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【第837回】 今日も査読仕事とレポート採点とICHS Summer School(2021年9月3日)
- 6:00起床。80.20 kg,97%,35.9℃。
- ICHS Summer Schoolの2日目。今日の1コマ目はWHO神戸センターの茅野先生。WHOと神戸センターの説明も含めた,Global Health,SDGsなどの話になるようだ。MDGsにおける子どもの死亡率削減からワクチン接種戦略の話としてGlobal FundとかGAVIとか。公衆衛生学特講I, IIを受けた院生は既に知っているはずだが,覚えているかどうかはわからない。残念ながらCOVAX Facilityには触れられなかった。Global Population Ageingの話で,最近起こった国ほど60歳以上人口割合が10%から20%に倍増するのにかかった時間が短いことに触れて,Double Burdenとか。抗生物質はコストが安いが慢性疾患治療薬は高い話とか。次に神戸大とWHO神戸センターなどが共同で推進している認知症プロジェクトの話か。"Community for All Ages"。次に災害対策,さらに都市化と健康格差について,という神戸センターのミッションの紹介。2012年のUN Habitatの報告ではバングラデシュの人口の60%はスラム居住者とされている。スラム対策は必要。地球規模の気候変動の影響もあって気象災害も年々増えている。そこで災害対策が必要,といってWCDRRの話。最後のトピックがCOVID-19。パンデミックインフルエンザ2009,MERS,IHR2005など,これも公衆衛生学特講I, IIで喋っている話なので,その参加者は知っているはず。
- 2限目はMahidol大学のTawee先生がOne Healthの視点でクリプトスポリジウムについて語られるので聴きたいところだが,国際連携本部会議に出席しなくてはいけないのでPCを2台使って横目でプレゼンは拝見しようと思うが,ちゃんと参加はできないのが残念。
- 教会でマスク無しで賛美歌を歌うことがクラスター感染のハイリスクであることは周知の事実なのに(例えば,Miller SL et al. "Transmission of SARS-CoV-2 by inhalation of respiratory aerosol in the Skagit Valley Chorale superspreading event", Indoor Air, 26 Sep 2020とか,Kateralis AL et al. "Epidemiologic Evidence for Airborne Transmission of SARS-CoV-2 during Church Singing, Australia, 2020", Emerging Infectious Diseases, June 2021とか),全世界で繰り返し起こっている。今日様々なメディアが報道しているが,別府市のフルゴスペル大分教会クラスターもその1つ。
- WHOがB.1.621.1を含むB.1.621系統(Pango Lineageの分類で)をMu(=μ)株としてVOIに含めた件については,8月31日付けのCOVID-19 Weekly Epidemiological Updateからリンクされているpdfに書かれているが,まだ詳細はわからず今後の研究が必要であるものの,免疫逃避能をもつ潜在的可能性があり,回復期患者やワクチン接種後の中和活性能の低下が示されていて,コロンビアで2021年1月に初めて見つかり,南米とヨーロッパで大規模なアウトブレイクがいくつか報告されていて,配列を決定された株に占める割合は世界中で低下中で0.1%未満だが,コロンビアでは39%,エクアドルは13%と増加を続けているとのこと。
