呼吸器をつないで生かしている患者が多いから低く見積もりすぎだろうという話はその通りかもしれないし,その人たちの多くが60歳未満で,かつ妊婦が多いという点を考えたら,たしかに今後まだ注意しておかなければならない。ただし,この4万の差を3万に縮めるために,別の疾患による死亡が2万増えてしまってはまずいだろうし,そこまでいかなくてもQALYs的な考え方をするならばもっと微妙なトレードオフがあるかもしれないので,公衆衛生学的にはそうならないようなバランスの取り方は注意深く考えなくてはいけないだろう。いろいろな意味で,簡単に答えが出るとは思われない。なお,ウイルスの系統解析からスーパースプレッダーの存在が示唆されたという話は,単純に考えたらその人はハブホストだから,その人をネットワークから切り離せばスケールフリーネットワークは瓦解するはずだけれども,その人をどうやって見つけるのかが難しいのだろう。CSWが客の素性を知っているとは思えないし。
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2009年6月3日(当日のメモ
IDSCで翻訳が公開されている,CDCによる「新型インフルエンザA (H1N1)症例がごく少数例または全く報告のない地域での、州および地域の衛生部局、病院、及び臨床医による、新型インフルエンザA (H1N1)(ブタインフルエンザ)のスクリーニングに関する暫定的手引き」によると,米国では,他に明確な原因がなく37.8℃以上の発熱及び咳and/or咽頭痛がある患者(ILI)が定点医療機関(全米で2,400以上だという,ILINet参加機関)を受診した場合と,ILIで入院した患者について,PCRでの鼻咽頭スワブの検査が推奨されている。米国では全数把握されていないということだろうか? それにしては,全世界での累積患者数が2万人を超えたとか言われているから,全数把握されていそうな発表のされ方なんだけれども。あるいは,感染経路が把握されないような感染拡大はまだ少ないから,概数としては無視できるということなんだろうか。
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2009年5月24日(当日のメモ
某MLで流れてきた情報で,ピッツバーグ大のSupercource Influenza A(H1N1) (Swine flu): A Global Outbreak in Japaneseを知った。とても情報量が多い。ただ,一昨日(2009年7月16日注記:5月21日のこと)挙げた疑問への答えは得られなかったので,リスクコミュニケーションとしてはもう少し情報が欲しい。あるいは,やはりまだ答えがないのかもしれないが。
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2009年5月22日(当日のメモ
某MLで流れてきたメールで知ったが,ペーパータオルでマスク作り。こういう工夫はシステムには負荷をかけないのでどんどんやればいいと思う。群馬でもほとんどの薬局からマスクが消えている現状からして,こういう代替は役に立つだろう。もっとも,病院の売店で箱買いすればN95マスクが買えることがわかったので,新幹線通勤者としては,そっちを買っておいた方がいいかもしれないのだが(別に消費期限があるものじゃないし)。でも,真面目に考えたら,新幹線の中に病院並みに患者がいるわけがないから,別にN95は要らないよなあ。もし感染したら出勤しないで自宅療養するつもりだから,家族や家具への飛散防止にペーパータオル製マスクは充分役に立つと見た。
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2009年5月21日(当日のメモ
【わからないことばかり】今年1月に出た週刊医学界新聞の『インフルエンザパンデミック』特集号(押谷先生が監修されていて,バックナンバーの一番下に載っている第2812号)の記事でもそうだが,以前は,Antigenic Shiftというのが大変異で,HとNの組み合わせが新しいものと変わることで,それがヒトからヒトへの感染を起こすようになったときに世界的大流行を起こし,病原性によっては多くの死者を出すと言われていた(だから,感染症法でもH5N1を高病原性鳥インフルエンザとして2類の全数把握に区分してきたし,第6条の7で,

