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【第815回】 朝から土砂降り(2021年8月3日)
- 6:15起床。80.85 kg,98%,36.3℃。
- 久しぶりに外は土砂降りで,神戸市には大雨警報が出ている。今日は歯科受診してから出勤して採点の続きなどをすることになっている。
- 両側の歯を土台にしてブリッジを作るということは,いったん両側の歯のクラウンを外して,3本分のクラウン(というか中央は義歯になるわけだが)を一体成形するということなのだった。思っていた以上の大作業だったし,(ひよどり台歯科ではよく光硬化性樹脂を使って作ってくれた)仮歯のようなものも付けてくれなかったので,これから1週間,左上の歯が3本ない(両側は小さく残っているけれども)状態で過ごさねばならない。まあこの機会に劣化していたであろう古いクラウンを新品と換装できると考えれば悪くはないのか。
- 数日前に5.1版を引用したが,その直後に厚労省の「診療の手引き」5.2版,2021年7月30日が出ていた。ただ,5.2版でも,医療従事者が評価する基準としての重症度分類(p.34)は5.1版と同じく,肺炎所見なしを軽症とし,肺炎所見があれば中等症としているのは変わらなかったし,SpO2の基準値も変わらなかった。となると,官邸サイトで公開されている,総理が昨日の関係閣僚会議を開いた際のコメント「ワクチン接種の進行と、感染者の状況の変化を踏まえて、医療提供体制を確保し、重症者、中等症者、軽症者のそれぞれの方が、症状に応じて必要な医療を受けられるよう、方針を取りまとめました。重症患者や重症化リスクの特に高い方には、確実に入院していただけるよう、必要な病床を確保します。それ以外の方は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備します。パルスオキシメーターを配布し、身近な地域の診療所が、往診やオンライン診療などによって、丁寧に状況を把握できるようにします。そのため、往診の診療報酬を拡充します。」は,2つの理由で,肺炎所見のある中等症者(少なくともその一部)について「自宅での療養を基本」としたとしか読めない。COVID-19でなくても肺炎所見があれば入院治療というのが日本の医療水準で期待される医療だったわけで(2009年パンデミックインフルエンザのとき,日本のCFRはUSAやメキシコに比べて圧倒的に低かったのだが,もしかするとその理由の一つは医師が肺炎所見から必要と思えば入院適応にできたことにあったかもしれない),それを止めるしかないという状況は,去年旧専門家会議が懸念していた「オーバーシュート」だし,医療崩壊が起こってしまったことを意味する。この状態でさまざまな資源(とくに医療従事者)を使ってオリンピックのお祭り騒ぎを続けるのは正気の沙汰ではない。
- ちなみに上記2つの理由とは,(1)この文脈でいう「重症化リスクの特に高い方」は,中等症のことではなく,「診療の手引き」の2章の表2-1に載っている重症化リスク因子のある方(高齢者,慢性腎臓病やNIDDM,高血圧などの基礎疾患がある方,BMI30以上の肥満者等)か,表2-3に示されている重症化マーカー(Dダイマー高値とかIL6高値とか,以前から臨床疫学研究結果がいくつもでている)に引っ掛かる方を指すと解釈されることと,(2)仮に中等症の方を「重症化リスクの特に高い方」に含むのならば,とくにこれまでと「重症者、中等症者、軽症者」に対する医療的対処は変化しないことになるので,この言明をする意味がない(し病床確保もできない),という2点である。
