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Vaccination Memo

目次

Made by Minato Nakazawa, on 30 October 2018. The latest update was done on 30 October 2018. Contact address is minato-nakazawa[at]umin.net ([at] should be replaced by "@").

これまでワクチンについて鵯記で書き散らしてきたことをまとめて採録するページ(ただしデングワクチンはこちらを参照)。たぶん病気の性質とワクチンの性質と環境要因に応じて最適戦略が考えられるんじゃないかと思うので,そのうち整理したいが,とりあえずメモの採録のみ。

ポリオワクチン数理モデル論文について(2012年6月22日の鵯記

数理生物学会の佐々木顕さんたちの,"Estimating the risk of re-emergence after stopping polio vaccination."という論文が,Frontiers in Virology誌に掲載された。ワクチン接種を止めたらoutbreakが起こって大変なことになったというNigeriaの例は既報だが,この論文は数理モデルを立て,シミュレーションをすることで予測をわかりやすく提示している。また,ただワクチン接種を止めるのではなく,経口から注射に切り替えるとどうなるかという考察もなされている。先頃,日本でも厚生労働大臣が,Sabin(経口投与する。以下OPVと略す)を止めてSalk(注射による投与。以下IPVと略す)経口投与(OPV)を止めて注射による投与(IPV)に秋から切り替えるという発表をしたところなので,ベストタイミングで出た論文だと思う。設備とコスト,人的資源の問題から,途上国ではIPVを完全実施できないし,かといってOPVをただ止めてしまうとほぼ確実にOUTBREAKが起こるので,当面,途上国ではOPVは止められないということだろう。

日本版ACIPの必要性(2013年12月22日の鵯記

HPVワクチンは「積極的勧奨が一時中止」されているが, 岩田健太郎先生のコメントLancetに載った渋谷健司先生たちの論文は読むべき。やはり日本版ACIPは必要。

週刊医学界新聞『予防接種戦略』について(2014年1月7日の鵯記

週刊医学界新聞の1月6日号の巻頭特集「予防接種戦略―新たなステージに向けて」のグラフ解説と新春座談会は充実したいい記事だと思った(座談会には,Twitterで積極的に情報発信されている堀 成美さんが参加されていた)。1994年の予防接種法改正で定期接種が義務から勧奨に変わったことに,1989年から導入されたMMRワクチン(Measles, Mumps, Rubella)のうちMumps(いわゆる,おたふく風邪)ワクチンに含まれていた成分によって無菌性髄膜炎が約1/500の確率で発生したことから訴訟が起き,1992年に東京高裁で国の賠償責任を認める判決がおりたことが強く影響していることがよくわかるし,昨年4月から定期接種に入ったばかりのHPVが6月には「積極的接種推奨の中止」(ただし定期接種から外れたわけではない)に至った原因として,慢性疼痛を訴えた被害者の社会問題化が影響していることも書かれていた(ちなみに,昨年12月25日に行われた調査会でも,慢性疼痛の症例検討やワクチン添付文書への副反応記載案が検討されている段階なので,接種勧奨を再開するとしても未だ時間がかかりそうだ)。さらに,2012年に生ワクチンから不活化ワクチンに切り替えられたポリオワクチンだが,ここで導入された不活化ワクチンは米国などで使われているSalkではなく,これまで生ワクチンに使われてきたSabin株由来のものだったことまで書かれていた。最初に出ている概念図も印象的でうまいと思った。時期的な問題なのか,昨年末の時点で審議中の予防接種基本計画の話とか,「水痘ワクチン及び成人用肺炎球菌ワクチンの2ワクチンについては、技術的課題の検討状況や地方財政措置の状況を踏まえ、26年度中の定期接種化に向けた準備が進められることになりました。」という話には触れられていなかったが,それは仕方ないところ。