『この法律において「新型インフルエンザ等感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一  新型インフルエンザ(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)
二  再興型インフルエンザ(かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう』

と定められている)。しかしH1N1というだけだったら,Spanish Flu以来久々というわけではなく,ソ連カゼもそうだし,ワクチンとして使われてきたA/Brisbane/59/2007(H1N1)類似株とか,A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)とかA/New Caledonia/20/99とかもそうだ。毎年のように抗原性が微妙に変異し続けているのだ(これをAntigenic Driftという)と認識していた。もっというと,そのウイルス自体が世界中に広まっているのか,類似株が異所的同時的に発生しているのかはわからないが,毎年のように主要な流行株が置き換わり続けているので,流行そのものだけ考えれば,これまでもパンデミックは起こってきたといえるのかもしれない(追記:こんな見方はたぶんこれまで誰もしていないが)。strain別の全数把握などされないためにエピデミックカーブがわからなかっただけで。だからこそ高病原性鳥インフルエンザであるH5N1がヒトからヒトへ感染するようになるのを最も警戒してきたはずだ。しかし,今回の話では,H1N1なのに季節性と同じでないという。これがまず理解しにくい点だと思う。合理的な説明としては,感染症法の定義にあるように,これまで豚のウイルスであって,ヒトからヒトへ感染する能力をもっていなかったはずのウイルスが,新たにヒトからヒトへの感染能力を獲得したから「新型」インフルエンザと呼ぶのだということだろう(つまり,H1はH1だけれども,ヒトの間で流行しているウイルスのH1でなくて豚でdriftを続けてきたH1が新たに組み合わさってできたウイルスたという意味ではshiftに違いない。もっとも,豚にはヒトのウイルスも感染するから,この豚のH1とヒトのH1がどれくらい違うのかはわからないが:括弧内24日追記)。だから当初swine fluと呼ばれていたのだが,4月29日にエジプト政府が感染予防目的で国内飼育されている全ての豚を殺すという決定を下したこと(7月3日1字削除及び太字追記)と豚肉業界から抗議があったことをきっかけに,WHOはswine fluと呼ばなくなった(豚肉には何のリスクもないのだから,この対応は二重の意味で失敗だったと思う)。豚起源であることを前提にしないなら,感染力とか病原性(あるいは病態)とか亜型で区別するしかないので,新型扱いすべきなのかどうかを語るのは難しくなる(参考としてScience NewsのMartin Enserinkの記事は良くまとまっていてわかりやすい)。新型も流行を経て季節性インフルエンザとして定着するのが普通なわけだが,いつからそう言えるのかということも微妙である。致命率がメキシコとそれ以外の国で違いすぎるのも,理解を難しくしている。メキシコの死亡例は合併症かもしれないし,遺伝や環境条件によって感受性に特異性があったのかもしれないとも考えられる。そうだとすると,病原性について「季節性インフルエンザとほぼ同等」と考えられても不思議はない。押谷先生が挙げられている病態の特徴が,メキシコ以外の国でも同じであって,かつ従来のインフルエンザでは見られないものなのか(あるいはウイルス性肺炎症状の発症率が従来[=ゼロではない]よりずっと高いのか)を知りたい。ウイルスそのものについての確定診断はPCRでのシークエンスなのだろうが,重症化するときの増殖や毒性のメカニズムがどう従来型と違っているのかを遺伝子発現レベルで知りたい(この点については,y_tambeさんの今日の/.Jの記事はある程度答えになっているかも……というか,厳密には答えがまだないようだ)。また,従来型との交差反応性も知りたい。ほとんどゼロなのだろうか? 市民社会におけるリスクマネージメントには絶対必要なリスクコミュニケーションとしては,そのレベルの情報をわかりやすく提示する必要があると思う。その上で「だから特別に警戒しなくてはいけないんですよ」とキャンペーンしてくれたら,納得もいくというものだ。