最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
ハノイの純情、サイゴンの夢 | 講談社文庫 |
著者 | 出版年 |
神田憲行 | 1998 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
「サイアス」のマラリア取材で知り合いになった神田さんが,ぼくがここに書いた与那原恵さんの「街を泳ぐ、海を歩く カルカッタ・沖縄・イスタンブール」<http://minato.sip21c.org/bookreview/oldreviews/0914113359.html>の書評を読まれて,1998年に同じ講談社文庫茶表紙のアジア旅本シリーズを出していることを教えてくださったので,読んでみた。
本書は,1994年に第13回潮賞を受賞して「サイゴン日本語学校始末記」(潮出版社)として出版されたものに,書き下ろし,写真を加えて再編集したものである。1998年内に3刷を数えているのだが,この成立の経緯のためか,Part 1「グッバイ・サイゴン」における,サイゴン日本語学校を中心とした生活体験部分のまとまりが良すぎて(20代だった神田さんが何を考えて出版社勤務という定職を捨ててサイゴンの日本語学校の教師になり,ベトナムの人たちとどういうつきあいをしてきて,そのかかわりの中でベトナムを含むアジア,ひいては世界に向ける視点がどう変わったか,ということが若者の等身大の気持ちとして見事に表れている),1冊のルポとしては,他の部分を蛇足的に感じてしまう。しかし,例えば,実際にベトナムやカンボジアにでかけた人や,行ったことがなくてもアジア好きの人なら,Part 2「ベトナム・ウォッチング」やPart 3「ベトナムを旅する」に書かれたコラムに,したたかに生きるベトナム人への愛情豊かなまなざしと,傲慢な先進国人への批判を読みとって,ついニヤリとすることだろう。つまりは,本書は1粒で2度おいしい楽しみ方ができる本である。
p.253からの「バックパッカーくそくらえ!」の漫才のような語り口には笑ってしまうが,ちょっと本当? と思った。ぼくが出会ったバックパッカーには,そんなにひどい人はいなかったように思うのだが,それはぼくが行った場所がパプアニューギニアとソロモン諸島だからなのだろうか?