西浦さんの発表のメモ(2014年3月18日の鵯記

S2-4「予防接種の個人レベルの効果推定と疫学モデル」 東京大学西浦先生。PLOS Medicineの2010年のインフルエンザのフォレストプロット。季節性インフルエンザのワクチン接種をすると,パンデミックfluにはかかりやすくなったという結果。世界中がなぜ? となった。DHFでのエンハンスメントのようなもの? 証拠ない。いまのところ,疫学的干渉(epidemiological interference)がありうる説明。麻疹の発生と百日咳の発生がグラスゴーでは互い違いになっている。数理モデルで説明できる。風疹と麻疹とかも。(感想:これって,近海魚の三すくみモデルと一緒?)temporal non-specific immunityが数ヶ月続くことを考えると,常微分方程式を解くと説明が付く。ここから本題。Test-negative study。インフルエンザの迅速診断をして,陽性をCase,陰性をControlとする。CaseもControlもワクチン接種した人としていない人に分けられる。この解析での想定は,Epidemiological Interferenceがあるとボロボロに壊れる。ここから田栗先生の話と近づく。疫学的干渉を個体レベルの効果としてどういうものか明らかにする。Efficacy(個体レベル)とEffecgiveness(集団レベルの効果)の定義。感染症は個体間で相互に依存。dependent happening。もしそれがなければ,Efficacy=Effectivenessで,RRはp1/p0。しかし感染症では成り立たない。ワクチン接種が20%の集団と80%の集団でワクチン接種した特定の1人のefficacyは集団によって異なる。herd immunityがあると感染の起こりやすさに差が出てしまうので難しくなる。単純に解決する手段はSAP (Secondary Attack Proportion)。曝露した条件付きのリスクの尺度。発症した人に曝露した人数を曝露疑い例の総数で割ったものをSAPとする。粗い方法は,世帯レベルの二次感染割合(HSAP)。4人の世帯で,1人の患者がいて,最終的にはあと2人に感染したら,SAP=2/3。SAPを使ってワクチンのefficacyを考える。jからiに感染させると考えて,SAPijをHSAP(iかjが1だとワクチン接種済みとするVEsとVEiが推定できる(1からSAPの比を引いたものとして)。これを使えば,SEIRの予測モデルにワクチン効果を組み込める。重篤化軽減効果などは臨床データとして簡単に取れる。この考え方を使って,interferenceがefficacyに影響するのをチェックするモデルを作ってシミュレーションすると,季節性ワクチン接種者の方がパンデミックfluにかかりやすくなった現象が再現できた。この状況では,Test-negative studyではオッズ比など使えるデータが得られない。ワクチンefficacyの効果はepidemiological interferenceに高度に依存。susceptible effectは使えない。そこで前向き研究が必要。susceptibility controlled study design(香港大のグループがやっていた)。他には手はないかを現在検討中。

エボラのワクチン需要予測(2014年8月21日の鵯記

このREUTERSのtweetも,リンク先記事でも「最大3万人分の治療薬やワクチンが必要」と書いているが,Oliver BradyのNatureの記事と,そこからリンクされている,彼らが推定に使ったExcelの表を見ると,予防・治療用に約3万人分の薬が必要ということだ。患者数としては8月19日時点で2,240人という実数を計算の出発点にしており,患者とコンタクトして薬の投与が必要になる人がその9倍(患者1人当たり平均9人と接触という)という推定になっている。この値は"conservative"なシナリオだそうだが,Excelの表の上でスライドバーを動かしてパラメータを変えられるようなので,簡単な感度分析は試せそうだ。

上橋菜穂子『鹿の王』は免疫学の素養として役に立つと思う(2014年9月30日の鵯記

上橋菜穂子『鹿の王』下巻,ISBX978-4-04-101889-7を読了した。現実ともリンクしたアイディアを絶妙にファンタジーに昇華していて,圧倒的に面白かった。

上橋作品すべてにいえるが、登場人物が凄く魅力的。下巻p.178のアイディアの元になった研究はこれとかだろうか? lichenからの薬効成分抽出については、ちょっと検索したら、既に特許がとられているものもあった(抗ウイルス作用ではないが)。

