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鐵人三國誌・アーカイヴ

Latest update on 2019年6月4日 (火) at 22:53:23.

目次

【第122回】 第71回日本人口学会大会@香川(2019年5月31日-6月2日)

初日は豊島巡検

5:00に起きて洗濯物を干し,残っている食べ物を食べてから三宮へ。7:05のバスに乗り,10:00少し前に高松に着いた。空いていたし快適だった。

今日は豊島で巡検。産業廃棄物不法投棄事件関連の現状と歴史を学んだ後,豊島美術館へ。衆議院の国会議事録に残っているが,女川港から廃油のドラム缶1,800個を積み込んだ高共丸が許可を受けないまま豊島に来て,結局廃棄は阻止した結果,3ヶ月あちらこちらと彷徨って,最後は北海道に行ったとか,とんでもない話だった。当事者として香川県や責任企業と直接戦いを繰り広げた石井さんが現場で(既に廃棄物自体は処分が終わっていて,今は跡地だが,まだ地下水の汚染物質が基準を上回ることがあるそうだ)説明してくださったので衝撃が大きかった。石井さんは只者ではないと思って検索したら藤原書店から去年本を出されていたのを見つけたので即時注文したのは言うまでもない。美術館の見学も終わった後,石井さんと公民館長を交えて暫く話をする機会があったが,豊島に元々住んでいて産廃と戦った人たちと瀬戸内芸術祭とはほとんどつながりがないそうだ。アーティストによっては深く歴史と自然を知ってから,ここに合ったものを作ってくれた人もいるが,まったく関係なく作った人もいた,と語られたお二方は寂しそうだった。難しい問題だよなあ。

高松に高速艇で戻り,琴電に2駅乗って,スーパーホテル高松禁煙館にチェックイン。BS日テレでプロ野球中継を見ながらメール送受信とか。途中で中継が切れてしまったが,高橋周平選手の月間猛打賞新記録ができなかったのは残念だったが,7-3で快勝し,3打点を挙げたことでヒーローインタビューに応じた高橋選手,悔しいけれどチームが勝てたのでいいです,といった感じの返答をしていて,さすがにキャプテンだと思った。6月も活躍を期待。

晩飯はコンビニで握り飯を買って済ませた。疲れていてそのまま眠ってしまった。

大会1日目の朝

5時に起きてメール送受信後,シャワーを浴び(スーパーホテルだから朝7:20までは大浴場に入れるのだが,今日は忙しいので部屋のシャワーで済ませた),ホテルの1階に降りて朝食。うどんがあるのは,さすがに香川だけあると思った。

フィリピンの港にカナダから不正に運び込まれて放置されていたゴミが送り返されたというニュースだが,昨日豊島でうかがった高共丸の話や,World Health Report 2007 "Public Health Security"に書かれていた,コートジボアールにIllegal dumping(注:不法投棄は英語ではこういう)されていたゴミとか,資源という名目で東南アジアやアフリカに運び込まれているeWasteとか,この手の話が後を絶たないのは,NIMBYのようなヒトの認知バイアスというか想像力の欠如というか低い道徳次元というか,そうした原因の組み合わせであろう。排出元への対策が必要。6月10日の環境・食品・産業衛生学では,そういう話もするべきか。

8:45頃にホテルを出て香川大まで歩いた。9:10頃受付にたどり着き,暫く待って受付完了。まずは,性に関する情報と人口のセッションへ。

小西さんの趣旨説明に続いて,林さんが包括的性教育の話。UNやUNFPAで議論されている論点の1つ。ロシア,イスラム圏,キリスト教保守派(米国共和党の支持者)などは反対。日本は「行き過ぎた性教育」バッシング事件など経緯があって及び腰なところがある? 感じ。2人目の方はタイ,韓国,日本などの教科書を提示しながら具体的な話。道徳の寒椿で性教育は酷い。2題聴いたところでアジア人口移動のセッションへ移動。

