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【第347回】 学位記授与式など(2020年3月25日)
- 7:10に目が覚めた。餅を電子レンジ加熱し,昨日の帰りに買ってきた飛騨牛のにんにく漬けみたいなものを掛けて食べた。
- オリンピック・パラリンピックを来夏へ延期という話だが,日本も含めて各国何度かのロックダウンを伴うパンデミックになった場合,終息まで1年半はかかるだろうから無理だし,もっと小規模で抑え込めた場合は感受性の人が多く残っているはずだから,世界規模のマスギャザリングイベントをやったら再流行すると考えられるのでやらない方が良いし,等々考えると,最短でも2年後の秋だろう(熱中症のリスクを考えたら日本の夏にオリンピックをするのは元々反対だし,東京みたいな環境が悪いところに招致するのが元々間違っているというのがぼくの持論だが,それとは関係なく普通に考えても)。それでまた2024年にパリでやるのも無理があるので,もはやtokyo2020は中止した方が良いと思う。
- 岸田直樹先生がtweetで薦めていたこの動画,たしかにわかりやすい。重症化メカニズムで免疫系が非感染細胞まで攻撃するとされていたが,そこは確立しているのか少し気になった。あと,social distancingの例として,「ハグしない」,「握手しない」という行動が示されていたが,日本では元々あまりされない行動なので(学生の頃読んだエドワード・ホールの『隠れた次元』を思い出す),もしかすると日本でのRが小さかったことと関連あるかも。実は3つの密を避けることもsocial distancingの1つなのだが(諸外国はまだ3つの密という形ではフォーカスしていないが),もしかすると,それって世の中に知られていないのか?
- 会計に印刷用紙などが届いているのを取りに行かねば。
- クラスター対策という戦略に対して社会学系? の方々が反発しているのは何故なのだろう。一般の人々がどの程度のことなら持続可能か知りたかったらまっとうな社会調査をしたら良いなどということは,リスコミのプロが入っている専門家会議ならば百も承知の上で,時間がないからネットメディアで問いかける形でのアクションをしたのだろう。それをわかった上でなお反発するのだとしたら,何故なのだろう。政府にいろいろ提言しても,それを受け止めた正しいアクションを取らず,金も出さず,スタッフ強化も図らず(日本の数倍の規模の専門家集団からの提言に全面的に依拠したということを明示しながら政策を打ち出す英国政府とは対照的),政権の支持率を上げることだけ考えた受けの良い政策ばかり政府がしてしまうのを,専門家会議の責任だと言って攻撃するのはフェアじゃないと思う。いまの専門家会議とクラスター対策班が止めてしまったら,状況がさらに悪化するのは目に見えているので,政府が提言を受け止めてくれないからと言って,じゃあ止めますというのは,まっとうな責任感があるプロならばできないだろう。自分も含めて外野がやるべきことは,専門家会議への攻撃ではなくて,首相近辺に対して,勝手なことをせず,専門家会議に余計な圧力を掛けず(たぶんオリンピックについては議論するなと言われているのだと思う。憶測だが),もっと専門家会議の提言を尊重するように言うことではないのか。
- シンガポールのように完全にリンクを追い続けて隔離と対処療法で救命という戦略を徹底することは,COVID-19が無症状や軽症でも感染力をもつという特性を考えたら,他の国では現実的でないと思う。国土が広く人口規模が大きいほど人の行動はコントロールしにくいし,人の記憶は完全ではないし,法律その他の行政的施策に従わない人は少なくない。そう考えると,今後のCOVID-19の推移には,大雑把に言って,3つのシナリオがありうると思う。1つ目はとくに対処せず放っておくこと。おそらく低所得国の中には,水道の供給もなく,CTも人工呼吸器もECMOもなく,ほとんど対処できない国もある。西アフリカでエボラウイルス感染症がアウトブレイクしたときに対処が難しい理由と同様に,文化的理由でsocial distancingすら困難な国もある。そういう国や地域では,人口の40-80%が感染し(専門家会議やインペリグループ第9報が80%を採用しているのは,単純なモデルで感受性のまま残る割合が20%という推定だと思われるが,2月15日の時点で,ハーバードSPHのLipsitch教授は,人のmixtureがそう単純ではないので40-70%と推定している),そのうち0.3%が亡くなるので,控えめにみても,1000人に1人が今年COVID-19で亡くなることになる。重症者への対処療法が十分にできないので,悪くするとその10倍くらい亡くなるかもしれない。ある程度人口規模が大きければ,流行曲線がゼロ近くに収束しても完全にゼロにはならず,エンデミックな病となるだろう。十分に医療的対処できても,日本の人口で考えたら約12万人が亡くなることになるので,日本を含む高所得国ではこの戦略は取れない。