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鐵人三國誌・アーカイヴ

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目次

【第20回】 本が宅配されたのを受け取ってから出勤(2019年1月14日)

DATA VISUALIZATION

以前注文しておいた,Kieran Healy (2019) Data Visualization: A Practical Introduction, Princeton University Press, ISBN 978-0-691-18162-2(Amazon | honto | e-hon)が宅配されたのを受け取った。昨日メールで配達予告があったため,宅配ボックスへの配達を指定しておいたのだが,在宅中に届いたので受け取れた。この本は,データの視覚化についての基本を説明している。データ視覚化のために使うソフトはRで,Prefaceのところに次のように書いてあった。

  1. まずRの最新版を取得せよ。RはフリーソフトでWindows, Mac, Linuxで使える。自分のOSで使えるバージョンのRをダウンロードせよ。もしWindowsかMacOSのユーザなら,Rプロジェクトのトップページからリンクされているコンパイル済みのバイナリ配布(すぐに実行できるアプリになっているもの)を選べ。
  2. Rをインストールしたら,R Studioをダウンロードしてインストールせよ。これはRの統合開発環境(IDE)の1つである。IDEとは,Rのためのフロントエンドで,Rを使うことをずっと簡単にしてくれることを意味する。R Studioもフリーソフトで,Windows, Mac, Linuxで使える。
  3. tidyverseなどいくつかのアドオンパッケージをRにインストールせよ。これらのパッケージは本書全体を通じての利点となる便利な機能性を提供してくれる。tidyverse系のパッケージについてもっと詳しくは,そのウェブサイトで学ぶことができる。

ちょっと残念なのは,tidyverseを使うには,インターネット接続してRStudioを起動し,"Console"という名前のウィンドウにあるRのコマンドプロンプトに次の行を打ってリターンキーを押せ,といって,割と長いパッケージ名をたくさん含むスクリプト(ここで指定されているパッケージのうちMASSはWindows版のRでは本体同梱だから追加でインストールする必要はないが,たぶんMacOSかLinuxでは同梱ではないのかもしれない)が書かれていることであった。リンク先では1つのファイルにまとめてしまったが,本文には,最後の行の前でいったんスクリプトが切れて,「R Studioがこれらのパッケージをダウンロードしてインストールしてくれるので,devtoolsを使って本書特有の最後のライブラリをGitHubからダウンロードしてインストールできるようになる」と書かれた後に最後の行があった。この本専用のコードをインストールさせるのなら,devtoolsだけは先にインストールしなくてはならないが,他のパッケージは,GitHubからこの本のためのコードをインストールするときに自動的に依存パッケージとしてインストールするような設定にしておいてくれた方が良かったと思う。

本文に入ると,まず第1章が「データを見よ(Look at Data)」で,データに視覚化には良い方法と悪い方法があることと,それが何故なのかという理由が,たくさんのダメな視覚化の実例(平均寿命比較の3D棒グラフとか)とともに,錯視や心理学的な知見なども交えつつ説明されている。第2章から「さあ始めよう(Get started)」として,具体的にRStudioでプロジェクトを設定し,マークダウンを使いながら作図していく方法が示される。Rの文法の基本も示される。「オブジェクトが何なのかハッキリしなかったら,そのクラスを訊け」(オブジェクトをclass()関数に与えると数値なのか関数なのか文字列なのかデータフレームなのか,といったクラス情報が返ってくるという意味),「オブジェクトの中身を見たければ構造を訊け」(オブジェクトをstr()関数に与えると型と中身の情報が返ってくるという意味)といった格言的な見出しの付け方がうまい。

第3章がいよいよ「プロットせよ(Make a Plot)」となる。基本的にはggplotというかgridグラフィックスでの作図法が解説される。レイヤーの概念やグラフの保存方法なども説明されている。第4章は「正しい数を示せ(Show the Right Numbers)」と題されているが,第3章に引き続きggplotの作図で陥りやすい罠についての注意が続く。第5章はグラフにする前に簡単な集計をするためのdplyrパッケージのパイプの使い方が主である。第6章はモデル付きの図示を扱っている。第7章は「地図を描け(Draw Maps)」と題して,主としてコロプレス図の作り方が示されている。第8章はグラフを改良するためのテクニックが提示されている。付録としてRとtidyverse,dplyr,マークダウンとプロジェクトの使い方などについて付加的な説明が与えられている。

というわけで,どちらかといえば基本的な内容をコンパクトにまとめた本ではあるが,院生向けの作図法のテキストとしてはちょうどいいかもしれない。

老年という海をゆく

鈴木庄亮先生から,大井玄『老年という海をゆく:看取り医の回想とこれから』みすず書房,ISBN 978-4-622-08668-0(Amazon | honto | e-hon)に鈴木継美先生の思い出が書かれていると教えていただき,Amazonから買って,何日か前に届いたのを家に持ち帰ったまま放置していた。大井先生は,ぼくが博士課程を中退して人類生態の助手になったときに国際地域保健学教室の教授として着任されたので,直接ご指導を受けたことはないが,会議などで何度かお話ししたことはある。

