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【第1839回】 保健学同窓会のため東京日帰り往復(2018年5月19日)
- 6:10に起床というか,研究室の椅子を最大限リクライニングして仮眠していた状態から起き上がった。13:00からの評議員会に出席するためには,8:30には名谷駅に着く必要があるが,昨夜届いたメールへの返事などを打っていると飛ぶように時間が過ぎていく。
- 8:15に研究室を出て,8:36の谷上行きには乗れた。往路は新神戸で新幹線に乗り換え,新神戸駅の売店で朝食を買って車内で食べる予定。復路新幹線は新大阪までで,そこから新快速で神戸に出て帰ろうと思う。
- 相変わらず移動中BGMは川嶋志乃舞『月曜日のマドンナ』なのだが,「キツネ倶楽部」が惜しいのは,歌詞で「諸行無常」が繰り返し出てくるところだな。「諸行無常」というと,ポップスではどうしても椎名林檎と向井秀徳の「神様、仏様」を思い出してしまうので,同じ無常観を出したいならば「ゆく川の流れは絶えずしてしかも元の水に非ず。よどみに浮かぶうたかたは……」と『方丈記』を引いてみるとか,「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」と『おくのほそ道』を引いてみるとか,あるいはもっと遡って,諸行無常は元々「諸行無常,是生滅法,生滅滅己,寂滅為楽」という『涅槃経』から来ていて(これを「色は匂えど散りぬるを……」と大和言葉に訳したのが「いろはにほへとちりぬるを……」の「いろは歌」),平家物語の「祇園精舎の鐘の声,諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色,盛者必衰の理をあらわす」という世界観につながっていくことを踏まえれば,「諸行無常」だけじゃなくて,「盛者必衰」とか「是生滅法」とかを歌詞に入れたら面白かったのに。
- 新幹線が品川駅に近づいた。天気が良いので,東京駅からは中央線快速で御茶ノ水に出て歩くかな。
- 評議員会が始まる20分ほど前に会場に着いたら,受付以外の人がいなかった。開会を待つ間に,西牟田靖『本で床は抜けるのか』中公文庫,ISBN 978-4-12-206560-4(Amazon | honto | e-hon)を読了。ぼくも本に囲まれた生活をしているので身につまされた。とくに,最後のエピソードが哀しくて泣けてきた。自分がいかに恵まれているかわかったが,同時に,退職するときの本の処遇を今から真剣に考えようと思った。角幡唯介さんによる解説には共感した。
- 評議員会は簡単に終わったが,総会は若干予定より長引いた。しかし会長が欠席だったせいか,互いに議論するというよりも,役員に対する要望をとりあえず受けつけて,後で理事会で全部審議してご返事します,というスタンスだったので,議論が紛糾するということはなく,ある意味平和。効率悪いが仕方がない。
- 講演は2題とも面白かった。1題目の梅崎教授は,パプアニューギニアでも海南島でもなく,最近国内何ヶ所かでやっている,環境と買い物行動と栄養素摂取量の関連の話と,困ったときにどういうことを誰にだったら助けて貰いたいかという質問紙調査の話だった。前者はFFQベースで栄養素摂取量がどれくらい正しく推定できているのかという点が最大の弱点で,そこは梅崎さん自身もわかった上での発表だったと思うが,宅配の影響を調整するのに,2値ではなくて,もう少し細かくやった方が良いと思ったので,懇親会で伝えておいた。たぶん生活クラブとか生協のように定期的に配送される宅配利用と,コンビニや小売店に電話やネットで注文して配送して貰うオンデマンドの宅配とでは,頻度も内容も違うので,食生活への影響も大きく違うのではないかなあ。地域人口予測は移動なしでやっても実態とは合わないに決まっているので,あの部分は凄くラフな計算をしましたというだけの話だな。まあ,それでも意味はあると思うからいいのだが,現実とはほぼ確実に合わない。たぶんあるところまで人口が減るとインフラが維持できなくなって加速度的に崩壊するか,行政のテコ入れか民間の開発が入ることでドラスティックな移入があって再生するか,どちらかではないかなあ。なお,この研究内容は,年末に日本健康学会誌の特集号として発表されるとのこと。日本健康学会誌は全文公開されるので,一般の方でも読めるようになるはず。
- 一つ付記しておくと,講演中に梅崎さんは,昔はFeachemが"Human Ecologist as a Superman"と言ったように,多くの関連分野に通暁していなければならなかったが,現在では学問の細分化と専門化によって難しくなったという主旨の発言をしたが,それは違うと思う。Feachemの頃から多くの関連分野に通暁することは難しかったからこそ,Feachemは"Superman"と言ったのだ。だから,supermanであることを諦めてはいけないと思う。その意味で,人類生態学は島津康男さんが『国土学への道』で「一人学際」と呼んだ国土学とかなり近く,同書中で島津さんが指摘していたと記憶しているが,各分野の専門家の間で専門家と認められる合格点が100点だとして,すべてに80点ではダメで,1つの分野に120点の人に負けてしまう(就職などでも採用されない)から,複数分野において最低でも100点のレベルに達しなくてはいけない。学問は日進月歩だから,複数の分野で100点を維持するのは大変難しくなったが,人類生態学には(や本当は公衆衛生学でも)必要なことだと思うし,少なくともそこを目指すべきではないか。
- 2題目は例によって前年度の卒業研究の中で奨励賞をとった研究を本人が発表するものであった。今年は生体腎移植におけるPKE(Paired Kidney Exchange)と呼ばれる,近親者間での移植が免疫不適合の場合に別のドナー=レシピエントと組み合わせることでお互いに免疫抑制剤を使わなくても拒絶反応が起こらない移植を可能にするシステムについて,世界の状況と倫理的に起こりうる問題点を整理したという研究であった。赤林先生門下ということで,スマートなカテゴライズと系統的整理がなされていたので,たぶん群大にいた服部先生だったらケースの個人的背景を考えたら当てはまらない例が多々出てくるであろうことを指摘して怒るかもなあと思いながらも,たぶんこういう規範的な整理をしないとルール作りへの提言みたいなことはできないと思うので,これはこれで価値があると思った。以前総長賞を受賞した野寄君のほどではなかったが,システマティックレビューから得られた知見をまとめて,これまで日本では言われていなかった問題点の整理の仕方をした点にはオリジナリティがあり,よく調べてあって興味深かった。質疑のところで,たぶん研究内容からは若干外れた質問として,諸外国におけるPKEの現状の違いは,医療システムの違いや宗教の違いと関連があるのか尋ねてしまったが,そこにも的確に答えてくれた。奨励賞をとった卒業研究の報告は分野にかかわらず毎回とても面白いので,東京近辺に住んでいる卒業生は,聴きに来て損はないと思う。
- 懇親会では数年ぶりに歌いにきたという保健社会学教室出身の先輩がギター弾き語りで盛り上げてくださったが,たしか2年前に野寄君が発表したときも歌っていらしたよなあ,と思って調べたら,やっぱりそうだった。ただで散々飲み食いしてから会場(総会や講演がN101,懇親会がS102という懐かしの教室であった。これは毎回変わらない)を後にし,御茶ノ水まで歩いて中央線で東京へ。18:33発ひかり号新大阪行きに乗っている。
- 今日のドラゴンズはビシエド選手が2打点,モヤ選手が1打点を挙げ,ガルシア投手が1失点(もう1点は最終回に田島投手が失った)に抑えて勝ったようだ。これで1勝1敗,しかもスコアも共に3−2の1点差と,ほぼ互角なので,明日の松坂投手登板が楽しみだ。
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