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【第374回】 また木曜が来たので丸一日講義(2020年4月23日)
- 6:30起床。74.90kg,98%,36.4℃。
- 木曜なので在宅で丸一日遠隔講義の予定。
- メール取材に答えた時事通信の記事が出ていた。答えたことの一部だが(長期的な話とかDigital Contact Tracingの必要性とか他にもいろいろ書いたのだが),大事なポイントの1つなので,良かったと思う。時事通信の規定で旧字体の名前が使えないということと,括弧内の専門性が「公衆衛生学」となっていたのが若干残念で,人類生態学……は無理でも,せめて国際保健学と書いて欲しかったところだが,まあパブリックヘルス領域だから仕方ないか。
- 考えてみれば,大学院では公衆衛生概論としてのPublic Health,疫学,人口学,医療人類学,環境保健学をほぼ1人で講義しているし(講座制ではないので,手伝ってくれる部下もいない),学部の保健行政論も含めて考えたら,公衆衛生学の教育者の中でも,ここまで守備範囲が広い人はあまりいない気がする。そういう意味では括弧内が公衆衛生学なのは当たっているのか。
- 1限と2限はそのPublic Healthで,今日はHealth Promotionの歴史の説明。Alma-Ata宣言を受けてオタワで開催された第1回のHealth Promotionの国際会議の結果合意されたOttawa Charter(オタワ憲章)にPrerequisites for HealthとしてPeaceとかStable ecosystemとかSustainable resourcesが挙げられている意味と,Helsinkiで2013年にHealth in All Policiesが強調されたが,それは実は第2回のAdelaide宣言でも既にフォーカスされていたことだったと説明した上で,2016年の上海宣言はHealth Promotionの流れとSDGsに至るglobal sustainabilityの流れを結びつけたものだったので,次回はglobal healthの流れを説明する,ということできれいに終わった。途中チャットで入ってくる提案や説明を拾いながらやったのでライブ感と緊張感があって,こちらも面白いが,再現不可能な講義(大きな流れは変わらないが)だし疲れる。
- 民間検査が統計外って本当なのだろうか。少なくとも感染症法に基づくサーベイランス事業で,指定感染症は一類から四類までと同じく全数直ちに報告だから,どこが検査したかによらず,医師は保健所に報告する義務をもち,保健所から各都道府県の衛生試験所にある情報センターを介して感染研の感染症疫学センターに集約され,週報として報告されるという仕組みはあるはずだし,そこには民間検査でも入るはずなんだが。問題は週報の集計に長い時間が掛かっていることで,この報告をオンライン化して自動集計にすれば患者数把握が一元化され問題は解決するはず,と1月か2月に書いた気がする。いろいろな人が都道府県発表などからデータを拾って正しさの議論をしているが,金を掛けてオンライン化しろ,と政府に要望した方が建設的ではないか。人口動態統計の死亡統計の集計の迅速化と合わせて,早期実現を望む。
- DemographyでRStudioを使ってプレゼンしようとしたら,インストール済みのパッケージが認識されなくなっていて焦った。AvatarifyをインストールしたせいでCドライブの空きが少なくなり,My DocumentにあったRのパッケージ群をEドライブのRlibsというフォルダに移して,起動アイコンのプロパティの作業フォルダにある.RenvironにR_LIBS=E:/Rlibsと設定して,素のRではうまく認識されていたのだが,RStudioではライブラリフォルダの変更が認識されていなかったのだ。仕方ないので再度fmsbとpyramidをインストールして講義を進めたが,後でRStudioの新しいバージョンをインストールし直したらうまくいったようだ。これで来週からは大丈夫なはず。
- 明日公開されるはずのR-4.0.0の変更点がメチャクチャ多い。すぐ導入すると問題起こるかもなあ。
- 順序カテゴリ変数の分布に2群間で差があるかどうかを解析したいときにどうしたら良いか,数日前に院生から相談を受けて返事した内容,ここにもメモしておく。よくされているのは,順序カテゴリだが元々連続量だったものを区間でカテゴライズしたものであるならば,区間の中央値で代表させ,2群間で平均値の比較をしてしまうとか,順序のままWilcoxonの順位和検定をするとか,順序の情報を無視してカイ二乗検定するとかだが,もっと良い方法として,このページに説明されているように,グループで順序を説明するという順序ロジスティック回帰の結果と,定数で順序を説明するという順序ロジスティック回帰の結果の尤度比を取る方法が考えられる。例えば,
set.seed(123)
y1 <- c(sample(1:3, 20, rep=TRUE), sample(4:6, 30, rep=TRUE))
y2 <- c(sample(1:3, 30, rep=TRUE), sample(4:6, 20, rep=TRUE))
y <- as.ordered(c(y1, y2))
x <- as.factor(c(rep("A", 50), rep("B", 50)))
table(y, x)
library(MASS) # polr()関数を使うので
anova(polr(y ~ x), polr(y ~1)) # 尤度比検定
chisq.test(table(y, x)) # カイ二乗検定でもやってみる
を実行すると,尤度比検定では5%水準で有意差ありだが,順序を無視したカイ二乗検定では有意差なしとなる。
- このWSJの記事,スマホでは何故か全文読めたのだが,PCで読もうとしたら有料会員登録が必要だった。接触・飛沫感染なら2 mの距離を空ければOKというWHOやCDCと,エアロゾル(NHKスペシャルで紹介されていたマイクロ飛沫で,たぶん飛沫核ではない。もし飛沫核感染があるならもっとRは大きいと思う)が長時間滞留し遠くまで飛ぶからそれじゃダメだという新説が対立しているという内容だったと記憶しているが,まとめスライドの7ページに書いたように,たぶんその両方の感染経路があって,後者にフォーカスしたのが日本の三密対策なのだ。だから,結論は両方の対策が必要という話になるはず。エアロゾルによる感染を認める報告がJAMAに出ていると書かれていたので検索してみたら,たぶんBourouiba L "Turbulent Gas Clouds and Respiratory Pathogen Emissions: Potential Implications for Reducing Transmission of COVID-19"(2020年3月26日掲載)と思われた。
- Scientific ReportsにIsshiki M et al. "Admixture and natural selection shaped genomes of an Austronesian-speaking population in the Solomon Islands"(2020年4月23日掲載)が出た。このグループでソロモン諸島での現地調査を一緒にやって採血したのは2004年だったが,人類遺伝学的な研究では,その後新たなサンプルを入手するのは難しくなったし,分析手法は新しく開発され続けているし,遺伝子データが古くなることはないので,今でも新しい論文が出る(この研究に自分がした主な貢献は現地調査なので,共著に入っているのが申し訳ないくらいだが)。この論文のCorresponding Authorは大橋順さんで,ぼくが助手になって初めてかその次くらいに卒論を指導した人類生態の後輩なのだが,最近,所属部局向けにCOVID-19の対策案を説明するための資料を作るのにSEIRを使っていた。彼は決して感染症数理モデルの素人ではないのだが,本職は集団遺伝モデルなので,たぶん本当はウイルス系統樹の解析とか,患者のゲノムによる重症化リスクの違いとか分析したいだろうなあと思う。そういうデータはたぶんないから,分析のやりようがないのだが。
(list)
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