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【第370回】 今日もオンライン会議と講義準備(2020年4月19日)
- 8:00起床。75.05kg。体温とSpO2は測り忘れた。
- 昨日の感染症学会での専門家会議報告についてのBuzzfeedの記事,これまでの専門家会議の説明通りで(今になって言うことを変えたと批判している人がいるが,2月25日に書いた通り,専門家会議が設置されてすぐに検査基準を広げる方向性は打ち出されていて,言うことも態度も変わっていない。それへの対応が不十分で医師がオーダーしたのに検査拒否されたりしたのは,政府が金を出さず各方面への協力要請もしなかったせいだ),とくに新しいことが加わったわけではなさそう。ぼくは一つだけ専門家会議の見解と意見が違う点があり,route of infectionによって感染力の分布が違うかもしれないと思っているので,3月末以降の感染は見えないクラスターの連鎖の増加ではなく,接触感染や飛沫感染による平均二次感染者数が小さい感染が,あまりにも多い欧米からの感染者の流入によって同時並行的に起こったためにリンクが追えない弧発例が増加していると思っている。押谷先生は感染はすべて同一様式でクラスター感染しかないという立場は変えないようだ。まあ,そう思って対処する方が安全側だから,人々の生活が成り立つ限りにおいては間違っていないが,例えば東京から地方に行って発症した感染者からの二次感染者数分布や,病院内で二世代以上の感染があった場合の二次感染者数分布がべき分布になっているのか,それとも二項分布か正規分布に近い形なのかのデータを見たいなあ。
- UNOCHAのCOVID-19対応を助けるための人道主義の活動に関するアイコンのリリースをLibreOffice日本語チームが報じている。
- サンデーモーニングで韓国との比較をしているが,韓国で経路不明の人が減った最大の要因を見逃している。感染症対策のためには強力な法律があることでプライバシー権を侵害することが許されているため,スマホを使った感染者の行動経路の把握と公開ができていることによって,経路不明の人が減ったのだ。そこに触れないのはまったくダメ。発熱外来については,2009年の新型インフルエンザのときに発熱外来が患者で溢れた反省を踏まえて外来窓口は公表せず電話受付を二次医療圏単位で設置するという方針を厚生労働省が打ち出したのが,専門家会議設置より10日ほど前のことだったが,これが狙い通り機能していれば,公表していないだけで専用外来は設置されていたので,他の患者と同所に長くいて感染を広げるリスクを防ぎながら必要な検査はできたはずだ。誰でも行ける発熱外来を作らなかったこと自体が間違いなのではない。ぼくは以前から肺炎外来のような形にするのが良いと書いているが,根本的な問題としてかかりつけ医が確立していないことが日本の脆弱性で(医療法に一次医療圏の規定がないことがその原因で,医師が自由に開業でき麻酔科以外は何科でも自由に標榜でき,患者もどの医療施設でも好きに受診できるという利便性と裏腹なので解,改善が難しかったわけだが),英国GPやキューバのファミリードクターのような存在が確立していれば,電話相談はそこにするという,持続可能なやり方が可能だったはず。もしかかりつけ医が確立していれば,武漢で使われたような振り分けフローチャートを作ってプライマリケアを担うかかりつけ医に配ることが厚労省の仕事になったはずだ。プライマリケア医の育成体制も含めて今後一次医療圏の医療計画を医療法枠組みで法制化すべきと思う。
- あと,クラスター対策の最大の功績も見逃している(尾身先生も押谷先生もあまり強調しないので伝わらない面もあると思うが)。3密条件を見つけて集団感染発生が起こりやすい条件ができることを予防することを可能にしたのは,間違いなくクラスター対策班の功績。見つかったクラスターの感染者からの接触者追跡と検査と隔離という「クラスター潰し」は日本に限らず(日本でもクラスターに限らず弧発例も含めてやっているはずで,それがされていないかのような報道はおかしい),新規感染者が多すぎて追跡が不可能になった欧米諸国を除けば,感染症の疫学的対策の基本なので,世界中どこでもやっていることなのに,あたかもそれがクラスター対策班の特徴であったかのようなミスリードは止めて欲しい。いまの日本の危機は,新規感染者が増えてきて接触者追跡を続けるマンパワーが限界に達したところにあるので,対人接触を8割減らして,追跡可能なレベルまで新規感染者を減らすことが急務,となっているわけだが,そのための方法としてはスマホを使った接触者追跡の効率化についても,そろそろ広く議論しても良いのではないか。韓国方式の情報公開は日本では無理だとしても,シンガポール方式やAppleとGoogleが5月から作ってくれるというBluetoothを使った,位置情報を使わずに接触者を見つける仕組みは,半強制的に導入して欲しい。Fraserグループの論文を読んでから何度も書いているが,接触者追跡についてのブレイクスルーになると思う。
