最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
クジラは食べていい! | 宝島社新書 |
著者 | 出版年 |
小松正之 | 2000年 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
この本が言っていることは実に単純で,IWCのイデオロギー的変質によって科学的主張が認められなくなった現状はおかしいから,CITESなどIWC以外の真の国際機関の力を借りて(IWCは反捕鯨国の誘いで加盟した非捕鯨国が多数入っているが,総計でも40ヶ国に過ぎない)科学的に正しい管理捕鯨は,再開して当然だということだ。ニュージーランドとオーストラリアが理由はどうあれ食うなという文化侵略をしてくるのを正当化させてはならないという点には同感である。
わざと扇情的に書いているふうもあるが,著者の主張は本質的に筋が通っていると思う(ぼくの知識に照らしても)。松田裕之さんの本(「共生とは何か」現代書館【参考:http://www.nikkei.co.jp/pub/science/page/kagakusho/12-kyousei.html】など)とかと併せて読めば,なお理解が深まると思う。その意味では参考文献リストは是非欲しいところだし,できる限り正確なデータとともに議論を進めるべきだった。グリーンピースが政治的圧力団体だなんてことは誰でも知ってるんだから,その辺を批判するのにあんなにページを費やさなくても,データを出せば十分ではないのか? と思う。気持ちはわかるけど。
なお,IWCにおけるソロモン諸島の態度については,恥ずかしながら本書を読むまで知らなかった。もちろん伝統的にイルカを食べているかの国は,現在でさえ捕鯨問題に対処しきれていないIWCが,管理する範囲を沿岸で生活する鯨類にまで広げようとするのに断固反対していて,日本と立場が同じなのだ。本書とは離れるが,そうであってみればガダルカナル=マライタ紛争(http://minato.sip21c.org/solomon2000.html)に対して日本は手をこまねいて見ていてはいけないのではないか? とくにオーストラリアとニュージーランドが調停仲介役になっている現状では尚更に。