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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『風に舞う』

書名出版社
風に舞う集英社
著者出版年
花村萬月



Apr 06 (sat), 2002, 11:16

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作者のブルースを題材にした一連の小説の1つである。

 これらのシリーズの間では登場人物はほとんどダブらないが全体の「色」は統一されている。それは「せつなさ」「もどかしさ」ともいうべき感覚であり,小説そのものがブルースなのである。


 本書は,その「色」の世界で,主人公の若きギタリストと後に女流作家となる女子大生との不器用な恋愛物語としても楽しめるし,青く純真な青年がプロフェッショナルになっていく成長物語としても成立している。


 1つ気になったのは,2代目のベーシストが失踪する原因がヤクザとの暴力沙汰というところ。他にいろいろ考えられるだろうに,どうも作者は作品中にヤクザと暴力をださないと気がすまないらしい。まあ,お約束だと思えばよいのだろうが…。


 ともあれ感動をストレートに表現できない屈折した人々のジレンマを書かせたら随一である作者の面目躍如の作品といえるだろう。


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