リスクコミュニケーションの専門家だというPeter SandmanがNatureのcommentaryとして書いた記事著者のサイトにある長いバージョン)は「政府は最良の場合を期待しつつ最悪に備えねばならない」という主旨で示唆的だが(それに対する反論もまた示唆的),上述の意味では情報が足りないと思う。なお,週刊医学界新聞の座談会で発熱外来についての川名先生のコメントは至極もっともだったと思うが,現状をみるに,日本の公衆衛生行政はこのコメントに答えられていないと思う。特集表紙になっている大日さんの220万人超のPerson trip dataを使った感染拡大シミュレーションの図は,週刊医学界新聞には詳細は示されていないが,兵庫,大阪,奈良,京都,滋賀にはある程度の人の移動があることを意味していると思われる。しかし今回の場合,数日間は兵庫と大阪に留まっていたのは,検査が間に合わなかったということなのだろうか。それとも人の流れが普段とは変わるということだろうか。なお,H5N1用に用意された対策だとしてもシステムへの負荷が大きすぎてパンクしそうなのだとしたら,対策としては間違っていたのだと思う。システムを維持できるような対策を今後考えなくてはいけないので,暫く前に書いた,健康教育を含むドラスティックな改変も視野に入れる価値があるのではなかろうか。
【研究ラッシュ】ScienceのJon Cohenの記事を読むとなるほどと思う(なお,この記事に引用されている,ピッツバーグ大のElodie Ghedinによる,今流行中のウイルスと季節性インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパクのアミノ酸配列を比較する図を見ると,確かに両者が全然別物なのは一目瞭然だ。同じような見せ方をしたときに季節性インフルエンザウイルス相互間の違いがどれほど少ないのかを示してくれたら,もっとinformativeなんだが。それと,これほど違うならH1ではなくて,新たな番号を与えてくれたら良かったのにと思うが,それは無理だったんだろうか?)。4月23日以降,世界中の研究者が争うように今回のインフルエンザ研究に打ち込み,NatureScienceという科学の世界の2大雑誌や,NEJMLancetといった医学の一流誌が競って特設サイトを作ったほど(PNASも特設サイトこそないがトップページでH1N1関係の論文をピックアップできるリンクを表示していて,フルテキストオープンアクセスになっている),世界の注目が集まっている研究対象で,こんなことは他に類をみない。それはわかる。わかるんだけれども……。
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2009年5月17日(当日のメモ
5:30起床。信毎の1面トップ記事は国内のヒト=ヒト感染が疑われる「新型」事例が見つかって国内対応が第二段階に移った件,横に民主党新代表が鳩山由紀夫氏に決まったという件(たぶんメディアへの民主党のプレゼンスを上げるという意味は多少なりともあったと思う。もし「新型」インフルエンザ騒ぎがなかったら,もっと話題になっていただろうに)。新聞記事では「リアルタイム詳細(PCR)検査」という表現が気になった。PCRはポリメラーゼチェインリアクション(合成酵素連鎖反応)の略であって,その反応を利用してDNAを高速に増殖させる実験技術を指し,「詳細」なんていう意味はないのだが,こういう書き方をされると誤解が広まりそうで良くないと思う。サイボーグ009のルビの振り方を思い出した(張張湖と書いて「たいじん」と読ませるとか)。
ページを開くと,西神戸医療センターの玄関写真が載っていて,新型インフルエンザ対応のため,救急外来を休止して発熱外来にしたという記事。理解できない。ただでさえ救急は足りないのだし,インフルエンザがあるからといって他の病気が減るわけではないのに,発熱外来設置のために救急外来を休止するというのは本末転倒というか合理性がない。最低限,病院とは別組織として立ち上げなくてはダメだし,前にも書いたように,ぼくは,そもそも新型インフルエンザに発熱外来という対策の有効性には疑問をもっている。たぶん,簡単にシミュレーションできると思うが,出歩く患者と検査コストが増えるデメリットの方が,新型の致命率を多少下げることができるかもしれないメリットより大きくなる条件の方が普通と思う。仮に致命率が0.4%としても(たぶん本当のところは,Longini博士の談話にあった0.1%とこの値の間くらいではないかと思うが)変わらない。これが致命率20%とかだったら話は別だし,その境界条件も簡単に求められると思うが。誰かやってないのか?
