保健行政論で喋った医療保障の根本についてちょっと書いておく。福祉国家においては,国民は基本的人権として医療を受ける権利がある。リスボン宣言でも最初に書かれていることだし,国連SDGsのゴール3に含まれているUniversal Health Coverageでもそれを全世界で達成することを目標としているし,日本国憲法25条で保証されている生存権の一部と考えられるし,医師法に応召義務があり正当な理由無く診療を拒んではならないし,医療法にインフォームドコンセントが定められているので,医療を受ける必要を感じたら医療機関を受診して診察を受ける権利がある。だから,39℃の発熱があって苦しかったら受診することはできるし,医療機関はそれを拒めないはずである。ただし,診察を受けることはRT-PCRを受けることと同義ではなく,医師が鑑別の必要があると判断しなかったら,いくら患者や家族が主観的にCOVID-19かもと思っていても,RT-PCR検査をオーダーしないことはありうる。そこは患者側もわかっておくべきだし,それが日本で期待される患者役割(patient role)である。もちろん,納得しなかったら,適切な説明を受けることができるのは前述の通り医療法に定められた患者の権利だし,別の医療機関を受診しても良い,というのが日本の医療制度。ただし,医療機関はCOVID-19の感染が起こりやすい場所の一つだから,いわゆるドクターショッピングのようなことをすると,実は感染していなかったのに,その行為によって感染してしまうリスクもある。