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【第385回】 メールの返事とか講義準備とか(2020年5月5日)
- 6:00起床。76.30kg,97%,36.0℃。
- エアロバイクのおかげか,少し体重が持ち直してきた。洗濯物が溜まってきたので,浴槽に湯を貯めて入浴して残り湯を使って洗濯機を回しながら朝食を作って食べる。
- R-develメーリングリストで,covid-19についてデータをダウンロードして分析できるようなサイトを教えて欲しいという投稿があり,これ(githubページ)とかこれ(CSV形式のデータそのもの)とか,これ(これもgithubページ)といった情報が返ってきている。(追記)1つ追加された。
- 最初から全国一斉休校は筋が悪いと書き続けているが,おそらく今後できる形としては,交通機関を使わず通学できる小中学校は対面での会話をしないとか対人間隔を空けるといった対策を取りつつ通学しての授業をし(もちろん感染者が出たら台湾のような基準で学校ごとに学級閉鎖や休校を判断するとして),多くの生徒が交通機関を使って通学し,学校教育法上の義務教育ではなく,授業の中身として知識の教授という側面が強まる高校以上は,実習を除いて基本オンラインとするのが持続的かもしれない。専門家会議は小中高は地域ごとの実情を踏まえつつゼロリスクではないが教育を受けられる便益を考えて再開,特別支援学校は一層慎重に判断(5月1日付け)と提言しているが,ぼくは小中学校と高校は分けて考えた方が良いと思う。なお,部活などの課外活動の再開は,部活の内容も水準も規模も千差万別だから,後述するライブハウスなどと同様に,当事者が専門家に相談しながらガイドラインを考えて政府に認めさせる戦略をとらないと話が進まないと思う。ずるずると再開延期を続けるだけでは子供たちが気の毒だが,かといって,ハイリスクな行動を見過ごすことも感染拡大防御上許されないので。
- 高校以上は基本オンラインとすると,もちろんそのためのインフラ整備は必要だ。ぼくは元々基幹インフラは効率よりも安定性が重要なので非営利の公営事業にすべきという意見だ(ブログでも何度か書いている)。警察と義務教育のような公権力の行使あるいは公的なレギュレーションが必要なものは当然として,電気,ガス,水道に加えて,鉄道と通信と医療も公営にした方が良いと思っている。日本は不幸にして逆向きに(米国からの圧力もあったと思うが),国鉄をJRにし,電電公社をNTTにし,郵政民営化し,最近では水道事業さえ民営化する道を作ってしまったが,水道民営化が世界各地で失敗したのはわかりきっていることで,基幹インフラの民営化は,どう考えても間違っている。公営であれば,その事業自体は利益を生まなくても良いが,営利事業になったら儲けなくてはいけないから,事業そのものにかけられるリソースが減る。電気とガスと水道を地方自治体が運営することにして支払いも一体化したら,むしろユーザにとって便利ではなかろうか(ただし,基幹を公共が支えることを義務付けるけれども,例えば現在の新電力系の営業のように,送電網を借りて売電するような民間参入は妨げないことにする)。医療の公営化は難しいのだが,日本には一次医療圏,つまりプライマリケアレベルの医療計画がないから,医療法を大きく改正して,キューバのファミリードクターや英国のGPのように,公務員あるいはそれに準じた形で,かかりつけ医を公務員として組織化し,一次医療圏の医療計画と病診連携を併せて法制化することは不可能ではないはずだ。医師会が反対しそうだが,それまでに掛けた設備投資などは何らかの形で補償することで納得して貰えれば,かなりいろいろな医療問題が解決する可能性がある。無線通信網としてNTTドコモとauとソフトバンクとYahooとUQくらいを国が買い取り,税金で運営して無償提供したら良い。問題は,そのための財源として,いくらまでなら掛けて良いかという国民の合意を得ることだろう。自分が金を出すのではなくても,いくら出せるかという支払い意思額(WTP)だから,CVMの手法で調査はできるはず。そういう意味で,CVMの出番なのだが誰もしないなあ。逆側では,いくら貰えたらあと1ヶ月外出規制続けますか? と聞いて,その回答に基づいてWTAを求めた上で給付額を決めれば,10万円より根拠あるのに。
