【第826回】 今日は名谷に出勤し，夜はミーティング（2021年8月19日）

• 6:30起床。80.65 kg，97％，35.9℃。
• ロックダウンのタイミングは早いほど短期間で感染抑え込みが可能なことが既知と昨日tweetしたところ，たくさんのRTといいねをいただいているが，補償は関係ないとか罰則が必要とかいった見当外れなコメントも付いている。補償なしに休業したら生活が成り立たないから時短要請にさえ従わない人が出てくるわけで，生活保障のための休業補償とセットにすることは公衆衛生政策としては必然で，それがわからないようなコメントは無視して差し支えないと思うし，そういうコメントを書く人の場合，一部は業務でやっているのかもしれないが往々にして説明しても理解しないことが多く面倒なので，原則として一々応答しないことにした。New ZealandのLockdownとはAlert Level 4のこと。去年4月に出た，Alert Level 4での警察ガイドラインを見ると，確かに罰則規定もあるのだが，警察が何をできるのかをこのように細かく決めておけば，それに従わない場合は公務執行妨害という対応がとれるので十分なのではないか？　また，去年3月末からの第一波に対して去年4月に出た最初の緊急事態宣言で日本政府が求めた行動制限は，ほぼこのNew ZealandのAlert Level 4に近いものだったし，加えて全国民一律に10万円を給付するという方法で最低生活保障をしたことによって行動制限が機能したので，今のような，多くの人が普通に通勤していて，オリンピックのようなマスギャザリングイベントもやっていて（パラリンピックの学校連携観戦も中止になっておらず，というかパラリンピック自体，首都圏の医療崩壊状態にもかかわらず強行予定なのが信じがたいが），部活もやっていて，学校も9月から対面とか言っていて，クラスター感染リスクが高い業種にだけ時短要請をするような，名ばかりの「緊急事態宣言」ではない，New ZealandのAlert Level 4に近い行動制限は，去年の春の日本でもできていたわけだ。つまり，いま必要かつ有効な政策としては，欧米のようなロックダウンとまで言わずとも，「緊急事態宣言」の中身を去年4月に出した初回のものに戻すだけでも良い。まずは事実を踏まえることが重要だろう。
• ちなみにNew Zealandの休業や休職関連の補償に関しては，COVID-19 financial support: Current financial support schemes for businesses, employers and employees.やLeave and pay entitlements during COVID-19 response and recovery: Your rights and responsibilities regarding pay and leave during COVID-19 response and recovery.に書かれているようだ。New Zealandの場合，こういう方針が出されるとともに，アーダーン首相が，ちゃんと中身を理解した上で自分の言葉で語りかけているのも，国民が行政への信頼を失わないために重要なポイントと思う。
• 院生から書類への捺印を求められているため名谷キャンパスに出勤しようと思っているが，風雨と雷が酷いので，もう少し小降りになるまで待とう。甲子園では野球をやっているので，局地的な気象だと思うし。
• というわけで，10:00を少し過ぎたところで研究室に着いた。締め切り過ぎた原稿を書きながら院生待ち。
• このtweetで紹介されている，Data Colada [98] Uri, Joe & Leif "Evidence of Fraud in an Influential Field Experiment About Dishonesty"の話は大変興味深い。COVID-19関係でもSurgesphereというデータ管理会社の不適切な処理のためLancetやNEJMに載った論文が取り下げられているように，データ収集を外部委託することは危険なわけだが，大変有名な行動経済学者であるダン・アリエリーが著書『ずる』で紹介している（この書評でも触れられている），署名実験のデータが捏造だったというのだ。署名実験の元論文は，Shu LL et al. "Signing at the beginning makes ethics salient and decreases dishonest self-reports in comparison to signing at the end."（ProNAS，2012年9月18日号）で，方法のところには，ラボ実験はハーバード大とノースカロライナ大のIRBを通ったと書かれていて，対象者もラボ実験では米国南東部のローカルな大学の学生と被雇用者（実験1は101人，実験2は60人）と書かれているのだが，フィールド実験の方は米国南東部のある車の保険会社と協力して実施し，送られてきたデータファイルを解析したと書かれているだけで，対象者の詳細な属性やデータ収集方法の詳細は書かれていない。だが，情報を得る前に「正直に答える」という声明に署名しておくと，事後に署名させるよりも不誠実さが減るという結果には，著書でも引用するくらい自信があったようだ。それが，去年出た論文，Kristal AS et al. "Signing at the beginning versus at the end does not decrease dishonesty."（ProNAS，2020年3月31日号）が，実験1の検出力が高い再現実験を試みたが失敗したと批判し，議論になっていたところ，DATA COLADAの記事の著者らは，フィールド実験のデータを精査して不自然さを多々見つけ，それが捏造であることを明示したのである。この指摘を受けて，ダン・アリエリーは，データの不自然さは全面的に認める。保険会社とのやりとりは自分だけがやっていて，他の共著者は無関係だ。10年以上前に保険会社が収集して匿名化して送られてきたファイルを解析したのだが，その当時はデータが捏造だなんて疑いもしなかった（大意）と返事しているので，事前の署名が誠実さを高めるというエビデンスは無くなったといって良かろう。実験1と2については，少数の学生を対象にした実験なので，それだけだったらProNASには通っていなかったと思う。フィールド実験のデータが捏造だったことがわかったのだから，2012年の最初の論文はretractすべきだろう。
• ２人の院生の必要書類に必要事項を記入し捺印を済ませた。あとは締め切り過ぎた原稿を片付けねば。
• 今夜のミューズノートのお題は「南の島で聴きたい曲」とのことで，パプアニューギニアやソロモン諸島のことを思い出すと圧倒的にレゲエと賛美歌なのだが，例えば2015年のPacific GamesのPNGチーム応援歌だった"Time To Shine"とか良くないか？　いやまあ流れないだろうけど。個人的に南の島っぽさを感じる音はSteel Drumだが，なかなかこれという曲は思いつかないな。他に南の島で聴いたら良さそうな曲は，GONTITI「Bamboo Chair」とか，かの香織「青い地球はてのひら」とか「僕だけの休暇」とか，ゴロニャンず「ぱいなっぷるめろでぃ」とか，最近の曲だったら，Penthouse「Long Summer Break」とか，ゴホウビ「NATSU DE SKA」とか？
• 原稿が終わらなかったが帰宅し，晩飯をさっと作って食べてからミーティング。その後研究相談に乗っていたら21:30になり，ドラゴンズの試合は既に終わっていて，1-3で負けだった。
• 23:00まで原稿の続きをして，ミューズノートを聴いてから眠ろうと思っていたが寝落ちしてしまった。

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