- なお,米国NIHの重症度分類に相当する「臨床スペクトラム(Clinical Spectrum)」は,無症状または発症前感染(asymptomatic or presymptomatic infection),軽症(mild illness),中等症(moderate illness),重症(severe illness),危篤(critical illness)の5段階で,基本的に重症以上が入院治療となっているが,この重症は,SpO2が94%未満,1分間の呼吸数が30回以上,PaO2/FiO2が300 mm Hg未満,または肺浸潤50%超という基準で,鼻からのカニューレか高流量デバイスを使って酸素吸入しなくてはいけないとあるので,日本の分類でいえば概ね中等症IIに相当する(日本の重症は概ね米国基準の危篤に相当する)。日本の中等症IはSpO2が93-96%となっているので,SpO2だけで考えると中等症Iでも米国基準の重症に該当する場合が出てしまいそうだが,日本の中等症IとIIの区分は呼吸不全の有無が鍵で,中等症IIで酸素投与が必要となっているので,SpO2だけで考えることはできない。そのため,「診療の手引き」には中等症Iの患者について「入院の上で慎重に観察」「低酸素血症があっても呼吸困難を訴えないことがある」と書かれていて,「パルスオキシメーターを配布」するだけで,かかりつけ医がオンライン診療で判定できるとは到底思えない。誰が作文したのか知らないが,やはり昨日の首相発言は酷いと思う。
- もう1点指摘しておくと,「診療の手引き 5.2版」のp.49には中外製薬の抗体医薬品ロナプリーブについて,「臨床試験における主な投与経験を踏まえ,SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し,酸素投与を要しない患者(本手引きにおける軽症から中等症I)を対象に投与を行うこと」とあり,p.51には,医療機関がロナプリーブを入手する方法について書かれているのだが,その書き出しが「本剤は安定的な供給が難しいことから,当面の間,入院治療を要する者を投与対象者として配分される」とある。つまり,基礎疾患があるか高齢,肥満などの重症化リスク因子がある軽症から中等症Iの患者が入院していない限り,投与できないわけだ。総理コメントの後半,「さらに、重症化リスクを7割減らす画期的な治療薬について、50代以上や基礎疾患のある方に積極的に投与し、在宅患者も含めた取組を進めます」とあるのと見事に矛盾している(ロナプリーブ以外に「重症化リスクを7割減らす画期的な治療薬」など存在しない)。現在までの科学的知見と明らかに矛盾することを公の場で首相が口にするとは,もはやデタラメを超えて支離滅裂である。この状況を英語で書いてどこかのジャーナルのコメンタリーにでも投稿してやろうかと思うほど。
- 舛添大臣以降暫く事務官ポストだった医政局長に去年の夏から医系技官である迫井正深氏がついている(日経BP Beyond Health,2020年9月4日)という記事。内閣人事局長の差配だろうか。TOKYOMERは面白いドラマだが,一つ違和感があるのは,鶴見辰吾が演じているダークサイドに堕ちた医政局長が,官僚は政治家に忠誠を尽くさなくてはいけないとして厚労大臣に媚びるところ。内閣人事局ができて以降,厚労大臣より杉田氏の方が人事権的には上だろう。ロジックとして媚びる相手を間違えている。もちろん媚びずに毅然としてMERの一員として救命活動に当たりながら公衆衛生的な理想に燃えている,賀来賢人演じるスーパー医系技官の方が圧倒的に格好良く描かれているし主役の一人なので,ドラマ的にはどうでも良いところなのかもしれないが。
- 保健学研究科のある教授から,基盤センターから借りているwebサーバの更新について相談を受け,基盤センターのサービスの制約を説明した上で,それが嫌なら外部レンタルサーバを契約するとか無料サービスを使っている方もいますよ,と事例を紹介したり。業者にも相談しているようで,業者の方とも話したのだが,制約を説明したらがっかりされていた。WERみたいに独自の公開サーバを立てればCMSインストールでも何でもできるが,その方が高いし,セキュリティ維持のための技術的ハードルも高いので,本末転倒というか,余計に無理だろう。最初からCMSが使える外部無料サービス(wixとかxreaのfree版でWordPressを使ってみるとか)で作って,そこを学内のページからリンクするしかないんじゃないかなあ。
- 気がついたら19:30を過ぎていたので,採点はまだ終わらないが帰途に就いた。
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