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【第951回】 保健学研究科修論発表会など(2022年1月26日)
- 6:47起床。82.75 kg、97%、36.6℃。
- キムチ鍋の残りを温め直して玄米ご飯と合わせて朝食を済ませ、名谷キャンパスに出勤。朝から保健学研究科の修論発表会に参加するため。
- 修論発表会には、とりあえず研究室からオンライン参加している。で、院生諸氏の発表を聞きながら、提出ファイルの仕上げ作業を続けている。キャンパスアジアの基調報告なので、韓国、中国、タイ、シンガポール、インドネシアのデータを入れねばならないが、公衆衛生対応としては、ミクロネシア連邦、ブータン、台湾、ニュージーランドに(先日のソロモン諸島のロックダウンのやり方にも)触れるべきだし、他の災害との相互作用を考える上で、トンガにも触れねばならない。比較のために欧米とブラジル、インドも示すべきだろう。しかしそうやって増やしていると、規定時間内で講演が終わるのかという問題があるなあ。かといって感染症疫学の専門家相手でもないので、基礎的な概念やデータもある程度は説明しないと公衆衛生対応の説明がピンと来ないだろうし。
- ワクチンについては、各国の認可状況などはWHO vaccine tracker、接種状況はOurworld in dataのvaccinationsページがわかりやすいか。後者でブースター接種済み人口割合(%、MetricをVaccine booster dosesにする)のグラフを表示させ、CountryでSouth Koreaにもチェックを入れて、Downloadでpngをダウンロードすると下図が表示される。日本は2回接種済み割合は高いが、ブースター接種は始まったのが遅い。
- Twitterの集合知が素晴らしいなあと思うのは、こういうスレッドを見たとき。
- 神戸大学のブースター接種のアナウンス。会場が鶴甲第一キャンパスの体育館で、接種期間が3月14日~25日ということなので、もしかすると神戸市の方が早いかもしれない。神戸市からもまだ接種券は届いていないが。
- 中央日報からYahoo Newsに転載されていたオミクロン株はオリジナルのSARS-CoV-2や他の変異株よりも人の皮膚表面やプラスティック表面で長生きするという記事だが、当該論文(bioRxivというプレプリントサーバ掲載)を紹介する英語メディア、例えばTWC Indiaの記事にはリンクがあるが、Yahooに転載されている記事には論文へのリンクがない。元論文を見たら、使われたオミクロン株はTY38-873だったので、BA.1と同じくT547K変異があり、BA.2では違う結果になるかも。
- 修論発表会後に国際協力研究科で自分が指導している院生の修論相談に乗っていたら、国際保健医療学会の奨励賞受賞講演の1人目は終わってしまっていた。2人目の方の発表に途中から参加したところ、死因情報が少なく死亡通知書の信頼性が低いザンビアでSmartVAというverbal autopsy(邦訳は「口頭剖検」というらしい)のソフトを用いた解析結果の話で大変面白かった(参考:VAにはIHMEのSmartVAとWHOのOpenVAが2大ソフトらしい、SmartVAの説明、VAのoverview、IHMEのVAのトップページ、WHOのVAのトップページ)。死亡通知書ではTBやマラリアが多かったがSmartVAではHIV/AIDSがトップだったという違いの理由として、SmartVAが原死因まで遡るためと、熱が出ると中身を区別せずマラリアと誤報することが多いためという説明。受賞した研究の後で、SmartVAと剖検との比較を50例でしたところ、22%しか一致していなかった(大分類レベルでは50%強一致)けれども、現在進行中の300例に増やした結果を今後分析する予定。質疑では黒魔術を信じている人たちはそもそもVAに協力しないのではといった話が出て、その辺り難しいという演者の回答であった。
- もう20:00を過ぎているので帰ろう。これで帰宅後に晩飯を作って食べると太るのだが仕方がない。
- NHK首都圏のtweetに書かれているのが事実だとしたら、横浜市長は公衆衛生の素人と断定して良い。WHO加盟国である日本は、WHO全加盟国が受諾しているIHR2005には従わなくてはいけないのだし、IHR2005の枠組みの中で2020年1月23日にCOVID-19をPHEICであると宣言したステートメントに、積極的サーベイランスを行い全データをWHOと共有する("all countries should be prepared for containment, including active surveillance, early detection, isolation and case management, contact tracing and prevention of onward spread of 2019-nCoV infection, and to share full data with WHO. Countries are required to share information with WHO according to the IHR.")と明記され、2022年1月19日のステートメントでも、サーベイランスは強化するように書かれているのに、全数届出を止められるわけがないではないか。しかし1月19日のステートメント、よく読んでみると、結構凄いことが"Temporary Recommendation"として書かれているなあ(項目だけ下に引用しておく。雑な粗訳なので、原文を読むことをお薦めする)。IHR2005という枠組みを機能させてPHEICへの対処を継続できるのかどうかギリギリのところ。オミクロン株はそれくらい性質が悪い。
- 根拠を知らせた上での公衆衛生対策と社会政策、治療、診断、ワクチンは継続し、経験をWHOと共有する(リスクベースアプローチで、社会機能維持のために、検査と組み合わせて、国ごとに隔離・検疫期間を変える必要があるかもしれない[States Parties may need to modify isolation and quarantine periods, with the introduction of testing, to balance the risks with the continuation of key functions, using a risk-based approach]、とも書かれているところにギリギリな感じが現れている。オミクロン株の発症間隔や世代時間が短いことも考えてのことだろうが)
- マスギャザリングについては、WHOのガイドラインに沿ったリスク評価、緩和策、リスコミをしてリスクベースのアプローチをする
- 2022年7月初めまでに各国最低でも全人口の70%がワクチン接種を済ませるとしたWHOの要請を達成し、COVID-19のワクチン接種をルーティンの接種に組み込む。ハイリスクな人から優先接種する
- サーベイランスを強化し、結果をWHOに報告し続け、変異株の迅速な同定と追跡と評価を可能にする("Enhance surveillance of SARS-CoV-2 and continue to report to WHO to enable rapid identification, tracking, and evaluation of variants and continued monitoring of the pandemic’s evolution and its control.")―疾病負荷のデータ収集と共有のシステム強化を含む
- 感染者急増時の対処能力が十分であることを確保する
- 経済的、社会的ストレスを与え続けているのに、付加的な効果が無いので、国際交通制限を解除あるいは緩和する(中澤注:ミクロネシア連邦のように鎖国に近い政策によって患者発生を防いでいる国には、この項は適用されるべきではないと思うが)
- 海外旅行を許可する唯一の条件としてのワクチン接種証明を要求しない
- WHOが認証したすべてのワクチンを異種ワクチン推奨スケジュールに従って行う
- コミュニティの関与を促しインフォデミックによって起こったコミュニケーションギャップや難点に対処する
- WHOが推奨する治療法を随時取り込みモニタリングする
- 人獣感染と潜在的な病原巣としての動物への疫学研究を実施する
- 推移グラフも示しておく。
(list)
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