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2009年5月12日(当日のメモ
【順応的リスク管理が必要】今日付けの中西準子さんの雑感の主旨(たぶん,メキシコで問題になった当初は致命率が高かったので厳しい対策をしたのは当然だが,その後リスクが低いことがわかったのに,日本では例によって順応的リスク管理ができていないし,危ない側に言っておいて何事も起こらない場合よりも,危なくないと言っておいてコトが起こってしまう場合の方が厳しく責任追及されるので,常に安全係数を大きく取る側に対策が偏る傾向がある,ということだと思う)には同感。ただ,水際作戦を「いい手段」と書いているのは誤解を生みやすい表現だと思う。確かにその瞬間の感受性の人と患者の接触機会を減らすことだけ考えたら「いい手段」だけれども,水際作戦に失敗して国内に感染力をもつ人が入ってくるか,あるいは国外での患者が根絶されない限り,永遠に水際作戦を続けねばならない。国外の患者が増え続ける間,検査にひっかかる人も増え続けるわけで,日毎に対策のための負荷が増えていくことになる。何日か前にも書いたが,これを続けたら検疫や医療に携わる人々に過大な負荷をかけ,通常業務に支障が出るに違いなく,確実にシステムとして破綻するので,流行が起こるのを何日か先延ばしにすることのメリット(ワクチンや治療薬の生産が多少なりともできるための時間稼ぎとか)と天秤にかけなくては,いいか悪いか言えないし,今回の場合は明らかにシステムへの負荷のデメリットの方が大きいと思う。それに,Nature Newsに載っていたLongini博士の発言通りR0(アールノートと読み,1人の患者から平均して何人の人が新たな患者として再生産されるかを示す値である)が1.4と季節性インフルエンザより低いくらいであって,致命率も季節性インフルエンザと同等ならば,実は免疫もゼロではないのだと思われる。つまり,このウイルスstrainを通常の季節性インフルエンザの変異と区別して新型と呼ぶ理由が無いことになる。強毒化するかもしれないという可能性は,季節性インフルエンザ(と十芭一からげにされているstrains)についても同等に言えることなので,このstrainだけ気をつけて患者の隔離とかしても意味が無く,季節性インフルエンザと同じ扱いをすれば充分だと思う。むしろ従来通り,H5N1とかH3N2とか,高病原性のstrainがヒト=ヒト感染を起こすような変異を起こす危険性の方を重視すべきだと思う。あと,WHOのミスリーディング(何を指しているのか明記されていないが)に乗ってしまう人が多いという指摘は,DDTとマラリアについての経験を反省されたのだろうかと思うと,なにやら皮肉に思えた。
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2009年5月8日(当日のメモ
電話連絡が概ねとれたが,関係者はとんでもない多忙さだそうで,とても実習なんて無理という状況らしい。睡眠時間すら取れないとか。このままでは日常業務に支障が出るんじゃないだろうか(もう出ているかも)。昨日触れたLongini博士の発言も信頼できそうなので,政府は早々に新型扱いを止めてほしい。そうでないと,保健・医療関連資源が潰れてしまう。環境リスク管理におけるゼロリスク論と同じで,水際作戦というのはシステムに過大な負荷をかける。システムを担っている人々がダウンしてしまったら元も子もないと思う。システムが潰れない方策としては,何日か前に書いたように自己管理メインへ移行するか,あるいはキューバみたいに100世帯単位くらいでプライマリケアをユニット化した上で,ファミリードクターが確定診断までできるような簡便な診断技術を開発するとかしたら耐えられるかもしれない。もっとも,現在の日本ではどちらもすぐには不可能だが。現実的対応としてはどうしたらいいんだろう(とくに,今回の話じゃなくて,致命率が高いstrainが来てしまった場合)。
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2009年5月7日(当日のメモ
Natureの記事。フィールド疫学者の努力により定量的に感染パラメータが明らかにされつつあることは意味があるけれども,定性的には想定内の展開になってきている(それにしても,依然としてメキシコでは信頼できる致命率データがないというのはどういうことなんだろう? epidemic初期の若年層の死亡は合併症だったとか?)。致命率が低くて,R0も1.4と,典型的な季節性インフルエンザの1.5〜3に比べて高くないという,Longini博士の発言が事実なら,もはやこのstrainに対しては「新型」扱いをやめるべきかもしれない。また,H5N1のような致命率が高いstrainに対して,今回得られたヒューマンファクタに関するパラメータを当てはめるのは無理だと思う(部分的には使えるだろうが)。
