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鐵人三國誌・アーカイヴ

Latest update on 2019年1月28日 (月) at 12:27:39.

目次

【第27回】 丸一日講義の翌日は会議とか修論指導とか(2019年1月24-25日)

今学期最終回の4コマ講義日

木曜は朝から晩まで六甲台キャンパスで今学期最終回の講義とか,ワークショップ2を聴いて質問したりコメントしたりとか,ミーティングで修論内容への質疑をしたりとか。疲れ果てたが食材が尽きているのでLIFEで買い物をしてから22:00頃帰宅し,適当に晩飯を作って食べてからほどなく眠ってしまった。

金曜も六甲で仕事

金曜は講義資料が重いのでいったん名谷キャンパスに出勤して荷物を置き,メール送受信後に六甲へ移動。現代日本プログラムの会議後,生協食堂で昼飯を食べてからオフィスへ。この後修論指導をすることになっている。

修論指導後もいろいろやっていたら日が暮れた。名谷に戻るつもりだったが,直帰した方が良いかもしれない。別に今日名谷に戻らなくても良かったよな? たぶん。

mice

miceといってもネズミではない。Rのmiceパッケージで使われているアルゴリズム,MultipleでなくてMultivariate Imputation by Chained Equationsだったのか。

忘却曲線

ライブの思い出をかなり忘れていて変なことだけ覚えているけれども,何分後に何パーセント忘れるから仕方ないかみたいな話をしているガオラーさんの間で数字が食い違っていたので,エビングハウスの忘却曲線の話だなあと思ってtweetしたので敷衍しておく。

ちょっと検索すると,1日後に33%残っているという英語図版を載せておきながら,1から引く計算でミスをしたのか,1日後には74%忘れるという明らかに誤った説明を載せているサイトがあった。ここから孫引きした誤った数字も広まっていそうだ。

そもそも,エビングハウスが示したのは,このサイトに説明されているように,自分に関連のない無意味な音節を記憶して時間が経過したときに,どれくらい思い出すための労力を節約できるかという数値(savings)であって,記憶に残っている割合ではないが,この曲線を忘却曲線(元はドイツ語らしく読めないのだが,英訳ではforgetting curve)と呼んだことも誤解の一因であろう。

追試としては,2015年のPLoS ONEに追試結果が載っていて,著者らは1880年のエビングハウスの忘却曲線の再現に成功したと言っている(繰り返しテストしているが対象者は1人という,疫学や公衆衛生学のセンスからするとよくわからないデザインなのだけれども,PLoS ONEに載っているということは,おそらく人なら誰でも共通してもっているメカニズムだという前提が受け入れられているのだろう)。Table 3を見ると,20分後,1時間後,1日後のsavingsは,それぞれ,エビングハウスが58%,44%,34%で,この著者らの結果は47%,37%,32%となっているから,まあまあ大きくは違っていない気はする。savingできていない分が完全に忘れ去っている割合だとすると,大雑把に言って,20分で42-53%,1時間で56-63%,1日で66-68%忘れるという結果と言える。

けれども,これは無意味な音節の記憶の話なので,エピソード記憶だったり強烈な印象を残したりして刻み込まれた記憶であったり,意味がある歌だったら,もっと忘れにくいだろうと思われる。逆に,リトグリのライブがそうであったように,あまりに強烈な印象が連続すると,脳がオーバーフローして夢でも見ていたような気分になってしまい,細部を覚えていられないということもありそうだ。だからまあ,実際に起こったことの解釈としては,エビングハウスの忘却曲線は,あまり役に立ちそうにない。面白い話ではあるが。

ましのみLIVE配信

帰り道にtwitterでましのみがLIVE配信していることに気づいたのでJRの車内で聴いていたら滑舌が悪いと何度も言っていて,それが聞き取れなかったというアピールだったのか「カツレツ?」とコメントした視聴者がいたのがツボに入って笑いを堪えるのが辛かった。

