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【第1868回】 今日も名谷へ出勤(2025年6月24日)
- 最近届いていた開成会会報に目を通していたら、同期がさまざまな職業別や地方の開成会の幹事長をしていて、いろいろ記事を書いていた。野水校長による近況報告の中で、さまざまな分野で活躍している卒業生の例として、角野隼斗さんや安野貴博さんに加え、松尾・岩澤研のM2で起業家の千葉駿介さんが紹介されていたが、どうせなら安野さんが松尾研出身であることにも触れたら良かったのにと思った(ちなみに、以前も書いたが、松尾教授はソフトボール部の後輩で、今では部長をしてくれている)。もっとも、この近況報告の中で最も面白かったのは、食堂のPayPayアプリ開発の話であった。あまり至れり尽くせりではなく、生徒の自主性にいろいろなことが任されている開成らしい話であった。
- 安野さんが参加している特別企画座談会もそれなりに面白かったが、その中で、「このままいくと2028年くらいには人間よりも賢くなっていてもおかしくないのではないかという予想がそれなりのリアリティを持って語られるようになってきた」という発言は、安野さんらしい「賢さ」の捉え方だなあと思った。AIには身体がないという究極の限界があるので、時空間の枠組み設定をする必然的根拠がないため、それだけは外部から人間が与えるしかないという点が無視されている。同じ限界から、人類が依存することができる唯一の共通価値観である人道主義(鄭雄一君が道徳本で書いている「第一の掟」)も解における必須条件としないので、その「賢さ」が導き出す解が効率としては最適だけれども非人道的で、最適ではないけれども人道的な解に比べて、誰も幸せにならないかもしれない。たぶん時空間の枠組み設定の問題(や、たぶん情報入力におけるA/D変換の同質性維持の限界も)については、安野さんも十分にわかっているとは思うが、あまり目を向けないようにしているのではないだろうか。AIにできるのは与えられた枠組みの中でのデジタル化された情報に基づいた最適解を得ることだけで、そこからくる限界は2028年くらいの近未来では超えられないはずだ。最近安野さんが批判されている場面の多くは、その点を無視あるいは軽視していることから来ている。核燃料だって輸入に頼るしかないのは火力と同じ問題点を抱えているし、高レベル放射性廃棄物が蓄積されていく危険性を考えたら、ある程度時空間の枠組みを広げたら、『1%の革命』に書かれていた原発推進という解には至れないはず。
- 逆に、AIに身体を与えたら? とか、AIは人類を宿主とする寄生体であるという情報を基本条件として与えたら? という可能性は、既にSFとしてはいろいろ想像されているが、それ自体をAIに問いとして投げたらどういう答えが返ってくるだろうか。鄭君はAIが社会に受け入れられるためには道徳次元が4でなくてはならないと書いていたが、もっといえば、道徳次元が4であるということが社会に周知され信用されていなければならないので、同様に、安野さんたちが信用されたいのならば、人道主義を根幹に置くことや道徳次元が4であることを明言すべきだと思う(自明だと思って言わないのかもしれないが、批判されているのは、多少でも非人道的な帰結につながるリスクがある言明があった場合なので)。逆に言えば、人道主義あるいは道徳次元4であることを蔑ろにするのならば、局所最適かもしれないが非人道的な解に行き着いてしまう危険があるので、政治家になるべきではないだろう。
- でも、先日同期青組のLINEグループで、安野さんも青組だったという情報を得たところなので、基本的には応援している(これって道徳次元としては2か3な視点だが)。バランス感覚もあると思うし、たぶん聞く耳はもっていると思うし。
- ところで、自分が生徒だった頃には養護教諭の田中八重子先生しかいなかった女性教員が、現在の開成には20人もいるそうだ。
- 今日は時間が決まった仕事はないが、いろいろと積み残し仕事があるため、名谷に出勤する。
- Kindleで映画『フロントライン』の小説版を読了。現場視点で人道主義的なギリギリの活動をした人たちにとって、話題性本位のメディアや匿名の悪意や、悪い意味での善意の押しつけが如何に邪魔だったかという話であった。ぼくは当時現状ダイヤモンドプリンセスにDMATが対応するのは原則的にはおかしいとメモしたが、他に引き受ける人がいなかったから仕方なく対応したのだということが明記されていて、システム的な欠陥だったことは描かれた点は良かったと思う。ただ、当時既に専門家会議はできていたのに、そちら側の話はいっさい描かれていないのは若干残念だった。
- 午前中はオンラインで院生指導。2時間近くかかったが、大きく進んだといえよう。
- 午後はメールの返事を打ちながら積み残し仕事をしていた。英語原稿を直していると時間が飛ぶように過ぎるなあ。
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