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2009年5月6日(当日のメモ
帰国ラッシュで検疫官不足という新聞記事があったが,この体制を永遠にやり続けるつもりなんだろうか。日本での患者が発生しない限り免疫がない状態は続くわけだから,海外でも根絶というほぼ不可能なことを実現しない限り,論理的には続けなくてはいけないことになるわけだが,きっと国民の関心がそれてメディアが騒がなくなった頃に,ひっそりと止めるんだろうな。または外圧によって止めるか。
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2009年5月5日(当日のメモ
朝食中のニュースで,(医師法が定める医師の応召義務に抵触する)インフルエンザ様症状の患者を受け入れ拒否した事例が多発という報道を見た。患者への対応としては,発熱外来を充実させて,そこへ行くのをコンセンサスにするという方向で医療行政は進んでいるように見えるが,本当にそれがベストな手かというと,あまりそうは思えない。医療資源不足に対応するためと,伝播速度を減らすため(※古いがAckermanのモデルみたいなマイクロシミュレーションでやったって,コンパートメントモデルでやったって,MCMCでやったって,患者の外出を減らせば伝播速度が低下するのは,定性的には自明と思われる)という二重の利点から考えて,カゼ様症状は自宅療養というのを基本コンセンサスにしてしまう方が優れていると思う(データが取れなくなるという欠点はあるが)。体温管理くらいは氷とかOTCの座薬でもできると思うし,適度に水分と電解質を摂取すれば脱水にもならないだろうし,全身症状になってからはどうせ対症療法しかできないのだから(まあ,H5N1で懸念されているように,サイトカインストームのような症状が起こってしまった場合は,有効な対症療法がありうるのかわからないが……),長期的対策として,誰でもそうできるように教育するというのはどうだろうか。そうすると専門職としての医療がカバーする範囲が減って,医師や看護師をはじめとする医療資源不足の問題にも対応できるかもしれない。もちろん,それによって重篤な疾患が早期発見される機会を逸失する可能性もあるが,患者が出歩かないことによってウイルスの感染機会を減らせる利益の方が上回る可能性もある。本当に強毒性のH5N1のパンデミックが始まったらどうなるのかというリスク予測を本気でやっておくべきだろう。
午前中はメールへの応答とか,書類作りとかで終わってしまった。昼食ですき家に行ったら,豚丼がメニューから無くなっていた。何たる過剰反応。まったく意味が無い。BSE騒動のとき米国産牛肉を使わないという対応をしたのも,まともなリスク判断ではなく単なる過剰反応だったわけか。(←橘さんのご指摘により調べてみたら,すき家が豚丼休止を発表したのは4月15日だったことがわかったので,これは濡れ衣でした。申し訳ありません。削除します)。
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2009年4月30日(当日のメモ
WHOがフェーズ5を宣言したが,これは感染力を示すのであって,病原性についての情報は不足しているままだ。しかし厚生労働省は一昨日のフェーズ4宣言を受けて,この疾患を感染症法第6条第7項による新型インフルエンザ等感染症として取扱うと発表した。まあ,確かに予防原則的にはそうなるんだろうけれども。
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2009年4月29日(当日のメモ
なし崩し的に新型インフルエンザと呼ばれるようになったswine fluで,米国でも死者が出たと大騒ぎになっているが,1歳11ヶ月の幼児は,そもそもインフルエンザによる死亡のハイリスク群だから,状況は昨日と変わっていないと思う。しかし,この数日の報道からわかったこととして,たぶん旅行者の経路を辿ってだろうが,これほど世界中に感染症が短時日で広まることが明らかにされたのは大きな意味がある。空気感染する(2009年7月16日注記:もちろん,このウイルス自体は空気感染=飛沫核感染する可能性は低くて,おそらく飛沫感染と接触感染が主な感染経路とされている),感染力を持ちつつも弱毒な時期がある感染症は,グローバル化が進んだ現在では封じ込め不可能ということがわかってしまったのだ。対策はそれを前提としなくてはいけない。一つ心配なのは,今回の騒ぎのせいで,インドネシアで散発的にヒトへの感染が見られているH5N1への警戒がおろそかになる可能性である。行政には冷静な対応を望みたい。
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2009年4月28日(当日のメモ