- 血清学についてのMarc Lipsitch教授がワシントンポストに書いた意見(2020年5月4日付け,無料公開)。
- テレビを流していたら,日赤が#最前線にエールを何度でもというキャンペーンをしていることを知った。UNIVERSAL MUSIC提供の動画が公開されているが,誰でも自分で歌や演奏の動画を作って公開できるそうだ。リトグリも朝がまた来る(これも絶品だが)だけでなく,何度でものライブ映像を公開してくれないかなあ。
- ああ,ライブ行きたいなあ。ライブハウスは,マスク必須で密度を下げ強力な換気システムをつければ,何人規模まではOKとか(ただし客が遠征するのは不可で,アーティストが現地に来てくれるのを待つようにするとか),声を出さないクラシックならもう少し大規模でもOKとか,無観客有料配信ならOKとか,ある程度新規感染者数が減ってきたら3密条件を避けて営業できるようなガイドラインを,根拠に基づいて策定する必要がある。1月か2月から書いているが,これは専門家の助言が必要だとしても,業界自身が本気で考えなくてはいけない長期戦略と思う。検索してみたら,#STAYMUSICによる署名活動が始まっていたが,国にガイドライン策定を求めるというよりも,業界で作ったガイドラインを国に認めさせるというスタンスでいかないと進まないと思う。国も専門家会議もライブハウスについて素人だし,例えばクラスター感染を起こしにくい営業形態の上限が20人なのか50人なのか100人なのかは設備や演目や座席の配置や参加の仕方のレギュレーションによって千差万別なのだから,根拠を国や専門家会議が一律何人ですと示せるはずがない。損益分岐点を上回りアーティストにとっても持続可能なレベルとして何人は必要だから,というところから出発して,国にガイドラインを認めるよう突きつける方が良筋と思う。
- 昨日の首相の会見で提示された専門家会議の提言について,「新しい生活様式」という言葉に噛みついている人が散見されるが,リンク先の原文を読めばわかるように,あれ実践例だからな。専門家会議はこれまで何度も,どういう行動変容なら持続可能か一緒に考えて欲しいと言ってきたのに,具体性がないとかいう批判が多いから例示したのだと思う。「新しい生活様式」として例示されていることの中身は,韓国がいう「生活防疫」(2020年5月4日読売新聞記事参照)と同じようなこと。強い接触制限により新規感染者数を一定レベル以下に抑え込めても,集団免疫がついて終息したのではないから,昨年までの生活に戻ってしまうと感染の急拡大が始まるのは間違いないので,緩和策として持続可能な行動変容は1~2年続けなくてはいけないのは当然。スウェーデンやブラジルのように集団免疫戦略をとった国以外は皆同じ。
- Carole Kingの名曲You've got a friendのコラボが素晴らしい。平原綾香が出てきて楽しそうに歌ってて良いなあと思っていたら,終盤Carole King本人の歌唱まで。We are the World (2020)もロングアイランドから外に出られないミュージシャンのコラボによるWe are the World (Quarantine mix)も宮本亞門さんの企画によるSING FOR HOPEプロジェクトの上を向いて歩こうもBe Oneも素晴らしいし,音楽チャンプ Presents 愛は勝つでは久しぶりに丸山純奈さんの声を聴けて良かった。やはり音楽は素晴らしい。「愛は勝つ」はアップフロントグループや高嶋ちさ子「ザワつく音楽会2020」チームもテレワークでの動画を公開しているが,音楽チャンプチームの歌唱が一番癒やされる。音楽の力ということで外せないのは,INSPiの杉田さんが代表をされているhamo-laboで,公募で集まった人たちがリモートで練習を重ねて,集まった動画を編集して今日公開されたOh Happy Dayだな。視聴しているだけで元気が出る。中でも最後の方で超高音を響かせている前髪パッツンの少女の声が凄かった。あれはデビュー前のリトグリではYUKAがやっていた部分だな(リンクしないがYouTube上に動画がある)。
