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【第353回】 ガイダンスとか(2020年4月2日)
- 7:00起床。ベーコンとオリーブの実をオリーブオイルで炒め,茹でたパスタを投入してトマトソースを絡め,粉チーズを掛けた朝食メニュー。
- 今日は学部ガイダンス。
- 昨夜の事務室のネットワーク不具合だが,原因がわかって脱力した。いや,まさかそんな,という。
- 検査専攻2年生は全員自宅にWiFi環境があるという返事だった。心強い。これで来週から環境・食品・産業衛生学をZoomで開始できる。BEEFへの登録は学生が自分でしなくてはいけないという難点があるのだが,そこを乗り越えてくれれば,スムーズに行くのではないか。
- アマゾン先住民で初のCOVID-19陽性確認例が出たというニュースだが,外部からやってきた医師からヘルスワーカーへの感染ということで,典型的な国際保健上のジレンマ。この医師が来なかったらCOVID-19感染はなかったはずだが,他の病気で死ぬ人は増えたかもしれない。先住民は寄生虫や細菌への曝露は多い環境で成長するので,そういうものへの抵抗力は強いのだが,ウイルスへの曝露は少ないので抵抗力は弱いし蔓延する。歴史を見れば,ウェスタンコンタクトで持ち込まれた麻疹やインフルエンザで全滅しかけた集団もある。症状が出る前にも強い感染力があるというのがこういう場面での対策を難しくしていると思うが,すべての人が自分が感染しているかもしれない可能性を考えて行動するしかないだろう。
- 昨日付けのEuropean Medicines Agencyの記事"COVID-19: chloroquine and hydroxychloroquine only to be used in clinical trials or emergency use programmes"。裏を返せば,クロロキンは,こんな文書が出されるほど現場で期待されているということかもしれない。米国FDAは使用許可を出したというニュースもあって,FDAのサイトには3月31日付けで効果を調べていくという記事しか見つからなかったが,期待はされているということだろう。
- 午後は看護3年と看護4年のガイダンスでCOVID-19対策の話をしてきた。質問は出なかった。
- インペリグループは主に自分たちのサイトで論文を発表してきたが,Verity R et al. "Estimates of the severity of coronavirus disease 2019: a model-based analysis"(2020年3月30日掲載)はLancet Infectious Diseasesに載った原著論文。Editor's pickとしてハイライトされている。2月8日までの中国湖北省,2月25日までの中国以外の37ヶ国と香港,マカオのウェブサイトとメディアで報告されている個人レベルの症例データを分析し,発症から死亡または退院までの時間を推定し,中国の集計されたデータから年齢別CFRとIFR(右側打ち切りと年齢依存の未確定性を調整),中国以外の集計されたデータからのCFRも推定している。さらに,中国のデータのサブセット3665例から年齢別重症化割合も推定している。湖北省の死亡例48人のうち発症日が不明な13人,発症が1月1日より前か死亡が1月21日より前に起こっていた8人,1月28日以降に死亡した3人を除いた24人の死亡データから,発症から死亡までの平均日数は17.8日と推定され,中国以外の発症日と退院日が報告されている回復例165人のデータから,発症から退院までの平均日数は24.7日と推定された(注:これは人数も少ないし,とくに目新しい結果でもないと思う)。1月1日から2月11日までに中国でPCRで確定診断がついた症例と臨床診断された症例70117人のデータをWHO-Chinaジョイントミッションレポートから抽出し,重症化は中国の定義を用い,武漢から海外に避難した人のデータ,ダイヤモンドクルーズ号のデータ,中国の年齢別人口データと組み合わせ,Rのdrjacobyパッケージを使ってベイジアンMCMCで分析した(データとコードはGitHubで入手できるとのこと)。結果,右側打ち切りと年齢別人口構造,未確定の影響を調整したCFRが1.38%(95%CI 1.23-1.53),IFRが0.657%(95%CI 0.389-1.33)と推定されている。西浦さんのEditorial第2弾で既にIFRが0.3-0.6%と推定されていたので,それより若干高めだが,これもそれほど目新しい結果というわけではない(もっとも,インペリグループはIFRが0.8-0.9%というような推定値も出していたので,それよりは若干低めの値になったとも言えるが)。
- ハーバードのLipsitch教授のグループからの論文Niehus R et al. "Using observational data to quantify bias of traveller-derived COVID-19 prevalence estimates in Wuhan, China."(2020年4月1日掲載)もLancet Infectious Diseasesに載った原著論文。世界195の国と地域のうち流行の中心となった中国本土を除く194から,WHOテクニカルレポート(2020年2月4日)から得た輸入症例データを使って(ただし,1月23日に湖北省がロックダウンしたために中国からの輸入症例が激減した2月4日までのデータ),シンガポールで2月4日までに検出された18症例がすべての地域の中で最高のサーベイランス能力を反映していると想定し,数理モデルを使って他の国や地域の検出確率を推定した。各国での検出数が各国への一日の航空旅行人数に回帰係数を掛けた値を期待値とするポアソン分布に従うと仮定して推定された,世界の検出確率の重み付き平均は,シンガポールの38%と推定され,それは現在報告されている輸入症例の2.8倍に相当した,としている。
- Elon Musk凄いな。すぐ患者に使う条件で人工呼吸器を無償提供というtweetをしている。先日はクロロキンに注目していたが。
- 昨日の専門家会議からの提言資料が,対策本部の資料に入っていた。
- ScienceにFerretti L et al. "Quantifying SARS-CoV-2 transmission suggests epidemic control with digital contact tracing."(2020年3月31日掲載)という原著論文が載っていた。Oxford大学でビッグデータを使った感染症ダイナミクスのグループリーダーをしているChristophe Fraser教授のチームの仕事。Fraser教授自身はHIVが専門らしいが,インペリからOxfordに移った人。この論文はroute of infection別の感染確率をモデル化している点が素晴らしい。ただし,無症状感染者からの感染,発症前の感染者からの感染,発症後の患者からの感染,環境に付着したウイルスからの接触感染の合計を感染力としてモデル化しているものの,マイクロ飛沫からのクラスター感染が含まれていない点が惜しい。この論文の結論は,ウイルスの拡散が速すぎるので人力で接触者追跡をして隔離していては封じ込めは不可能(R0は2と推定された)が,濃厚接触を記録し検査陽性者が検出されたらすぐに通知するスマホアプリを十分な人数が使ってくれたら,社会に害が大きいロックダウンをすることなく封じ込めが可能としている。倫理的要求についてのディスカッションもされている。テレビのニュースで流れていた,韓国で入国時にインストールしなくてはいけないアプリというのは,これと同じような機能を持っているのかもしれないなあ。
- OTOTOYでCOVID-19という曲を買ってみた。
- 外科系学会から新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言が出ていた。
- 20:00頃帰途に就き,帰宅後に教授有志によるZoomでのお試しセッションに参加した。これまでホスト側しかやったことがなく,多人数でのゲスト側で参加したのは初めてだったが,背景をバーチャル化する機能とか,自動的に発言者をハイライトする機能とか,Zoom凄いな。
- 晩飯はレトルトご飯に飛騨牛にんにく旨ダレを掛けて済ませた。メールの返事を何通も打っていたら日付が変わったので眠るか。
(list)
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