今日も5:30に起きて,ふとテレビをつけたらWHOのフクダ氏によるPhase 4宣言が同時通訳で放送されていた。Pandemicへの備えは必要だが,今回救いなのは,これがブタ由来であることだ。H5N1の高病原性鳥インフルエンザ由来の場合は,鶏卵を使ってワクチンを量産することができないが,ブタ由来ならば鶏卵は使える可能性があり,そうなればワクチンがわりと早期に量産できるだろう。また,スペイン風邪が恐ろしかったのは,乳幼児と高齢者での死亡リスクが高いが青壮年ではまず死なない通常のインフルエンザと違って,青壮年でも致命率が高かったからなので,今回流行っている株の年齢階級別致命率をみる必要があると思う。致命率が通常のインフルエンザと同等なら,これは単にAメキシコ株とでも呼ばれるべき新しいインフルエンザ株が出現したというだけのことである。しかし事態がこうなってくると,厚労省の新型インフルエンザ対策室の皆さんは大変だろう。就中,高山先生が予定通り非常勤講師に来ていただけるかが心配だ。施設によっては,この流行のせいで,学生の見学実習が当面延期とされた(たぶん安全確保ができないからだろう。そんなことを言えば普段だって同じなんだが)ところもあり,今後の影響範囲拡大が懸念される。早く収束してくれればいいのだが。
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2009年2月5日(当日のメモ
biomath-mlに流れた鳥インフルエンザを中心とする数理モデルのシンポ@京都産業大は面白そうで聴きにいきたいところだが,2月21日では日本にいないので無理なのが残念。
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2009年1月20日(当日のメモ
一昨日触れたインフルエンザウイルスのタミフル耐性の話だが,西浦さんがサンプリングの問題を指摘されている。至極尤もな指摘だと思う。ただ,それぞれの集団発生を1例として扱ったとしても,検出されたウイルスのほとんど全てがタミフル耐性だったという疫学的状況があるとは言えるだろう。とすれば,急にタミフル耐性株が広まった(のか各所で同時に変異が起こったのかはわからないが)原因は,やはりタミフルの使いすぎにあるのではないかと思う。鳥にタミフルを使っているわけではないから,高病原性トリインフルエンザはタミフル感受性があるとしても,それがヒト=ヒト感染能を獲得して新型インフルエンザになる過程ではどこかでヒトのインフルエンザウイルスとのgene mixtureがあるだろうから,そこでタミフル耐性も移行しないという保障はないだろう。
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2009年1月18日(当日のメモ
この冬,日本で検出されたAソ連型のインフルエンザウイルス35例中34例がタミフル耐性だったという。使いすぎのせいじゃないだろうか。
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2009年1月5日(当日のメモ
ミーティング後,人口学会と熱帯医学会の学会誌最新号と週刊医学界新聞に目を通した。週刊医学界新聞はインフルエンザ・パンデミックの特集記事で,表紙の地図が目を引くなあと思ったら大日さんの仕事だった。220万人のシミュレーションってどうやっているんだろうか。ディテールが知りたい。『人口学研究』は新刊短評が掲載されているため2冊届いた。今年の大会の申込は30日までだそうだ。"Tropical Medicine and Health"はビルハルツ住血吸虫の女性への尿路感染が不妊と有意に関連していたという論文が目を引いた。
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2008年11月27日(当日のメモ
第10回新型インフルエンザ専門家会議資料が公開されている。
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2008年4月14日(当日のメモ
げ。新型インフルエンザ:学校閉鎖で患者4割減(リンク先は毎日新聞記事)という論文がNatureに載った。インペリのNeil Fergusonたちの仕事だが,インフルエンザの学級閉鎖モデルなら,着手はたけしょうの方がずっと早かったのに,と思うと非常に悔しい。
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2008年1月17日(当日のメモ