- 3限は千葉大学のウイルス学者である井戸先生によるアフリカでの活動を中心としたお話。ガーナとコンゴでのデング熱とチクングニア熱の研究をしていた間に西アフリカでエボラウイルス感染症のアウトブレイクが起こったのがショッキングだったとのこと。チクングニア,デング,エボラといったウイルス感染症について,井戸先生がどういうカウンターパートと協力しながらアフリカでの研究を展開してきたか,それによって何が明らかになってきたのか,が経時的に語られて興味深い。続いてSARS-CoV-2のウイルス学的な話。多くのRNAウイルスが約1万塩基のゲノムなのに対して,SARS-CoV-2は約3万(29,903塩基)と大きいという話から始まった。感染者数等のダッシュボードとしてはJohns Hopkins Univ.のものがお薦めとのこと。ぼくはWHOのダッシュボードの方が見やすいと思うし,RのCOVID-19パッケージでデータをダウンロードして自分でグラフ化して見ることが多いが。千葉大にはコロナワクチンセンターという組織が一時的に作られた。スタッフや学生にワクチン接種するだけでなく,研究協力を求めて抗体価を測っている。抗体価に性差はなかった。いまは変異株へのワクチン有効性を評価するため,変異株への中和試験をしているとのこと。千葉大にはBSL3のラボがあるので,ウイルス増殖に係わる実験をするときはそこを使っているそうで,BSL3のラボがない名谷キャンパスのウイルス学研究室の先生方には羨ましい話だろう。デルタ株感染時にCPE (cytopathic effect) が多数見える電顕像など迫力があった。鼻腔スワブサンプルを掛けただけで猛烈に増えるそうだ。
- Wang L et al. "Ultrapotent antibodies against diverse and highly transmissible SARS-CoV-2 variants"(Science,2021年8月13日; オンライン出版は7月1日)は,7月1日にダウンロードしていたのだが読んでいなかった。変異株の性質について理解するためには読んでおかないといけないかも。
- 2日前に,「デジタル庁という名前のもつ曖昧さは功罪両面があると思うが,大臣を政治家がやっている時点であまり期待できない。企画力からシステム実装力まである本物の天才(登大遊さんとか)をデジタル監ではなく民間人閣僚として登用して欲しいが,現政権では考えもしないだろうなあ」とtweetした。今日はデジタル監に指名された方の個人サイトにおける画像不正使用問題が指摘されていて,想定とは別の形で残念な展開になっているが,ぼくが2日前に例として登さんを出したのは,省庁間の壁を越えてデータ形式の共通化等で処理の効率化と迅速化を図ることがデジタル庁に期待される役割だから,未踏でSoftEtherを開発した天才で去年もシン・テレワークシステムを開発・実装したことで,壁を越えることの第一人者であることが証明済みだから。ただし,政局みたいなくだらないことを気にする政治家からの横やりが入ると何もできないから,そういう邪魔に勝てるトップに据えるのも肝要(たぶん尾身先生も,権限がない専門家会議やアドヴァイザリーボードや分科会の長では無く,西村氏か加藤氏・田村氏の代わりに大臣という地位にいたら,リスク管理能力を存分に発揮することができていたと思う。管理の実務に当たるなら権限をもつことが必須。逆に言えば,権限がない時点で,管理のことは一切気にせずに,科学的なリスク評価を完全に公開性を保って随時発表すべきだった。権限がないのにリスク管理に配慮したことが尾身先生の最大の失敗,とは以前も書いた)。
- 院生の研究計画の関連で,ソロモン諸島の学校で,どのようなCOVID-19感染対策が行われているか調べてみたところ,UNICEFとWHOと赤十字が共同で去年3月に出したソロモン諸島の学校宛のガイダンスがあって,石鹸ときれいな水を使った定期的な手洗いとか,ソーシャルディスタンスを保つことなどが書かれているが,実際にどの程度守られているのかはわからない。去年の8月にはやはりUNICEFからソロモン諸島への緊急時の教育を保ちリスク緩和するための追加支援が入っていた。2021年にはUNICEFがSafe Schools Trainingという教員研修を24回実施予定とのことだが,先月発表された,NDIとUSAIDのCOVID-19パンデミックからの復興に関する世論調査報告によると,DVの悪化,失業,生活費の上昇などが大きな問題になっているようで,それらに比べれば学校の問題はあまり上がってきていない。
- さっきマスク無しで教会で賛美歌を歌うことがクラスター感染のリスクと書いたが,キリバスの子どもが,学校で歌を通してCOVID-19予防方法を学んでいるという報告を,「歌の力」と題してUNICEFが出している。日本でも手洗い動画は流行ったが(ピコ太郎とか嵐とか)。
- 今日のドラゴンズとベイスターズの試合は1-0で勝ち。大野投手が7回無失点で,又吉投手,ライデル・マルティネス投手と盤石な勝ちパターン継投で,福留選手のタイムリーでとった1点を守り切った。
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