- 検査陽性率が低いことを行動制約解除の基準にするという発想はおかしいと思う。医師が臨床所見から確定診断が必要と考えて検査した場合(以前書いた検査A),陽性率はある程度高くて当然である。感染者と濃厚接触があった人も(以前書いた検査B),ある程度陽性率が高くなって当然である。検査陽性率が低い国の方が高い国よりCFRが低いと言われるが,感染している可能性が高い人だけでなく広く無症状や軽い症状の人まで検査したとき(以前書いた検査C)に検査陽性率が低くなるのだろうから,検査陽性者のうち無症状や軽症の人が占める割合が増え,CFRがIFRに近づいて,見かけ上CFRが低めに出るのも,また当然であろう。それは,死者を減らせたことを意味しない。検査陽性率の国際比較などする人はどういう仮定をおいているのだろうか。同一地域の経時的比較でも,かなりいろいろ仮定して多重代入法にでも使うのならわかるが,単独で意味を持つとは思えない。
- むしろ,これまでにわかったことから考えたら,Digital Contact Tracingを導入して,濃厚接触者のうち風邪様症状がある人は(もし施設に余裕があれば無症状でも)検査をする前でも施設隔離,濃厚接触の有無にかかわらず肺炎症状で確定診断が必要と医師が判定したら唾液を使ってRT-PCR検査,とすると,リソースの最適配分をしながら感染を終息させることができるはず。もちろん3月までやっていたくらいの個人防御を続けて飛沫感染と接触感染を低く保ちながら,三密を避けてクラスター感染が起こるのをある程度予防できることが前提だが。そのためにも,さっきも書いたように三密を防げるような業態のガイドラインは重要だし,病院や介護施設のようなハイリスクな場所では徹底的な感染防御が必要で,それができるようなリソースを投入しなくてはいけない。
- WHOの時系列記録のページ。
- Lancetに,中国での二重盲検でプラセボ対照のRemdesivirの多施設RCTの結果がWang Y et al. "Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial"(2020年4月29日掲載)として発表されていた。統計的に有意ではなかったが臨床的な改善は速く認められた。ただし有害副作用がプラセボ群よりも多く認められたので治験は途中で終了した,という論文。メディアは早期承認だとか各国に供給だとか騒いでいるが,単独投与では見込みなさそうだなあ。
- Dunn CG et al. "Feeding Low-Income Children during the Covid-19 Pandemic" N Engl J Med 2020; 382:e40, DOI: 10.1056/NEJMp2005638(2020年4月30日掲載)は,米国でも休校によって学校給食がなくなったことで貧困層の子供が栄養失調の危機にあるので,3月18日に発効した"Families First Coronavirus Response Act"という法律で使えるようになった1兆ドルの一部を使って,"Supplemental Nutrition Assistance Program (SNAP)"に既に入っている世帯には給付金を出しているが,パイロットプログラムの結果はあまり有効でなく,"National School Lunch Program"や"School Breakfast Program"で直接貧困層の子供に給食を提供していたときより子供の健康状態が悪化しているので,更なる栄養改善活動が必要と主張しているようだ。
- ScienceにWatanabe S et al. "Site-specific glycan analysis of the SARS-CoV-2 spike"(2020年5月4日掲載)という分子生物学論文が載っていた。筆頭著者は日本人のようだが所属はUKのサザンプトン大学だし共著者もUKの人たち。SARS-CoV-2がヒトの細胞に侵入し膜融合するときに働くスパイク(S)糖タンパク(ワクチン開発のターゲットになる)の遺伝子配列と構造を解析した論文のようだ。
- 5月1日の専門家会議資料には,インペリグループのReport 9(ぼくも発表翌日にわりと詳しく説明した論文)と,Scienceへの発表翌日に軽く触れた,Kissler et al.の概要が参考資料として載っていた。
- 木曜の講義準備が終わってから眠った。
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