前にも書いた通り録画しただけでまだちゃんと見てないが,笹山掲示板では,土日の夜にあったNHKスペシャルの「シリーズ・最強ウイルス」が酷評されていた。批判のポイントは概ね尤もな気がするし,ぼくが眺めていた範囲でも,ドラマの中で整合性が取れてないシーンがいくつか目に付いたけれども,人間は必ずしも合理的に行動しないので,非常時にはパニックを起こして頓珍漢な行動をとってしまうこともあるんじゃないかと思うし,マスヒステリー(あまり描かれていなかったと思うが)もあると思うので,数ある可能性の中の一つを描いたという意味ならドラマとしては許容可能。どんな手であれ,テレビというメディアを使って,鳥フルとか新型インフルエンザとか,その他の新興・再興感染症への一般の関心が高まるなら,それはそれでありだと思う。ただ,一般の人が誰でもできるうがい・手洗いの強調はして欲しかったけれども。
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2007年3月29日(当日のメモ
厚生労働省のサイトの『新型インフルエンザ対策ガイドライン(フェーズ4以降)』についてが,月曜の専門家会議の結果を受けて,今日付けで公開された。発生初期における早期対応戦略ガイドラインの中に,地域封じ込めの話も詳細に書かれている。4ヶ所60日間という仮定の根拠がはっきりしないが,地域封じ込めには,Natureのモデルで300万人分,PNASのモデルで330万人分の備蓄が必要とされているようだ。パンデミックが起こってしまった場合の2500万人分ではなくて,地域封じ込めのための300万人分をとりあえずの備蓄目標にしたらどうだろうか。いずれにせよ,新型でもなく患者が乳幼児でも高齢者でもないのに使うのは止めたほうがよかろう(注:日本語として拙い表現だったので深夜に書換え)。
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2007年3月26日(当日のメモ
kikulog川端ブログでタミフルについて熱く議論されているが,3週間前にメモした話は出てきていないな。それと,解熱だけなら,多くの場合,腋下に氷嚢を挟むという物理的な手段でもかなり熱は下がるし,Darwinian Medicine的に考えたら,熱に弱いインフルエンザウイルスへの防御反応として発熱しているのを無闇に解熱しない方がいいかもしれないという話も出ていないようだ。時間があればコメントするんだが。
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2007年3月8日(当日のメモ
日本がなぜかくも大量のタミフルを輸入しているかといえば,パンデミックが起こってしまった場合の治療用の備蓄をしているからだろう。今日付けで再改訂版が公開された「行動計画」によれば,政府が1050万人分,都道府県が1050万人分,流通量が400万人分となっているが,これは最悪の事態に備えたものといえる。この2500万人という患者数推計に使われたモデルはCDCのMartin Meltzerらにより2000年に発表されたFluAid 2.0である。かなりシンプルなモデルのように思うが,実際にこれが政策決定に使われているのだ。しかし本来,タミフルの備蓄は,新型インフルエンザ発生時に初期段階で封じ込めをするためというのが第一義だったのではないか。最初の患者が発生してからおよそ三週間以内に発生地域の住民の八割に抗ウイルス薬を予防的に投与すればその他の公衆衛生学的措置と併せて初期段階での封じ込めが可能だという2005年のNatureとScienceの数理モデル論文(オリジナルを読んでないが,山本太郎『新型インフルエンザ 世界がふるえる日』岩波新書のp.147にそう書かれている)の結果は,日本の政策ではいまだに取り上げられていなくて,最悪の場合のみ考えた対策が行われているように思う(2500万人は予測値の上限のようだ)。治水の基本高水と同様,その面だけ考えれば安全係数の大きな対策になっているが,他の面からみるとどうなのだろうか。封じ込め用には,10万人分くらいを国家備蓄して,発生と同時に現地に送りこむシステムを考えておく方が合理的だろう。備蓄用タミフルは値段が違うので通常の治療用には使えないことになっている(去年の朝日新聞記事)から,新型インフルエンザの発生が5年間なかったら入れ替えねばならないことから考えても,そんなに大量にストックしない方がいいと思う。かつ,もし新型インフルエンザ封じ込めの鍵として使いたいなら,耐性が出ては困るから,できるだけ通常のインフルエンザ治療には使わないでおく方がいいと思う。3月1日までパブコメが行われていた,抗インフルエンザ薬に関するガイドライン(案)でも,重点的予防投与による初期封じ込めという視点が欠けているようなのは残念だ。見逃しがあるかもしれないが,以上とりあえずメモ。
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2007年2月1日(当日のメモ