インディーズの頃に知ったときから,にゃんぞぬデシと共通性があると何度もメモしているが(「ハッピーエンド」の符合とか歌詞の理系的な面白さとか),最近映像をみる機会が増えるにつれて,ますます共通性を感じる。二人とも黙っていればどちらかと言えば可愛いルックスなのに挙動不審であることとか,高くてよく通る声とか(微妙に系統は違うのだが),音楽的多様性とかいろいろな仕掛けが好きであることとか。同じ時代に同年代にこの二人が存在するのは偶然か必然か。これまで二人とも大学生だったので音楽活動は控えめだったが,この配信でましのみは卒論を提出したと言っていたから,今後本格的に活動を広げるだろうと思われ,期待できる。この二人にはかつてのKate Bush的な溢れる才気を感じるので頑張って欲しいと思う(センスだけでなく教養もないと書けない歌詞が多いし)。

配信の最後の方でスタジオライブをやってくれて,2月20日発売予定のニューアルバム『ぺっとぼとレセプション』から「ほぼフルバージョン」のMVが公開されている「フリーズドライplease」(先行配信販売もされている)の弾き語り(と,音はかなり打ち込みなので,途中からキーボードを離れてハンドマイクで動きながら歌っていた)も素晴らしかったが(とくに大サビ),他にやってくれた「タイムリー」「美化されちゃって大変です」もアイディアが詰まった曲だった。歌詞に「盛者必衰」が出てくるという無常観は,「フリーズドライplease」にも共通するものだが,その一歩引いた冷静な視線がましのみの最大の特徴かもしれない。同じ平家物語からでも「諸行無常」くらいは椎名林檎だって使うが,「盛者必衰」は一段深い。「春の夜の夢」とか「風の前の塵」とかも使ってくれると良いな。気がついていないだけで既に使われているか? もう少し深読みすると,平家物語は秦の趙高とか平将門とかいった過去の例を挙げて,「奢れる者は久しからず」と直近に栄華を極めた平清盛を皮肉った話だったから,現在のような権力の横暴というかデタラメな政治はいつまでも続かないだろうと思わされる。考えすぎかもしれないが。

どういう仕組みかよく知らないが,TwitterでLIVE配信されているとき,画面にメッセージを打ち込むことができる。ましのみの配信中面白かったのは,いろいろな言語でメッセージが流れていたことだ。たぶんあんな早口な日本語,海外の方にはわからないと思うが,音楽とビジュアルだけで"Je t'aime"とか"te amo"とか言ってしまえるのは凄い。

愛を語る言葉

ところで,フランス人が"Je t'aime"というのと,スペインや中南米の人が"te amo"というのと,英米人が"I love you"というのと,日本人が「愛してる」というのは,たぶん意味内容が違うだろう。だから敢えて外国語で愛を語ると特別な意味やシチュエーションを作り出せる,というのが,川嶋志乃舞さんの「漱石のこと」の主題だった。

もちろん,話者の年齢や立場や関係性だって多様なので,それらが作り出すコンテクストに応じて,同じ言語であってさえ意味内容は違うことはあるだろう。

しかしたぶんそれだけではなく,近い意味の訳語として選ばれているとはいえ,平均的な意味内容として想像することは違うように思う。ソシュール言語学でいうところのシニフィエが違う。

しかも時とともに変化する。明治時代の日本人にとっては"I love you"が意味する言葉として「月がきれいですね」が近かったかもしれないが,現代においては,このことを共通知識としてもっているという前提がない限り,「月がきれいですね」は愛を語る言葉ではないだろう。だから翻訳は難しい。もっといえば辞書だって難しくて,新明解国語辞典における「恋愛」の説明は,初版では赤瀬川原平が驚きと感動のあまり『新解さんの謎』という本まで書いてしまったくらい具体的に書き込まれ,見ようによっては即物的な解釈が与えられていたが,版を重ねるごとに抽象度が増しているように思われるのは,おそらく「恋愛」が意味する内容が多様化していることを反映しているのではなかろうか。

いやまあ,恋愛は個々の事例だけが大事なので,たぶん一般論はどうでもいいのだが……ってのは,リトグリ「好きだ」の主題だったかな。

(list)

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