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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『バトル・ロワイアル・インサイダー (B.R.I.)』

書名出版社
バトル・ロワイアル・インサイダー (B.R.I.)太田出版
著者出版年
高見広春,「バトル・ロワイアル」制作委員会(監修),ギンティ小林,深作健太,山根貞男ほか(執筆)2000年



Jan 18 (thu), 2001, 12:04

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

本書は,かの傑作不条理小説「バトル・ロワイアル」(http://minato.sip21c.org/bookreview/oldreviews/19991005211111.html
)が書かれるに至った裏話や,作品分析や,映画の内幕が詰まった分厚い本なのだが,恐るべきことに12月20日に第一刷が出たばかりなのに,1月6日に第三刷になっているから,無茶苦茶売れているようだ。読み通す人がどれだけいるかはわからないが,映画のスチール写真を眺めるだけでも買いたいと思う人はたくさんいるのだろう。

しかし,ぼくはこの本を読んで,映画を見る気は失せた。各俳優の細かい演技をビデオかDVDで何度も見たいとは思ったが,坂持金発をキタノに変えて,個人レベルの物語を背負わせてしまったのは失敗だと思う。坂持がどうしようもなく体制に組み込まれていることが,バトル・ロワイアルの世界の不条理性の象徴だったし,3年B組金八先生に代表される,わかったような振りをした丸め込みの欺瞞性への批判なのに,そこをなくしてしまっては物語として台無しになってしまう(最大限気持ちを酌んでみても,原作のテーマの半分以下しか表現されえない)。つまり,少年少女の個人としての物語を背負った人間としての成長と,個人レベルの事情を超えた社会体制からの圧力のコントラストが醸し出していた切れ味が,単なる人間ドラマに堕してしまったように思われるのだ。そもそも現代の閉塞感が個人としての大人の<<不在>>にこそあることを強く意識させる原作に対して,「国家」vs「個人」の構図を「大人」vs「子ども」に置き換えるのが無理だと思う。しかも,それを親子対決という構図に重ねていくという結末では,救いようもなく陳腐と言わざるを得ない。

大東亜共和国という設定に現代日本のリアルを感じられないのは,単に深作監督の想像力が足りないか(B.R.I.に書かれていることを信じるとそうだ),あるいは観客の想像力を見くびっているのだろう。原作者は,内心忸怩たる思いだったのではないだろうか? それとも映像的迫力の魅力に負けたのか? いずれにせよ映画を見る気がしなくなったのは確かだ。映像は見たいし音も聞きたいが,設定の矛盾がどうにも気持ち悪くていけない。

なお,この本も記録的に誤植だらけだ。最近の本は校正をしないのだろうか?

●税別1480円,ISBN 4-87233-552-X(Amazon | honto


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