アジア人口移動セッション

日本からチェンマイへの退職移動の話。中川さん。国際人口移動の研究は欧米では盛んだが日本では少ない。近年は海外で暮らす日本人高齢者の医療や介護に注目した研究が出てきている。ただし目的地での医療や介護水準が低いために帰国するという研究もある。通年滞在か季節滞在かという論点もある。北米では冬だけフロリダ暮らしは以前からあった。ヨーロッパではドイツからカナリア諸島への退職移動をsecond home tourismと捉えた方が良いという議論も出てきている。チェンマイの邦人3221人中1441人が60歳以上(在留邦人統計2017年10月)。在留届を出さない人もいるが,チェンマイには日本人長期滞在者の団体があり,それを対象とした先行研究がある。けれどもその団体所属者は豊かな人が多く代表性がない。中川さんたちは2010年以降,主に街頭で質問紙調査をしてきた(ロングステイ団体に属さない人を対象にしたかったため)。チェンマイに暮らす日本人高齢者の実態を知るため。359人対象。72%が男性。1940年代生まれが男性68%,女性66%。男性は高学歴ホワイトカラーが多い。全体の半数がタイ語はわからない。生活費は32,109バーツ/月が全体の平均。短期滞在者で割高。3ヶ月以上滞在する長期滞在者は212人。通年滞在者は明らかに割安。ロングステイ団体加入の有無で月の生活費にはそれほど差は無い(若干加入者の方が生活費が多く掛かっているが)。5年間の変化として,ホワイトカラー割合上昇。生活費も5割くらい上昇。物価が上がったと感じているはず。通年滞在者の中には帰国計画をもっている人もいれば,帰れない人もいた。孤独死も顕在化(亡くなったら領事館が遺族を探して連絡したりする。遺族が来ない場合など,葬儀や埋葬など動いてくれるボランティア団体もある)。季節滞在者が増加し,SNSで情報交換している。

次は丹羽さんによるラオスの村からビエンチャンへの移動の話。村での人口構造の把握(全世帯主への聞き取り)と移動先のうちビエンチャンでの把握(移住者24人への聞き取り)。移動者中心アプローチで。既存資料は乏しい。チェーン・マイグレーションや高地-低地移動という枠組み? 移動者中心アプローチとは個人のライフヒストリーを丹念に収集する。ラオス全土の統計資料は未整備なので,移動数を定量的に把握することは難しいため,この方法をとる。村からビエンチャンにバスの乗り継ぎで移動すると1日半かかる。縫製工場の労働力不足があるため,女性の移動はそのためではないかと思っていたし,村の人たちもそういう認識だったが,実際は違っていた。内戦時いったん廃村となり戦後同じ場所に再び作られた村。2018年3月に42世帯181人。一時離村者27人を加えると208人。平均年齢27.3歳。居住人口の推移(聞き取りに基づく再構成)は,増えてきて安定化(転入と転出がバランス)。人口ピラミッドはピラミッド型。村外居住者は一時離村者27人,恒久離村者118人。ビエンチャンに行った人は54人。そのうち24人への聞き取りを実施。無職は1人だけ(主婦)。男は農業が半数くらい。移住当初は男女とも第2次産業(縫製工場)で働く人が多かったが,現在は第3次産業従事者が多い。本人の所得は100万から200万キープの人が多い。ビエンチャンは移住の最終目的地。タイへの渡航歴はなかった。ビエンチャンでの生活は「簡単に稼ぐことができる」「生活の質が良い」「快適」「子供の教育に良い」。村とはつながっている。既に親族がいなくても村へ連絡。平均7回/月。村の土地は所有している人が多い。ビエンチャンで個人タクシーをやっている人への聞き取り事例(奥さんも子供も働いていてかなり豊か)。基本的にチェーン・マイグレーション。ビエンチャンに行ってから製造業(縫製工場)からサービス業に転職する人が多い。ビエンチャンの産業別人口構造の統計はないので,この村から移住した人の割合をビエンチャンに元々いる人と比べるのは不可能。ビエンチャンで住んでいる人はバラバラなところに住んでいて,集落を作っているわけではない。ただしお互いに電話番号は知っている。家具の部品製造工場で働いている夫婦は月収約4万円,妻の実家が改築中のため村に送金していて携帯電話以外の動産・不動産はない。育児は村に帰ってやるかもと話している。