マラリア流行地で,鎌状赤血球貧血遺伝子をヘテロでもつ人たちがビターキャッサバを食べる習慣をもっていたり,サラセミア遺伝子をもつ人たちがフェイバ豆を食べる習慣をもっていたりするという栄養適応の話(マラリア講義資料の4.4参照)を更に捻った感じの話が出てきたり,下巻p.262からの《病み済み》でのホッサルの話が(もちろん用語はファンタジーの世界の言葉だが),免疫学の考え方をわかりやすく説明してくれていたり,いろいろと興味深い。子供の頃に読んでおけば,ワクチン接種への理解が深まると思う。

その後,話はウイルスキャリアと共生の関連,新興・再興感染症と生態系擾乱に展開する。p.284でホッサルが生態系という言葉を使ってしまっているのは少し残念だった(難しいとは思うが,別の言葉でわかりやすく言い換えて欲しかった)。 文化的侵略(この話の場合は文化だけじゃないが)による食変容と疾病感受性の変化の話も出てくるし,免疫学的寛容の話も出てくるし,挙げ句の果てにはparasite manipulationまで来てしまったぞ。SFでいうとジャック・フィニイの『盗まれた街』という先駆者があるけれど。同時にDarwinian Medicineにも言及。2度目DF感染(異なる型)でDHFやDSSになりやすいという話を思い出させる記述も。というわけで,大変面白かった。

肝炎ワクチン(2015年1月14日の鵯記

B型肝炎ワクチンにより肝臓がん激減という中国の研究。この記事には「自費接種で保険はきかない」と書かれているが,この資料に書かれているように,母子感染予防の目的で生後すぐに接種される場合は保険適用になっているし,去年の10月から定期接種になった水痘に続いて,おたふくかぜやロタウイルスとともに今後の定期接種化が検討されている(2016年からの定期接種化を目指しているという報道もあった)。HPVのように定期接種化されたけれども副作用が問題になった(重篤な副反応が0.003%と,多くの問題で社会が受容可能なリスクと認めることになっている100万分の1や10万分の1より高い)ために積極的勧奨差し控え中という微妙な予防接種もあるが,HBV/HCVについては最近の技術的進歩が著しいし,うまく行くのではないかと期待される。

PNGがポリオ不活化ワクチン導入(2015年8月14日の鵯記

Gaviから,More than 200,000 Papua New Guinea children to be protected with the new polio and measles-rubella vaccinesという記事。今年8月12日からポリオの不活化ワクチンを導入したそうだが,インフラを考えたら都市部だけの話と思われる。

ワクチン効果のシミュレーション(2015年9月16日の鵯記

Rを使ったワクチン効果のシミュレーションコードを書いてアニメーションを公開された方がいた。*世界一わかりやすいワクチン講義(誇大広告)(脅威のアニオタ社会復帰への道,というブログの9月6日付け記事)は,この条件では定性的には当然と思われる結果だが,このアニメーションは大変わかりやすくimpressiveで素晴らしい。

羊土社「実験医学」増刊(2015年10月23日の鵯記

羊土社「実験医学」の増刊『感染症 いま何が起きているのか 基礎研究、臨床から国際支援まで:新型インフルエンザ、MERS、エボラ出血熱…エキスパートが語る感染症の最前線』をご恵贈いただいた。編者の忽那賢志先生が出演していた情熱大陸は大変面白かったが,目次を見るだけでも,この本が感染症について語るなら必読書であることは断言できる。

分子メカニズムや新薬の話があるかと思えば,西浦博さんによる数理モデルの話(とくに基本再生産数R0がもつ問題にフォーカスした内容になっていて,ざっと見ただけでも読み応えがありそう),堀成美さんがワクチン懐疑・反ワクチンに対して専門家が正しい情報を広める必要性を訴えている章,ロシナンテスの川原先生によるアフリカ地域医療実践の話と,内容も多岐にわたっていて大変興味深い。ちょっと高い本なのでご恵贈いただいたのは大変ありがたかったが,そうでなくても自費で買っていたに違いない。

