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鐵人三國誌・アーカイヴ

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目次

【第230回】 国際保健のレポート採点(企画倒れ)と原稿直し(2019年10月22日)

海回りで出勤

6:40起床。メディアは即位礼正殿の儀ということで朝からお祭り騒ぎで,祝日にもなっているため,公衆衛生実習もないし雑用が入らないはず。

納豆ご飯とリンゴ1個で朝食を済ませ,可燃ゴミを出してから,久々に海岸回りで出勤した。9:18に山陽須磨駅前を出る北須磨団地行きのバスだと,途中寄り道をしないので,降りるのは啓明学院前でも友が丘でも良いが,素早く大学に着ける。

天才

開成中学3年生がBlawnというプログラム言語を2ヶ月で開発してU22プログラミングコンテスト経産大臣賞受賞,というニュースを見て,GithubにBlawnを見に行ったのだが,どれが実行ファイルなのかがわからなかった。

40年ほど前の開成ではシャープのポケコンのBASICでプログラムを組むのが流行っていた中,(たしかZ80の)マイコンでアセンブラどころか16進数で直接プログラムを書くと言っていた友人がいたが,天才っているんだよなあ(若くして独自のプログラム言語を開発って,岩本隆雄の『星虫』シリーズの天才プログラマ寝太郎君を思い出した)。

本人のtweetを見たらKing Gnuファンらしかったが,何日か前に明石家さんまが司会をしていた番組で東京藝大の学生が選ぶ,本当に歌がうまい歌手ランキングでも,1位のMISIAに次いでKing Gnuが(おそらく,キラキラシャミセニスト川島志乃舞さんと同学年だったという井口さんのボーカルを指しているのか,番組の中で女性にモテる男性奏者が扱う楽器No.1とされていたチェロを藝大時代には弾いていたがボーカルもやっている常田さんも含めてのことなのかわからないが,同じ藝大という身びいきもあるにせよ)2位に挙げられていたくらい,いまの音楽シーンでKing Gnuはアイディアも演奏もボーカルも突出したグループの1つなので,センス良いと思う。

原稿直し

今日は先に原稿直しをやって,終わったら公衆衛生のミニレポートと国際保健のレポート採点をしたい。

そういうつもりではあったが,原稿直しが第3章まで済んだ時点で19:00を過ぎたので,帰ろうと思う。レポート採点は明日以降か。

ホークスは今夜も勝って,とうとう日本一に王手を掛けた。やはりここぞというところで強いなあ。

人口学関連本について

村上芽『少子化する世界』日経プレミアシリーズ,ISBN 978-4-532-26401-7(Amazon | honto | e-hon)は,ヨーロッパの出生と子育て支援の現状についてコンパクトにまとまっているが,ところどころ,人口学的な瑕疵が目に付く。例えば,図表2-1の凡例に「15~24歳合計特殊出生率」などとあるのは,15~24歳年齢別出生率の和,と書かないと誤解を生む。

先日Kindle版を購入した,ポール・モーランド(渡会圭子訳)『人口で語る世界史』文藝春秋は,マッシモ・リヴィ-バッチ(速水融・斎藤修訳)『人口の世界史』東洋経済,ISBN 978-4-492-37116-9(Amazon | honto | e-hon)(この本の訳者はお二人とも歴史人口学の開拓者であり権威であり,内容的にも素晴らしい名著)よりもずっと近・現代に力点を置いた政治よりの本だが,それなりに興味深い視点は含んでいる。

しかし,「付録1 平均余命の計算のしかた」は完全に間違っている。訳される前に誰も指摘しなかったのか不思議だが,Mxの合計が0.5を超えたところを平均寿命とするという説明が,そのやり方で計算された,シンガポールの「生命表」と称する表とともに提示されている。出典として本当のシンガポールの生命表のURLが付されているので信じてしまう人がいたらまずいのだが,もちろん,そのシンガポールの生命表は,Mxから求めたqxからlx,dx,Lx,Txを求め,Tx/lxとしてx歳平均余命を計算するという,ある年の年齢別死亡率に従って0歳10万人が亡くなっていった場合の各歳ごとにそれ以降延べ何人年生存するかを合計し,各歳別生残人口で割ることによって期待生存年数を得るという,普通の生命表の計算になっている(このページからリンクされているExcelファイルもそうなっている)。

偶々近い値になっているが,もっと極端な場合を考えれば,モーランド本の付録1の説明がデタラメであることは明確である。例えば,0歳死亡率が0.2,1歳死亡率が0.2,2歳死亡率が0.11で,3歳から48歳までの死亡率が0.0001,49歳以上死亡率が1,というデータを考えよう。モーランド本の説明だと,この集団の平均寿命(ゼロ歳平均余命)は2年になってしまうが,生命表で計算すると30.4年である(Rで以下を打つのが簡単だと思う)。

library(fmsb); mx <- c(0.2,0.2,0.11,rep(0.0001,46),1); lifetable(mx, class=1)

フランソワ・エラン(林昌宏訳)『移民とともに―計測・討論・行動するための人口統計学』白水社,ISBN 978-4-560-09691-8(Amazon | honto | e-hon)は,フランスの人口と人口政策,移民,移住政策について歴史的背景から最近の状況まで広範にカバーした本であり,かつ,著者がINEDの所長まで務めた人口学者なので,人口学的な正確さは他の移民関連本とは一線を画している良書だと思うが,ぼくと同様,世間にはびこる人口学への無理解や誤解への苛立ちを感じているようで,随所にそのことが書かれている。例えば,第11章「無知によってすべてを一刀両断にするエリック・ゼムール」は,冒頭から,次のように人口学者の溜飲を下げてくれる。

「人口学は知識欲のある人々の関心をひく社会科学だが,人口学の難解さを過小評価する,学ばずにしてすべてを知った気でいるアマチュアも興味を示す(中略)人口学を学べば,誕生,愛,死,そして亡命,難民,人口増加がわかると思うかもしれない。誰でも理解できるのか。人口学を実際に学習する際には,それらの親しみのある言葉は,出生数,婚姻数,死亡数などの冷淡な専門用語に代わり,移民の「フロー」と「ストック」を検証することになる(中略)他の学問の専門知識に比べれば,たいしたことがないと思われたかもしれないが,人口学を扱うには最低限の専門知識が必要なのだ。ところが「そんなことどうだっていい。人口学者なら簡単になれる」と思う輩がいる。「女性一人当たりの子供の数が2.1人なら人口置き換え水準である」と指摘すれば,すでに学識があり,ジャーナリストを煙に巻くことができる。テレビ局のスタジオでは,そうした輩が「人口学者」を自称している(しかも,彼らは日によって,経済学者,社会学者,地理学者,あるいは,それらすべてを自称している)。だが,本物の人口学者は,その人物が市民籍の登録を利用して合計特殊出生率や平均寿命を計算することさえできないと知っている。」

エリック・ゼムールがどういう人なのか知らないが,本書によると,移民やフランス凋落に関する終末論を書いている人気の自称人口学者だそうで,「INEDが示す合計特殊出生率0.1%」などと,まったく人口学を理解していない,誤解に基づくINEDへの批判(ある種の藁人形論法といえよう)を書いて人気を博しているそうだ。日本にもそういう似非人口学本や知ったかぶりな自称学者タレントは溢れているので,読者・視聴者は騙されないように気をつけて欲しい。

こういう人口学への無理解・誤解を解消するためにも,『Rで学ぶ人口分析』の原稿直しを早く仕上げないと。

(以上sradの日記にも転載したので,コメントあればそちらにどうぞ)

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