次は台湾の移住研究。低出生,高齢化,転出が問題。郊外から台北などの大都市への移住が多い。労働移動に注目する研究者は多い。経済的要因,地域特異的な要因,社会的要因などが移住に影響する。人口再分配にはマクロな要因とミクロな要因がある。community capitalと地域資源の関連がどの程度人口移動に影響しているかを調べる目的。community capital framework(Conelia and Jan Flora, 2003)。human capitalは労働市場で高い価値をもつための技能や熟練をもった人。人材。コンセプトとしては,human capital,social capital,financial capital,built capitalがresidenceとmobilityに影響するという概念枠組み。Taian Social Change Survey (2015)のミクロデータと各省庁のマクロデータを利用。5年以内の移動をmigrationと定義。migrant/stayerをアウトカムとしてロジスティック回帰。human capitalは教育レベル,トップ5に属する職業かどうか,他の3つのcapitalとともに,年齢,婚姻,独居かどうかを調整。4つのモデル。個人レベル要因だけ,コミュニティレベル要因だけ,両方(マルチレベルモデル? 結果の表からするとランダム切片モデルみたいだが),両方+調整因子(これもマルチレベル?)。(R2の数字が1より大きいのが謎。何?→質問したら%表記だった。だとすると,モデル4でも12とかいう数字なのは低いなあ -2LLが示されているが)教育と職業は移住に影響している。地区レベルの要因の中では地区が中心工業地区かどうかという変数のみ有意に効いていた。(social capitalの変数の記述統計が平均もSDも1ちょっとなので,たぶんこの点についてばらつきが少ない集団だからそこの影響が小さくても当然か)

シンポジウム

理事会の後はシンポジウム。自分が指定討論者の1人なのだが,どういうスタンスをとるべきか良くわからずにいるので困っているが,とりあえずメモを取りつつ聴いている。瀬戸内の島ってどういう成り立ちだっけ? と調べたくなって検索したら,産総研の地質図Naviによれば概ね火山島なんだな。ホワイトボードを使って人類生態学からの人間=環境系の見方を紹介し,その視点でここで紹介された様々な事例を見てみると? というコメントをした。パネルディスカッションもいろいろ盛り上がったので,まあ責任は果たせたと言えよう。その後は会員総会と会長講演。普通は会長講演には質疑はないのだが,津谷さんは質疑を受け付けたので影山さんと原さんが質問とコメントをしていた。少なくとも結婚満足度の分析の方は結婚前に一人暮らしだったか親と同居だったかの層別にした方が良いと思ったが,データが匿名化されてデータベースになっていて,申請すれば利用可能だそうだから,自分でやってみれば良いのかもしれない。

プロ野球の結果を嘆きつつ懇親会場へ移動

ドラゴンズとジャイアンツの試合は,清水投手が先発して4-0の楽勝ムードだったのが6回裏にリリーフした小熊投手が満塁のピンチを招いて田島投手に交替し,その田島投手が2本のホームランを浴びて4-5と逆転され,9回表に井領選手の二塁打から何とかつないで1点をもぎとって同点にしたものの,9回裏にJロッド投手がツーアウトからストレートの四球で出した亀井選手に盗塁され,坂本選手にサヨナラヒットを浴びるという,心が折れそうな展開だったようだ。シンポジウムの最中だったので中継を聴いていなくて良かったかも。

懇親会場まで喋りながら歩いて行ったら開始時刻に若干遅れてしまったが,乾杯には何とか間に合った。ちょっと飲み過ぎてしまって辛かったが,懇親会場が高松駅のすぐそばだったので,琴電に2駅乗ってホテルに戻り,そのまま眠った。

2日目の朝

日曜朝は4:00頃に目が覚め,6:00頃に大浴場に行ってきた。やはり大浴場は良いなあ。癒やされる。食事をしてからチェックアウトして香川大学まで歩き,午前中は歴史気候→数理→セクシャリティ→数理という順でセッション巡りする予定。午後は人口統計のセッションを聴いた後,その会場で死亡の自由論題の座長をしたら,今年度の大会は終わり。