笹山掲示板の[5646]のChaosさんの書き込みで知ったが,厚労省が「新型インフルエンザ対策ガイドライン(フェーズ4以降)」のパブコメ募集をしている。コメントするかどうかは別として,公衆衛生部門の資料は読んでおかないとまずいな。
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2006年11月7日(当日のメモ
往路あさま512号。山本太郎『新型インフルエンザ 世界がふるえる日』岩波新書,ISBN4-00-431035-0を読了。熱帯医学会のとき著者からサインをもらったのだけれども,そのこととは無関係に,最近いくつか出ている新型インフルエンザ本の中で一押し。基本再生産数のことも含めモデルにも触れられているし,具体的な国際レベルの対策についての詳細かつまとまった記述は,国際保健の現場と政策の両方に通じた著者の面目躍如といったところだろう。ただ,いくら現在既にフェーズ3だといっても,プロローグとエピローグの対策があまりうまく行かなかった場合の近未来フィクションは,叙情的・扇情的すぎるような気がする(もっとも,これは現実にいつ起こっても不思議ではないので,これくらい書いておいた方がいいのかもしれない)。個人的には来年6月に発効予定の国際保健規則改正の話がとくに役に立った。
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2006年5月10日(当日のメモ
もう1つ厚生労働省から,4月14日に行われた第26回厚生科学審議会感染症分科会資料もリンクしておく。H5N1型の高病原性トリインフルエンザを感染症法の指定感染症かつ検疫法の検疫感染症にするという話。新聞報道ではもう決まったようなトーンだったが,現在パブリックコメント中である。学校保健法施行規則でも「インフルエンザ(病原体がインフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH5N1であるものに限る。)について、学校保健法に規定されている出席停止や臨時休業の措置を講じることができるよう、学校保健法施行規則を改正すること」という主旨の省令案が出ていて,パブリックコメント中だが,これはパンデミックが起こってから対策するのでは遅いし,かといって過敏になりすぎるのもどうかと思う話で悩ましいところ(トリ→ヒトは,かなり接触頻度が高くなければ感染しにくいわけだし)。トリレベルで何らかのマーカあるいは変異パタンをモニタして,ヒト→ヒト感染するような変異が起こるポイントを予測できたらいいんだろうが。
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2006年1月12日(当日のメモ
森山さんの日記でもリンクされていたが,満員電車を止めることでインフルエンザ蔓延を防ぐ(リンク先は読売新聞記事)ってのは,1月28日の研究会で15:25から発表される「IBMを用いてのパンデミック対策の評価」のことかなぁ(まだタイトルしかわからないので,違う研究かもしれないが)。電車を止めることで起こるマイナスも考えたら,マスク着用率を上げて感染率を下げるとか,咳が出たら外出しないことを励行する(例えば学校でも会社でも診断書があれば出席・出勤扱いにするとか)といった個人ベースの対策の方がいいんじゃなかろうか。少なくとも相対的な比較は必要だろう。最初から電車内での感染率を半分にした場合と比べてどうか,とか。森山さんのコメントの通り,定性的には「そりゃそうだろうな」だけれども,こういうモデリングは(不十分にしても)定量的な評価が大事なので,やってみないとわからないし,だからこそ研究として成立するのだと思う。
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2005年2月28日(当日のメモ
さっき届いたProMEDメールによると,ベトナムで鳥インフルエンザウイルス(H5N1)感染が確認された人の数が,昨年12月以来19人になったそうだ。パンデミックを引き起こす危険性からいえば,ヒトにとってはvCJDなんかよりもH5N1の方がずっと大きい脅威なんだが,日本のマスメディアの扱いはとても小さい。
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2005年1月7日(当日のメモ
メールを見ていたら,ベトナムで年末に鶏インフルエンザによると思われる今週2例目の死亡(6歳男児)があったというニュースがあった。エピデミックが懸念されているとのこと。もし,インド洋津波災害の影響があった地域にまで広がってしまったら,と考えると恐ろしい。そうならないように食い止める必要がある。戦略的に考えれば,いま集まっている巨額の援助金の一部はこっちにも振り分けるべきかもしれない。
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