朝食をとりながら,216ページからの「懐かしい人」を読んでいたら,つい章末まで読んでしまった。鈴木継美先生と親しかったことは存じ上げていたが,思った以上に古くからのつきあいだったのだと知った。知り合ったきっかけが,セレンの水銀毒性緩和作用について,化学形態による「生物学的利用度」の違いによるという説明をした(深酒してご本人は若い同僚が発表した時刻に遅れたという)学会発表で,継美先生がされた,生物学的利用度の定義は何かという「可愛がり」に対して発表者が答えられなかったために丁寧に説明する手紙を送ったことであったというのは,実にらしいというか,目に浮かぶようなエピソードだった。守山先生が語る徒弟制度の話や,稲岡さんが何度も愛をもって「バカ」と言われた話や,出嶋さんの夢枕に立たれた話も紹介されていた。継美先生がフィールドワークに深く入り込まなかったのは「頑健な身体に恵まれなかったから」という説明よりも,大塚さんがいたから,フィールドは大塚さんに任せれば良いと思ったからではないかと思う。ちなみに,ぼくが継美先生の最後の弟子なのだが,残念ながら,直接「バカ」と言われたことは少ない。ただ,ラボだけでもフィールドだけでもない人類生態学を確立するのだと,方法論の裏付けは薄いままに主張していたので,たぶんバカと思われてはいただろう。プロフィールに書いた通り,卒論で安定人口モデルに世帯構造を組み込むという野心的な取り組みをした挙げ句,シミュレーションのためのコードを書いたのだが,どんなパラメータにしても必ず絶滅してしまうというバグを取り切ることができず,時間切れで提出せざるを得なくて落ち込んでいたときに,「卒論なんてのは,どれだけ自分が阿呆かということがわかれば,それでいいんだ」というお言葉をいただいて救われたことは忘れられない。修士2年のときにパプアニューギニアのフィールドワークに連れて行っていただいて,後半1ヶ月半は毎日3時間睡眠で作業をしていたし,帰国後も3ヶ月ほぼ研究室に泊まり込んでサンプルの分析を仕上げたので,たぶん体力はあると思われていたと自負している。それを含めたマラリア感染と鉄栄養の研究を『パプアニューギニアの食生活:塩なし文化の変容』に取り上げてくださったので,多少は恩返しできたと思うが,自分が引退する前には新しい人類生態学の方法論を確立しないと,あの世で継美先生にあわせる顔が無い。もっと頑張らなくては。

本書には継美先生の話だけでなく,郡司先生の話も出てくる。「ジャーナリストによる個人攻撃は執拗だった」というのは櫻井よしこ氏のことだろう。そういえば,確かに当時学内にも立て看があったなと思い出した。郡司先生の遺作『安全という幻想』を読んで,初めて郡司先生が当時置かれた立場の難しさやつらい思いがわかって胸を打たれた,という経験はぼくも同じ(むしろこっちか)だった。

他の部分も老年期の医療や保健,あるいは国際保健や環境保健について含蓄ある話が(読み物なのでやや叙情的な記述になっているが)満載なので,読んで損は無いと思う。

コピルアク

先日スラバヤから帰ってくるとき,空港の手荷物検査場も通った後で豆のままのコピルアクが売られていたので,手元に残ったインドネシアルピアを使い切って買ってきたと書いた。具体的には100 gの豆で11万3000ルピアだったから,約800円である。Amazonでもまったく同じものが買えるが5,800円もするから,お土産として優れものだと思う(今は在庫切れみたいだが,珈琲問屋では4,000円なので,スラバヤの空港での値段はお買い得と思う。同じ製法の豆がフィリピンではカペアラミドと呼ばれるが,やはり同じくらい高価である。川端裕人君の『ギャングエイジ』では校長先生が粋人であることを示す小道具として使われていたことを思い出す)。言うまでもなく,ジャコウネコが食べたコーヒーの実のうち,種の部分が糞の中に未消化で出てくるので,それを集めて洗って乾かして脱穀して生豆にしたものである。ジャコウネコが十分に熟した実だけを選んで食べるために質が揃っていて良いことと,その消化管を通る間にムスクの香りが着くことから珍重されている。今日は何となく変わった風味のコーヒーを飲みたくなったので開封してみた。

神戸で使っているのはカリタのセラミックミルC-90だから,長野においてあるナイスカットミルよりも豆が潰れて微粉ができがちなのが残念だが,挽くだけで微妙に苦いというか,ムスクの香りといわれればそうかと思われるような香りが立ち上る。円錐ペーパーフィルタに入れ,沸かし立ての湯を使って点滴注湯すると,味はやや苦めで若干ピリッとするコーヒーというだけで,そんなにコクがあるとか旨みがあるとかではないのだが,何ともいえない香りがする。1杯はすぐに飲み,残りは魔法瓶水筒に詰めて研究室に持って行くことにした。

で,大学で仕事をしながら飲んでいるのだが,香りは水筒に詰めるとダメだな。今後はコピルアクは1杯ずつ淹れることにしよう。

原稿直しとか

PCのディスプレイだと見通しが悪いので,完成度7割~8割くらいの某原稿はプリントアウトすることにした。166ページは長いが仕方がない。

木曜の講義資料も30部印刷しておく。たぶん明日以降は多忙すぎて印刷する暇がなさそうなので。

気がついたら21:30なので帰ろう。食材を買わなくてはいけないし。作らねばならない書類が完成していないのだが。

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