2つ目は医療的対処能力の上限を超えるような爆発的感染者急増である「オーバーシュート」が起こりそうになったら都市機能を停止するロックダウンを1~3ヶ月発動し,新規感染者がある程度減ったら都市機能を再開する,ということを,ワクチンか治療薬が開発されるまで数回繰り返すこと。1つ目の戦略に比べると,未感染のまま生き残る人が多くなるため,ワクチンか治療薬が開発されるまで1年半から2年は続けなくてはいけない。武漢でロックダウンの有効性が示されたので,フランスや米国のいくつかの州など,現状この戦略をとっている国はいくつかある。しかし高所得国の都市部は,食糧生産に携わっていない人が多いので,地方から食糧が運び込まれないと飢えてしまう。ロックダウン中の所得補償もされないと,やはり飢えてしまう。ライフラインの維持に関わる職種の人は活動停止できないし(その人たちが職場に移動するための交通手段はどうするのかも考えなくてはいけない),その子供や高齢の親などの世話を誰がするのかということも問題になる。そうした形でかなりの社会的負荷を強いるロックダウンを,数回繰り返すことができるのかというと,たぶん無理だと思う。しかも,止めた途端に第1のシナリオと同じく,十分な割合の人が免疫を獲得するまでの蔓延が起こることになるので,医療的対処を必要とする人のピークは,第1のシナリオより高くなる可能性もある(インペリグループ第9報の1回抑え込み戦略のシミュレーション結果が示している)。仮に3週間なら耐えられても,3ヶ月耐えられるだろうか。そこまで考える必要がある(もっと極端な形として,ほぼ完全に鎖国してしまい,5ヶ月程度のロックダウンにより国内のCOVID-19を完全に終息させ,その後も一人でも感染者がいる可能性がある国との往来は完全に絶つということも,思考実験としては可能だが,実際問題として無理だろう)。このどちらも受け入れがたいと考え,手探りながらも第3の戦略としてのクラスター対策が何とか奏功しているように見えるのが,日本で専門家会議とクラスター対策班が進めてきた現状である。クラスター対策に加えて,対人距離が元々遠く,蛇口を捻れば安価で清潔な水が使え,子供でも食事の前には手を洗いましょうという衛生教育ができていた日本ではR0が低めだったこともあって,今のところ持ちこたえることができている。これもワクチンか治療薬が開発されるまで,1年半から2年は続けなくてはいけない。止めたら蔓延して第1のシナリオと同じになってしまう。今後感染した帰国者が増えると,クラスター対策だけでは対処しきれなくなるので,どこまで持続可能な対処を強化できるか皆に考えて欲しい,というのが,先日の西浦さんの訴えかけであった。ぼくは第3の戦略でできるだけ行ってみて(クラスター対策だけではR<1にするのに不十分ならば,さらなる対人接触を減らす戦略を追加することまで含めてクラスター対策班が視野に入れていることが,西浦さんの訴えかけでわかった),それでも「オーバーシュート」が起こってしまったら,少なくとも一時的には第2の戦略に切り替えるしかないと思っているが,これら3つの戦略のどれを取るのか自体,広く社会に問わねばならない,という立場もありうるのか?
- C棟引っ越し作業がされているので,印刷用紙を会計係から運んでくることができなかった。これから六甲に移動する。
- 修士課程の学位記授与式に出席し,自分が指導した院生2人と記念写真を撮った後,博士課程に進学する院生が投稿する論文のブラッシュアップ作業をしていたら16:00になった。さて再び名谷に戻るか,このまま六甲で仕事をして直帰するか。
- 18:30頃まで仕事をして直帰。阪急六甲駅のスーパーで食材を買い,晩飯は鰯の開きと青梗菜をごま油で炒め,電子レンジ加熱したレトルトご飯に豆腐を載せ,野沢菜漬けを載せて済ませた。
- このtweetから始まるマンガ解説は素晴らしい。専門家会議やクラスター対策班が何をやってきたのかが一目でわかる。
- NHKの兵庫ニュースで岩田先生がオリンピックは延期が唯一の正しい選択肢とコメントしているが,朝書いたように,1年延期してもできる保証はないので,中止の方が正しい選択肢だと思う。もっとも,コメントの中ではこの夏は無理という話しかしていなかったので,中止以外でという制約付きの質問への答えを切り取られたのかもしれないが。
- 1年生は4月20日講義開始になったか。4月20日になっても状況が改善している保証はないから,大学を安全な場にするような対処をした上で予定通り4月6日開講すべきと主張したのだが,全学には届かなかったか。ロックダウンしているのでない限り,自宅生は親から感染する可能性があるし,通学しない分,公共交通機関内で感染するリスクは多少下がるかもしれないが,少しでも症状がある人は休むことと,車内では喋らないことを徹底すれば,そのリスクは元々低いし,大学だけ閉じても感染リスクはほとんど変わらないはずだが。医学部保健学科2年生以上(ガイダンスは4/2)と保健学研究科(ガイダンスは4/3)は4月6日開講。
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