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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『皮膚の医学:肌荒れからアトピー性皮膚炎まで』

書名出版社
皮膚の医学:肌荒れからアトピー性皮膚炎まで中公新書
著者出版年
田上八朗1999



Jun 16 (wed), 1999, 12:38

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

アトピー性皮膚炎が増えていると騒いだり,その環境悪化との関係とか仄めかす類の本は,世の中たくさん出ているのだが,皮膚の科学について基礎からまじめに書かれた入門書というのは案外少ない。他の生物学と同じく,皮膚科学も最近の進展著しいので,新しくなければならないと考えると,本書はほとんど唯一のものといってよい。やはり中公新書は常にチェックする必要があるなあ。

皮膚の構造と角層の意味から始まって,肌荒れの話,毛髪の話(恐怖から一夜にして髪が真っ白というのは円形脱毛症で黒髪だけが抜けるからという合理的説明がつくというのは面白い),水虫,イボ,と各論を経て,多くの皮膚疾患が実は免疫機能の障害と大きく関連しているという本論に至る(ここでも多彩な実例が挙げられていてわかりやすい)という構成になっている。皮膚科学の素人でも,すんなり読めるのではなかろうか。参考文献もあげられており,より深く皮膚科学を学びたい人のための入門書として好適と思う。

参考のため,目次を書いておく。
はじめに
第一章 防御器官としての皮膚
バリア膜 皮膚の構造 角層をつくる表皮 細胞増殖因子と受容体 表皮のターンオーバー ケラチノサイトの構造 落屑 皮膚のストリップショウ 基底膜 真皮 ガラスの皮膚
第二章 肌荒れと肌のおとろえ-美的器官としての皮膚
肌荒れ セレンディピティ 角層の水分 角層の水分結合物質 化粧品と皮膚 手荒れ 皮膚への水分補給 踵のヒビわれ シワとシミ けたはずれの皮膚科学者 皮膚の若返り薬 皮膚と肉体のアンバランス 皮膚の健康法
第三章 皮膚の炎症,免疫,色素沈着-外敵防御の仕組み
清潔と不潔 細菌感染症 皮膚の見張りは知覚神経 知覚神経にひそむヘルペス(疱疹)ウイルス 皮膚の免疫監視をするランゲルハンス細胞 ケラチノサイト由来の情報伝達物質 皮膚炎 からだのガソリン,補体 皮膚の色をつくるメラノサイト 紫外線と皮膚の色 シミ 紫外線障害の修理ができない色素性乾皮症
第四章 皮膚のアクセサリー-毛髪,爪,汗腺
皮膚付属器のいろいろ ハゲ 円形脱毛症 爪の異常 ニキビ フケ アセモ 体臭
第五章 治外法権の場への侵入者-水虫のカビへの免疫反応
皮膚に生えるカビ 水虫 動物の実験白癬 白癬の免疫と菌成分への接触アレルギー ヒトの白癬におけるトリコフィチン接触過敏反応 ヒトの実験白癬 皮膚カンジダ症
第六章 消えるイボと消えないイボ-皮膚で見る腫瘍免疫と発癌
腫瘍の自然消退現象 イボ イボの癌化 皮膚癌の原因 ホクロ アザ 皮膚のシミでも命取り
第七章 湿疹とじんましん-過剰な皮膚の免疫反応(一)
アレルギー反応の方向づけをするTリンパ球 ランゲルハンス細胞の働き 湿疹 アレルギー性接触皮膚炎 パッチテスト 湿疹と細胞性免疫 湿疹の治療 疥癬 蜂の一刺し じんましん アナフィラキシー・ショック
第八章 埃によるカブレ,アトピー性皮膚炎-過剰な皮膚の免疫反応(二)
アトピー性疾患の急増 アトピー性体質とIgE抗体 Th1細胞からTh2細胞へ 食品抗原と空中抗原 成人型アトピー性皮膚炎 ステロイド外用剤 外用ステロイドによる副作用 人目を避けた生活 皮膚病への民間治療 治療の科学的な検討法
第九章 自分自身に向けられた刃,自己免疫病と薬疹-過剰な皮膚の免疫反応(三)
膠原病 自己免疫性水疱症 円形脱毛症と白斑乾癬 薬疹 免疫抑制剤
おわりに
参考文献


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