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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『カプグラの悪夢』

書名出版社
カプグラの悪夢講談社文庫
著者出版年
逢坂剛2001年8月,単行書は1998年5月講談社刊



Aug 15 (wed), 2001, 20:26

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

現代調査研究所という名の何でも屋を生業とする(って言い方も変だが)中年男性,岡坂を主人公とする連作短編集で,心理サスペンスから歴史ミステリ,ユーモアミステリまで幅広いネタが,それなりに粒ぞろいで楽しめた。ただ,歴史ミステリの作品「暗い森の死」の中に出てくる英文のquite a littleは,「ほとんど~ない」という意味で,決して「少なからぬ」ではないと思う。だから,その次の文の意味も,「どうせできるだけたくさんの墓を見つけて我々のせいにするだろうから」となるはずだ。ぼくの解釈が正しいとしたら,この話,成り立たなくなってしまうと思うのだが。

●税別619円,ISBN 4-06-273230-0(Amazon | honto


Aug 17 (fri), 2001, 14:37

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

知人Nさんから指摘されてquite a littleをランダムハウスで引いてみたら,確かに


It took quite a little time.

He has quite a litte money.


とかで,(皮肉というか反語的なのだと思うが)会話表現として,「かなりたくさんの」という意味をもつことがわかった。ゲベルスの日記での表現が本当にその意味で書かれたものかどうかはともかく,この話にはまったく問題がないということがわかった。

そういうわけで,上の書評の最後の部分は,まったくぼくの無知からくるものなので,取り下げてお詫び申し上げる。


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