「コウノドリ」風疹ワクチンキャンペーン(2015年10月31日の鵯記

原作漫画でも産科と新生児科の若手医師2人のやりとりは戦友っぽいだけでなく,ごくごく僅かには恋バナっぽさも醸し出していたところではあるが,ドラマではこの2人を研修医というより若くて未熟な設定にしただけでなく,やや恋バナ比重を上げているような演出になっていたのは,ちょっと欲張りすぎかと。何かのエピソードを通してこの2人の関係性がより戦友っぽくなるように成長させるための伏線なら,それはそれでOKか。今回のネタは喫煙妊婦が早期胎盤剥離で緊急手術になった話と,CRSの小さなピアニストの話に加えて,原作では米国のジャズシンガーが妊娠中に来日公演して早産になってしまう話とカップリングされていた妊婦の旅行の話までぶち込んできたので,やや詰め込みすぎな感があった。

CRSの話は原作から男性もワクチンを打つために民間企業の理解も必要という部分をなくして,代わりにテレビ映像によるキャンペーンに当事者が協力するかどうかという苦悩を入れてきたが,これは,この番組が現実に厚労省とタイアップしてCRS予防のために風疹ワクチンを打ちましょうキャンペーンをしているため,それにダイレクトに使えるような映像を作ってしまうことによってメディアミックスを図ったのだろう。狙いは理解できるが,このエピソードだけは原作通りの方が良かったと思う。

リスコミの必要性(2015年12月25日の鵯記

昨日の4コマ講義の環境保健学では,risk assessment and risk communicationの話をしたが,岩田先生の本にも書いてあるように,risk communicationはメディア対策も含んでいる。環境保健学,広く言えば公衆衛生学は,集団の健康状態の向上を目標とするので,例えばHPVワクチンならばきちんとCRAをやって,その結果を厚労省の担当課がきちんとメディア戦略も立てて国民の理解が得られるように広報すれば良い。実際に政策をどうするのかはCVMで優先順位をつけることもできる。メディアが一面的な情報だけを取り上げることに政策が左右されてしまっているのだとしたら,リスクコミュニケーションに失敗しているのだと思う。実際に副作用が疑われる患者の治療は臨床医学だから,公衆衛生政策とは別の物として推進されるべきだろう。CRAは,例えば単純に考えても,(1)既に認可されているサーバリックスとガーダシルの接種の積極的勧奨を再開するのか,(2)日本は子宮頸がんの原因HPVの型に占める16型と18型の割合が諸外国よりかなり低いから,日本向けのワクチンを新たに開発して臨床試験をして安全性と有効性を確認した上で認可が下りるのを待って接種すべきなのか,(3)子宮頸がんのpopulation at riskではないが,女性にHPVが感染する元である感染源は男性なので,感染源対策として男性にも接種した方が良いのか,(4)このまま積極的勧奨をしない状態を続けるのか,といった考えられるシナリオについて,子宮頸がんだけでなく男性における尖圭コンジローマ予防とか,軽症のものまで含めた有害事象発生とか,ワクチン接種にかかる金や人手といったアウトカムの総体を予測して比較し,総合的に判断して公衆衛生政策としては接種再開が最適な戦略だ,という結果が出て,きちんとしたリスクコミュニケーション戦略に基づいて,その情報を双方向交換すれば,多くの人は納得できるはずだが,それをせずに稀な有害事象の可能性があるから集団接種すべきではないという臨床ベースの意見にエビデンスが乏しいと言って対立していては平行線を辿るだけであろう。なお,予防接種事業が予防接種法に基づいて行われる公衆衛生施策である以上(感染拡大阻止を目的にする以上は,給付行政ではなく規制行政なのだから公権力しか実施の蓋然性をもたない),このCRAやCVMに基づくリスコミは厚労省が責任をもって進めなくてはダメで,大学の研究者とか民間の専門家に任せることはできない。もし厚労省の医系技官にその能力をもった人がいないならば,医師と歯科医師にしか門戸を開いていないのをいい加減にやめて,MPHやDPHをもっている公衆衛生の専門家を採用すべき。