- 大友さんのtweetには同意。音楽文化に生き残って貰うためには,いろいろな持続可能なやり方を模索する必要があって,少なくともそういう試行錯誤をしている間は行政がサポートしないと潰れてしまう。ぼくは今後も音楽を聴きたいし,有料のネット配信でも良いのでライブという形は続いて欲しいので(TWEEDEESの無料配信も楽しめたし,田島貴男の有料配信は購入したのに忙しすぎて半分くらいしか視聴できなかったが楽しかった),東京都は,配信していても,無観客にすることで間違いなく感染拡大防止に協力しているライブハウス(に限らず寄席でも講演会でも同様)に協力金を出すべきだろう。
- Lum TTY et al. "Identifying SARS-CoV-2 related coronaviruses in Malayan pangolins"(2020年3月26日掲載)はNatureの論文で,ゲノム分析により,コウモリだけでなくマレーセンザンコウもSARS-CoV-2のリザーバーホストである可能性を示している。Current BiologyのZhang T et al. "Probable Pangolin Origin of SARS-CoV-2Associated with the COVID-19 Outbreak"(2020年4月6日掲載)もセンザンコウの寄与を示唆しているが,グラフィカルなまとめを見るとわかるように,3つの結果が異なる経路を意味するので解釈が難しいところか。
- 打越さんのtweetで知ったが,ProNASにDowd JB et al. "Demographic science aids in understanding the spread and fatality rates of COVID-19"(2020年4月15日)という論文が出ていた。COVID-19の伝播と死亡リスクについての年齢差があるので,政策決定に人口学の関与が必要と主張しているようだ。
- 現状のSNSにおけるバッシングの増加の多くは「小人閑居して不善を為す」なので無視が正解だと思う。影響力が大きそうな人だと無視もできないが。
- 昨夜のニッポン放送の特番,最初にかかった曲がBob Dylanの"Browing in the wind"をリクエストするサカナクション山口一郎さんは素晴らしい。さすがドラゴンズファン。関係ないが。2曲目はMISIA自身のリクエストによる「明日へ」だったのか。MISIAさん経世済民に言及したのも素晴らしかった。アフリカでの活動といい,歌声が唯一無二の凄さなのはもちろんだが,立ち位置がしっかりした素晴らしいアーティスト。この流れでリトグリが生でパフォーマンスしたって凄すぎるなあ。2週間ぶりに合わせるというのにアカペラメドレーから始まり,安定のセカワラは圧巻であった。トークの後レノンの「Imagine」で〆というミュージシャンの祈りが込められた,良い番組だった。
- 14:00過ぎから20:00過ぎまでZoomで会議。しかしこれで3日連続COVID-19の話ばかりしていることになる。
- GIGAZINEのAvatarifyというソフトを紹介する記事を見て,ディープフェイクというのはSnap Camera(Zoomなどで使うカメラとしてこのソフトを指定することで,背景加工も映っている人の加工もできて面白い)どころではないくらいの自然な動画がリアルタイムで生成できるのか気になった。GitHubのプロジェクトページをちょっと見たところ,WindowsでもMacでもLinuxでも動くそうだが,高性能なPCが必要だし手順もそれなりに面倒なので,まだ一般ユーザには広まらないだろうとは思った。データだけで700MB以上あり,CUDAとMinicondaとGitとOBS-StudioとOBS-VirtualCamをインストールする過程でいろいろなファイルが生成されるので,2 GB以上のハードディスク容量を食った。しかし,自分のノートPC(Core i7,メモリ12GB,ストレージはSSD)で実行しても,遅すぎてアインシュタインの顔が歪んでしまって全然ダメであった。GPUがないとリアルタイムは難しそうだ。こういうのに物欲湧くなあ。それとも,Linuxだと速かったりするんだろうか。
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