有限集団においてなるべく死亡数を減らし,未感染の人が多いまま流行を抑えるには,感染力が同じならNを小さくすれば良いことが,Diekmann and Heesterbeekの教科書(練習問題もたくさんついていて,自習にはお薦め)を読めばわかる。それから考えると,地域内で生産から消費までの生活を完結できるようなユニットを,なるべく小さな人口規模でたくさん確立することが良い対策になるはずだ(国内完全終息かワクチン/治療薬完成までは域外との交流を再開できないが)。逆に遠方への通勤が続くと,生活圏の人口規模が大きくなるので,Rが大きくなり,爆発的な感染拡大が起こり,医療的対処能力を超える影響も加わった莫大な死者が出てしまう。ただし,その代わり,流行が1年以内に終息し,その時点で未感染のまま生き残る人は少なくなる(ある程度の集団免疫がつく)。しかし,これをトレードオフと考えるのはやはり無理があり,いくら早く終息して集団免疫がついても,国内だけで10万人の死者がでるのは受け入れられないだろう。安価な流通に支えられた分業化・効率化とグローバリゼーションから方向転換して,社会のユニット化,ローカル化を進める方がCOVID-19対策には良い。そうなると観光業などは明らかに立ちゆかなくなるし,トビタテとか国際化とかも止めた方が良いという話になるし(本当に留学した方が良いようなトップクラスの学生のコラボは別として,一般学生には広げない),他にも悪影響ありそうで,いろいろ難しいが。