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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『アフリカの蹄』

書名出版社
アフリカの蹄講談社文庫
著者出版年
帚木蓬生1997(単行書は1992年)



Sep 01 (wed), 1999, 09:44

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

アフリカの蹄とは,南アフリカ共和国のことである。マンデラ氏が大統領になってアパルトヘイトが崩壊し,現在では見かけ上は人種差別は薄まっているが,実は本質的には変わっていないとの指摘もある。本書では,マンデラ以前の南アフリカで,狂信的な白人優位主義のグループが計画したとんでもない野望(もし成功してしまうと大惨事となる)を食い止めるべく,日本人医師,作田が,黒人の仲間たちとともに戦う話である。作田は黒人の恋人がいることで当事者でもあり,日本人という立場からでなく,仲間の生命の自由を獲得するために戦うので,読んでいて嫌みでない。これが人道主義的介入だったりするとお節介めくが,そうではないとした設定が生きている。もっとも,そうまで深読みしなくても,体制側の狂信者集団にいつ捕まるかという緊張感の盛り上げかたもうまいので,ドキドキワクワクしながら,たんにサスペンス小説としても楽しめる。

●税別619円,ISBN 4-06-263587-9(Amazon | honto


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