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【第335回】 カンボジア調査会議(2020年3月10日)
- 朝からGSICSの会議室でインドシナ半島PHC比較プロジェクトの一環で,カンボジア調査計画について打ち合わせが夕方まで。
- 疲れ果てて名谷キャンパスへ移動。
- 普通,ヒト=ヒト感染が起こるように変異した感染症の場合,基本再生産数R0は初発患者から二次感染者に感染するときも二次感染者から三次感染者に感染するときも変わらないが(フィクションでは変わることになっている場合もある),行動様式や環境条件が違う集団では違っていても当然だし(例えば,蚊が媒介する感染症だったら,蚊が多い環境ならR0>1でも,蚊が少なければR0<1となることは,直感的にわかるだろう),感染の世代を重ねるうちに,集団内に免疫をもつ人が増えてきて,再生産数は減っていく。あるいは,ワクチンを打ったり,予防薬や治療薬を飲むことでも,やはり再生産数は減っていく。そういう状況に至ってからの再生産数を実効再生産数(記号はRtを使うことが多いと思う)と呼ぶ。R0が2である場合,平均的には,発症間隔が過ぎるごとに,新規感染者が2倍ずつ増えていくことになる(ばらつきがあるので,実際にはぴったりとは合わないが)。元々R0は,20世紀初頭にLotkaが見つけた内的自然増加率に基づいて定式化されたパラメータであることを考えれば,1回だけ侵入した感染源からの感染拡大(point source propagation)の場合,流行初期の新規感染者数が指数関数的に増加するのは当然である。横軸に日付,縦軸に新規感染者数の対数をとったグラフを書くと,当然,最初のうちは直線になるはずで,R0はこの直線の傾きである。仮に,新規感染者数が一定の割合で過小評価になっているとして,定数倍によって推定される真の新規感染者数の推移を見ても,直線が上下にずれるだけで,傾きは変わらない。仮に,検査数の上限のために新規感染者数が押さえられているとしたら,指数増加でなくなるので,片対数グラフで直線にならない。従って,昨日からtweetを賑わせているように(自分でデータを確認していないので,それ自体に選択バイアスや情報バイアスがある可能性もあるが),日本の新規感染者数の推移が,片対数グラフ上で他国よりも傾きが緩い直線に乗っているのなら,(仮に検査が絞られているために絶対値としては過小評価だとしても)日本におけるRが小さくなっていることを意味する。クラスター対策の結果はあったとしても3月12日以降にならないと出てこないから,このこととは無関係だ。理由として考えられるのは,かなり早期から手洗いの重要性を強調し,わりと多くの人に手洗いの習慣があったこと,元々の対人距離が他国より大きくあまりスキンシップをとらないこと,マスクをしている人が多いこと,などだろうか。専門家会議が「一定程度,持ちこたえている」と言ったこととは整合性がある。
- Lancetに武漢の成人入院患者データの後向きコホート研究から臨床経過と死亡のリスク因子を調べた論文が載っていた。Zhou F et al. "Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective cohort study"(2020年3月9日掲載)である。あとでちゃんと読もう。
- ネットワーク関係の事務仕事が降ってきているのだが,何を求められているのかがわからず,何度かメールで問い直した結果,エクセルの1つのフォームから部屋番号で照合して別のフォームに回線番号をコピペするという作業を,改装されたC棟のネットワーク回線数分(部屋数+α)することを求められているようだとわかった。それ業者の側でできるんじゃ? と思ったのでお願いしてみた。少なくとも教員の仕事ではないと思う。
- 留学生が海外調査をするために得た学内の研究助成金の事務作業のフォローに手間が掛かっていて,日本語のフォームと説明しか貰えないが,留学生に英語で尋ねないと情報が得られないので,そこの仲介を延々とやっている。これは他に誰もできないから仕方ないのだが辛い。
- 22:30を過ぎ,疲れが限界なので帰途に就く。
- レトルトご飯と冷や奴で晩飯を済ませ,暫くメールの返事を打つなどしていたら2:00を過ぎたので眠る。
(list)
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