が,やっぱりあんまり出入りするのも良くないので,午前中はずっと数理にするかな。

数理人口学セッション

西浦さんの2段階で外国人結核患者数推定する話はわかりやすく面白かった。第2演者渡辺さんのマクロ経済のモデルはなぜそう仮定して良いのかがわからないところがいくつかあったが,まあそういうものなのだろう。高田先生の齢構造モデル→レスリー行列→レフコビッチ行列の話がクリアだった。続く大泉さんはr淘汰,K淘汰の話。K戦略は現在も釈然としない。徐々に廃れた。なぜ少産少子が環境収容力を最大にするのかという理論的ギャップが埋められなかった。age-stage structured modelを連続化すると確率微分方程式に帰着。マッケンドリック方程式に状態移動がくっついた形。最大固有値は繁殖価。非自明の局所最適解をもつ。個体は推移するが行列自体は定数の遷移確率の行列。実は拡散方程式の拡張版なので,期待値は決定論的に得られる。こう考えるとr戦略もK戦略も最大化する関数は同じだが(密度効果がないのがr戦略),K戦略だと定常状態に至ったときは他の戦略が侵入できないという話になる(Oizumi et al. 2016, PLoS ONE参照)。最後は稲葉さんで,人口転換の数理モデル(Inaba, JMB, 2018参照)。出生力低下を模倣による文化伝播(☆Boyd and Richerson 1985みたいな?)と考え感染症流行と同じように簡単なODEモデルで検討できるというアイディア。SIモデルで低出生力規範の水平伝播と出生力が親から子へ垂直伝播することの組み合わせ。I/(S+I)を日本の総人口に当てはめたシミュレーションをすると結構合う。Iの割合は0か1に収束するだけなので指数解は得られる。線形化したインデックスも得られる。仮にIが増えても全体的な増加の方が大きければ少子規範は絶滅する。仮にIが減っても全体的な減少の方が激しければ少子規範ははびこる。このモデルが成り立つなら低出生力集団の中に高出生力集団が現れた場合,逆転換も起こりうるはず。転換過程は不可逆ではない。二種の共存が起きるのは出生力格差が伝達係数に等しい場合のみ(非常に起こりにくい)。年齢構造のあるモデルに拡張するとマッケンドリック方程式で書けて,bi-unstableな状況が起こって,2つの出生規範が共存する共存成長解が得られる場合もあった(そこに収束するとは言えていない)。(☆これまでWeinsteinが集団内でヘテロで低出生分集団を考えた,低出生の垂直伝播のモデルは低出生遺伝子を考えていたし,Boyd and Richersonは低出生な成功者を模倣するというミームの水平伝播を考えていたわけだが,垂直伝播も模倣―ただし100%の―で考えても説明できるということか?)

大会2日目午後

山下達郎のCDケースがずらっと陳列され,山下達郎の曲がBGMとして流れ続ける,大変美味でリーズナブルな値段の豚肉料理屋(とんかつひがさ 番町店)で昼飯をとってから,人口統計のセッション。いろいろと興味深かったが,次回国調について質問して得られた回答からすると,災害準備性もオンライン調査インフラの均霑化も広報戦略も前回と代わり映えしない感じ(70万人の調査員を臨時雇用するほど金を掛けるのだから,無料WiFiを使える場所を一時的に増やすことくらいできると思うがなあ)。オンライン回答フォームを多言語で用意したというのは素晴らしいと思う。抽出速報を止める代わりに確定数の公表を1ヶ月早めるという。9月にオンラインをやった際のゼロ歳人口のズレは? についてはフォローアップして修正できるように考えておきたいとのこと。

死亡のセッションは座長なのでメモをとる暇が無かったが,社人研グループによる死因絡みの話が4題と年齢別死亡率の平均寿命延伸への寄与の話であった。複合死因は,それ以前に死亡診断書や死体検案書に死因が記載される際に剖検もAutopsy Imagingもせずに書くケースが多すぎるのが問題なので,データを掘り起こしたとして,それがどれくらい正しいのかの評価に剖検率が高い地域や部分集団があれば比較することで評価できるのではないかと思ったが,どうもそういうサブサンプルはなさそうだった。官報から行旅死亡人を掘り起こしたら人口動態統計の年齢不詳と人数的に近かったという話は興味深かったが,官報から一々引っ張ってきたという話で大変だっただろうなあ。行旅死亡人データベースを作っておられる方(たぶん一般の方)がいらっしゃるので,これを使えたら便利だと思うが,研究で使うなら素性のわからない二次情報からでは引用できないだろうしなあ。

復路でプロ野球の結果を知って落胆

ほぼ定刻に閉会となり,高松駅まで歩いた。駅ビル2階にあった本屋をみたら気になる新書が4冊もあって買ってしまった。蕎麦屋で晩飯を食べてから高速バス乗り場に来たら,バスの発車15分前だった。完璧なスケジューリングだった(自画自賛)。

それにしても,今日もドラゴンズは3-1でジャイアンツに負けたようだ。坂本選手1人にやられた感じだな。高橋周平選手が2塁打を含む2安打したのが救いだが,その前を打つ大島選手とビシエド選手がノーヒットでは勝てないのも当然か。週明けからは交流戦で,パリーグの上位チームと当たるのは厳しいが,仕切り直して欲しい。

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