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【第779回】 講義準備と日本健康学会広報仕事をしつつ新しい論文を拾う(2021年6月25日)
- 6:00起床。81.95 kg,98%,36.4℃。
- 昨夜のDearest "B"のセッションはNHKがYouTubeで公開してくれた。素晴らしい。
- 熊本大学のパルスパワーによるアニサキス殺虫についてのプレスリリースをリンクしておく。来年の環境・食品・産業衛生学の食品衛生のネタとして追加することを検討するため。
- 理事長案が理事会を通ったので理事会名で声明を出せる。今日中にはウェブサイトに載るはずだし,そうしたら公式twitterアカウントでも流す予定→ちょうど午後に会議があるので他学会にも呼びかけてみるという話になったので,ウェブ掲載はその後ということになった。当然tweetもその後にしかできない。
- オリパラ関係者の入国は昨秋できていたアスリートトラックに従って14日間の隔離を免除されているのだが,空港検疫陽性のときや濃厚接触者になったときにどう扱われるのかが書かれていない。その意味でアスリートトラックというのはザルなのだが,出入国在留管理庁の新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について(令和3年6月21日現在)に詳しく書かれていて,まとめを見てもわかるように,いまだビジネストラックによる入国が停止されているのに,オリパラ関係者の入国が「特段の事情」として認められているのは,「入国目的に公益性が認められる者(個別事案ごとに関係省庁協議を経た上で公益性を判断)」とのことで,認めた主体の責任の所在が曖昧であり,その人々に対して防疫としてザルなアスリートトラックを適用するというやり方は暴挙と言わざるを得ない。多くの国民が反対している今夏開催されるオリパラに何の公益性があるというのか。ビジネストラックが停止中なのにオリパラ関係だけ「関係省庁」が勝手に認めた「公益性」があるとして14日間隔離をしなくて良いというザルな体制で上陸許可している現状に対して,商社とかは怒っても良いのではないか。
- 結局官邸のごり押しだと思うが,それに各省庁が唯々諾々と従っているのは内閣人事局が全省庁の幹部人事を握っているからに違いなく,実態として現在の日本は独裁政権になってしまっている。
- 15:30頃,日本健康学会ウェブサイトで理事会名での東京五輪への提言が公開されたので,公式twitterアカウントでもtweetした。多くの方に読んで考えていただきたいと思う。
- 理事会での情報共有の過程で教えていただいたが,日本疫学会が2021年6月20日付けで「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に伴う 新型コロナウイルス感染拡大防止対策に関する要望書」を出していた。日本分子生物学会からも昨日付けで理事長談話が出ていた。これら2学会は,専門家有志の会の提言を支持するというスタンス。日本健康学会の提言は,より広い視野になっている。
- 来週の講義準備もしなくてはいけないし,月末締め切りの原稿も書かねばならないのだが,その前に新しい論文を拾っておく。
- Creswell C et al. "Young people's mental health during the COVID-19 pandemic"(Lancet Child & Adolescent HealthのComment,2021年6月24日)は,UKのCo-SPACEで8700家族にSDQという質問紙でメンタルヘルスの調査をした結果について,便宜的サンプリングだしCOVID-19パンデミック前のデータはないけれども,毎月のデータがとれているので解釈する意味があるとして推移を見ている。ロックダウン中にメンタルヘルスの問題が大きいなどいくつかの傾向が認められたとしている。
- Robinson LB et al. "Incidence of Cutaneous Reactions After Messenger RNA COVID-19 Vaccines"(JAMA DermatologyのResearch Letter,2021年6月23日)は,ファイザーかモデルナのmRNAワクチン接種を受けた約5万人のヘルスケアワーカーのうち,1回目接種のあとで皮膚の発赤や接種場所以外の痒みなどの皮膚反応が出た人が1.9%いたという報告。思ったより皮膚反応が出る人は少ないのだな。
- Vasquez-Apestegui BV et al. "Association between air pollution in Lima and the high incidence of COVID-19: findings from a post hoc analysis"(BMC Public Health,2021年6月16日)は,目の付け所というか,元々大気汚染が酷いところに住んでいる人の方がCOVID-19感染リスクが高いのではないかという発想が面白い。ちょっとミアズマ説を思い出させる。もちろん大気汚染が酷いところでは低所得者も多そうだし衛生状態も悪そうだから,その辺りの共変量を調整しなくてはいけないと思うが。南米でもっとも大気汚染が酷い場所の一つであるリマ市の24の地区で2010年から2016年のPM2.5曝露レベルを測ったデータがあったので,2020年3月6日から2020年6月12日までの患者128700人とそのうち死亡転帰を辿った2382人について,年齢,性別,地区の人口密度と食品市場数を調整した上で,PM2.5曝露レベルは,患者数と死亡数を目的変数としたときの標準化偏回帰係数が0.07と0.0014で統計的に有意な正の影響を示したが,CFRへの標準化偏回帰係数は有意でなかったと書かれていた。人口密度は共変量として調整した上での話なので,接触が多いから感染しやすいという説明は成立しないが,低所得だったり低栄養だったり対人接触の多い仕事が多いのかもしれないから,大気汚染によって肺が痛んでいたとは言い切れないと思うが,この論文はそうした可能性には触れず,長期的な大気環境の改善が呼吸器系感染症対策として重要と提言している。
- 最近のScientific Americanに再収載されていたのだが,元々NatureのNews Featureとして書かれていたAshwanden C "How COVID is changing the study of human behaviour"(Nature,2021年5月18日)は,COVID-19パンデミックによって行動科学研究が変わりつつあるという話。