世界一受けたい授業から(2016年1月9日の鵯記

世界一受けたい授業という番組で知らぬ間に進行する肝臓病の恐怖2016――最新研究でわかった3つの新常識というテーマを扱っていた。新しいHCV治療薬ができたけれども存在を知らない医師がいるし適応に注意が必要なので,肝炎患者はできるだけ早く肝炎専門医を受診すべきで,米国から輸入している1錠で8万円の薬を3ヶ月飲み続けるので自費で払うと600万円を超えるが,いまでは保険適用だし国から補助も出るので自己負担は総額6万円くらいで済むという話だった。国から補助がでる仕組みは肝炎対策基本法だと思うが,仮にそれが無かったとしても高額療養費制度があるので保険診療ならば600万円を自己負担することはないはず。ちょっと誤解されそうな説明だったかも。それと,せっかく最近画期的な薬が続々とできているという話を出すなら,それは発見後長い間HCVは培養細胞で増やせず研究が進まなかったけれども(だからHBVと違ってまだワクチンもない),2005年の脇田らのレプリコンを使った増殖成功がブレイクスルーとなったという話も出して欲しかった。あと,若者に人気の行為で感染経路となるものとして,タトゥーとピアスが挙げられていて,確かにそれはそうなのだが,精液や膣分泌液中の濃度が低いために通常の性行為による感染確率は低いとはいえゼロではないのだから,STDの1つとしての説明もした方が良いのではないか(とくに口腔内に怪我をしているときのオーラルセックスとか,血液が出やすい性交渉とかは危険)と思った。

修士までは人類学をやっていて,熱帯医学・公衆衛生で博士号を取得した後,LSHTMでワクチン信頼性プロジェクトを展開しているHeidi Larsonが,昨年12月にNatureのコラムとして書いた世界はHPVワクチンが安全であることを受け入れるべきだ:だが,科学だけでは公衆からの信頼と政治的信頼を確立するには不十分だろうと題した記事のコメント欄で続いている議論は,公衆衛生政策としての妥当性の問題と個人の健康を守る医療の問題が切り分けられていないので噛み合わないように思う。しかしこれは,公衆衛生政策として提示される情報が不十分なことを意味している。昨年クリスマスにリスコミの必要性と題して書いたが,ウイルスの型も含めた感染状況,性交渉の頻度やネットワークのタイプなど,集団ごとに違うのだから,たとえ同じワクチンを使って同じ政策をしたとしても,まるで異なった結果に帰着しても不思議ではない。複数のシナリオを仮定した多面的予測を各国当局が行った上で(日本の場合は,厚労省の課長レベルでそれを考える人がいないと研究班も設置されないことが多いようだし,HPVワクチンについてそういう予測がされたという話は聞いたことがないが),それをきちんと国民に説明して理解して貰った上で,例えば仮想評価法(CVM)で政策的利益が最大になるシナリオを実施するとか,比較リスク評価(CRA)で大きな支持を集めたシナリオを実施するという形で政策を決定するべきだろう(という意見を,もう少し整理してNatureの当該ページにコメントしてみようかとも思うが,より紛糾するかもしれないから,別にページを作るかな)。しかしそれをするためには感染症数理モデルがわからなくてはいけないし,日本では厚労省の医系技官は医師か歯科医師の免許をもっていないと応募できないので,残念ながらそれができる人はほとんどいないのが現状で(せめてMPHやDPHにも門戸を開いてくれればいいのだが),そういう政策がとられる可能性は低い。せめて採用後でもいいから,感染症数理モデルの教育研究コンソーシアムの短期入門コースでも受講してくれたらいいと思うのだが(知らなかったが,今年は10月11日から12日まで,神戸大学瀧川記念学術交流会館で国際研究集会も行われる予定だそうだ)。

