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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『東京独立共和国』

書名出版社
東京独立共和国文藝春秋
著者出版年
水木楊1999



Feb 15 (tue), 2000, 06:44

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

ストーリーとしては,遅々として進まない地方分権に業を煮やした東京都知事が,その魅力的な人格を武器として見方を増やしながら東京都を独立国とする宣言を行い,東京生まれでない人を外国人として排斥しながら「粋な」東京を取り戻そうとする一方,首都機能移転先の人工的な都市を本拠とする野暮な日本国政府がこれに反対して戦いを繰り広げ,巻き込まれた民間人宗田京一が魅力的な秘密工作員とともに活躍するという,まあ言ってみれば近未来架空戦記物である。自由都市連邦とか黒潮共同体とかいったアイディアにも面白いものがいくつもあるし,B級チャンバラSFとしてのサービス精神にもあふれているので,そこそこ楽しめる。設定段階では現実のデータも脚注としてかなり提供され,臨場感を盛り上げるのに役立っている。

ただ,日本国政府側の大久保,有村の鹿児島コンビを,あまりにも野暮で傲岸不遜な悪役に描いてしまったことによって,単純な勧善懲悪の構図になってしまい,物語から深みが失われたのが残念に思う。どちらにも理があるにもかかわらず,それぞれの立場によって戦わざるを得ない運命に翻弄される人々,という形で描いた方がよかったのではなかろうか?


Feb 15 (tue), 2000, 06:47

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

書き忘れたので追記。

●税別2000円,ISBN 4-16-318720-0(Amazon | honto


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