- Krause PR et al. "SARS-CoV-2 Variants and Vaccines"(NEJMのSPECIAL REPORT,2021年6月23日)は要旨を直訳すると「ウイルスのVOCは,Covid-19を予防するために現在使われているワクチンによって得られる免疫に対して危険な抵抗性をもって出現するかもしれない。それ以上に,もしVOCの中に感染力や病原性が高まっているものがあったら,効果的な公衆衛生的防御手段とワクチン接種プログラムの重要性は増すだろう。世界の対応は,タイムリーでなければならないし,同時に科学に基づいていなければならない」と書かれていて,チャレンジングな内容も含んでいるように思われるので,プリントして後でちゃんと読もう。
- Cai Y et al. "Structural basis for enhanced infectivity and immune evasion of SARS-CoV-2 variants"(Science,2021年6月24日)は,B.1.1.7変異株(alpha)とB.1.351変異株(beta)のスパイク分子構造を調べて,前者はACE2との結合性が高まっていて,後者はある種の中和抗体に抵抗性をもつように抗原表面がreshapeされるように進化したというメカニズムを示している。
- Siegrist M, Bearth A "Worldviews, trust, and risk perceptions shape public acceptance of COVID-19 public health measures"(ProNAS,2021年6月15日号)は見逃していたが,NPIs実装に成功するかどうかは,公衆の受容に掛かっていることから,その要因を調べたところ,性別や年齢は関係なく,信頼や世界観といった心理的な変数がリスク認知とNPIsの受容に強く影響していたとしている。後でちゃんと読もう。
- Hou X et al. "Intracounty modeling of COVID-19 infection with human mobility: Assessing spatial heterogeneity with business traffic, age, and race"(ProNAS,2021年6月15日号)は,ウィスコンシン州の2つの郡のデータを使って,ビジネスに伴う人流,年齢,人種についての空間不均質性を組み込んだモデル(SEIRをベースにしたメタ個体群モデルだが確率的なばらつきも考慮している)を使って,郡内の人口移動とCOVID-19の感染拡大の関係を分析している論文のようだ。これも後でちゃんと読もう。
- Schmelz K, Bowles S "Overcoming COVID-19 vaccination resistance when alternative policies affect the dynamics of conformism, social norms, and crowding out"(ProNAS,2021年6月22日号)は,ドイツのパネル調査のデータを使ってモデリングを行い,どうしたらワクチン忌避を避けられるのかを探り,効果的なワクチン政策を検討している論文のようだ。匿名化したデータとコードがここで入手できる。
- これまでPLoS ONEはあまりちゃんとチェックしていなかったが,いろいろチャレンジングな論文が出ていた。
- Kang S, Kong KA "Body mass index and severity/fatality from coronavirus disease 2019: A nationwide epidemiological study in Korea"(PLoS ONE,2021年6月22日)は,韓国のナショナルデータでBMIとCOVID-19の重症度/致命リスクの関係を調べている。図の軸ラベルに誤植があるが,23.0-24.9が重症化も死亡も最も低リスクで,それより太っていても痩せていてもオッズ比が大きくなるという結果。
- Kaimann D, Tanneberg I "What containment strategy leads us through the pandemic crisis? An empirical analysis of the measures against the COVID-19 pandemic"(PLoS ONE,2021年6月21日)は,68ヶ国,プエルトリコ,USA50州,オーストラリア4州,カナダ8州の封じ込め政策を比較して,学校閉鎖,必須職種以外の停止,大人数集会の禁止,旅行制限,国境封鎖などのNPIsが感染確定数の増加を抑えるのに有効だったとしている。
- Purwati et al. "An in vitro study of dual drug combinations of anti-viral agents, antibiotics, and/or hydroxychloroquine against the SARS-CoV-2 virus isolated from hospitalized patients in Surabaya, Indonesia"(PLoS ONE,2021年6月18日)は,インドネシアのアイルランガ大学のラボからの報告で,in vitroだが,2種類の薬を組み合わせて培養細胞でのSARS-CoV-2への影響を調べ,細胞毒性がでない濃度でも,さまざまな組み合わせで,ウイルスコピー数の減少,炎症マーカーの産生低下が見られたと報告している。
- Locatelli I, Rousson V "A first analysis of excess mortality in Switzerland in 2020"(PLoS ONE,2021年6月17日)は,スイスのデータを使って超過死亡を評価していて,2019年までの5-6年の平均死亡レベルに比べて,2020年は8.8%標準化死亡率が高かったと書かれている。平均寿命が男性9.7ヶ月,女性5.3ヶ月短縮したとのこと。
- 来週の講義資料を作ってアップロードが終わり,Zoomの予約が終わった時点で20:45。あとはBEEFを更新したら帰ろう。
- というわけでBEEFの更新が終わった時点で21:00。ドラゴンズはビシエド選手のスリーランホームランで6-3と勝っていて,これから9回裏で又吉投手が登板するので,まあ勝ちだろう。radikoでCBCを聴きながら帰るか。
- 最後は危なかったが,カープのサードコーチャーが謎の暴走をさせてくれたおかげで6-3のまま勝った。とはいえ,又吉投手は凄く反省しているのだろうなあ。
- 帰宅後に晩飯を食べると22:00過ぎまで何か食べていることになるわけで,こういうの太るんだよなあ。
(list)
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