日本人口学会関西部会で種痘の始まりの話を聞いた件(2016年3月5日の鵯記

(4) 川口洋(帝塚山大学)・加藤常員(大阪電気通信大学)「牛痘種痘法の普及過程を復原する歴史GISの構築」 1768-1912年の日本の総人口をみると,1840年頃までおよそ一定,1846-1872頃増加が始まった(ぼくの目には1912年頃にはかなり増えているように見えた)。その後は「空白の四半世紀」データがない。何故人口増加が始まったのか? 歴史人口学,経済史の主要トピックの1つ。DANJUROもその1つ。直接人伝牛痘種痘法(Arm to arm vaccination)史料:廣瀬元恭(1849)『新訂 牛痘奇法』。腕から腕に1週間ごとに植え継いでいくスタイル。医学史の分野では前線の研究なので,人口学で欲しい,集落のマジョリティに広まった時期のデータは不明。国産の牛痘の良いワクチンができたのは長与専斎がオランダで学んで帰ってきた明治7年のこと。それが全国に普及。種痘規則ができたのは明治7年10月30日。種痘医以外が種痘することを禁じた。これを受けて明治8年に各自治体が天然痘予防についての規則を作った。明治9年5月18日,天然痘豫防規則公布により種痘は義務化。今日のデータは悉皆調査で一人ずつ種痘を受けたか,いつか,受けなかった場合はどういう理由かという聞き取りをしている足柄縣のもの。村に住む25歳以下の子供について初回接種,再接種,三種の年月・医師名,患者名,地番などが書かれている。これを写真に撮って持ち帰ってデータベース化。「種痘人取調書上帳」時空間分析プログラム(開発中のため非公開となっているが)。SQLで問い合わせてGoogle Mapに表示するシステム。1875年1月の時点で足柄縣東部における種痘接種状況を色分けして円グラフでそれぞれの子供の割合を地図上に表示。円の大きさは人数。4ヶ月後には種痘を受けない子供はごくわずかになっていた。受けない理由は健康状態が悪いこと(百日咳,緑便など)であった。何度も接種しているのは,このときのワクチンは効力が完全でなかったため。初種や再種を受けていても流行時に感染した子供はいた。1855年~1874年末に種痘を接種した人についての地図をみると,神主などもいる。1874年に種痘医規則により他の職の人は種痘できなくなったので,1875年1月から5月のデータでは足柄上郡はほぼ2人に絞られた。「4ヶ月間に種痘医がほぼ全数に接種した」という仮説が立つ。1875年の人口ピラミッドを作ると,0-3歳は大部分が初種接種済み,その上の12歳くらいまでは再種接種済み,13歳以上は半数が天然痘に罹ったことがある。導入過程はだいたい3段階に分かれる。1850年から1875年までは第2期で初種が徐々に導入。1875年から1900年に普及。データが新しく出てくる可能性は低いのでシミュレーションすることを考えている(開発中)。対策先進地だからデータが残っていた可能性は高い。

日本人口学会大会で種痘の始まり続報(2016年6月12日の鵯記

(2)川口洋さん。明治初期の神奈川縣における天然痘死亡率。新しく見つけた資料により,激減を示したい。日本の総人口は1840年頃までほぼ一定。明治期は増加。1846-1872年(空白の四半世紀)のどこかで人口増加が始まった。1849年夏にインドネシアのバタビアから最初の種痘ワクチンが長崎経由で導入された。当時の手法はArm to Arm Vaccination。導入当初の足柄上・下郡における年平均天然痘死亡率は0.2-7.07パーミル。1875年5月の15歳以下種痘接種率は97%,1882年に80%という数値もある。その結果として同地域の天然痘死亡率は1880-1900には0.01-0.21パーミルに激減。ただし致命割合(=天然痘死亡率/天然痘罹患率)は10-40%であまり変わっていないと仮定。1876年5月18日から天然痘豫防規則(罰則を伴う)ができて種痘が義務化された。「種痘人 當四月廿五年以前 取調書上下書」(25歳以下悉皆)により記録されるようになったので,その記録を「種痘人取調書上帳」としてデータベース化(原資料所持者にwebでの公開許可を求めているところ)。天然痘罹患率・死亡率の計算方法は,天然痘生残率については生残者数/現住人口→やや過少,罹患率についてもやや過少に推定されているはず。だが,おそらく死亡率が激減したことは間違いない。(■WikipediaによるとsmallpoxのCFRはunvaccinatedで30%,vaccinatedで3%とあるけれども,vaccinatedで感染防御できて罹患率が下がることの方がCFR低下よりも死亡率低下への影響が大きいと考えれば,これはこれでいいのか?)

BuzzfeedのHPV記事(2016年12月7日の鵯記

「救えるはずの患者を救えない」 子宮頸がんワクチン副作用「問題」はなぜ起きた?というBuzzfeedの記事。内容的には目新しいことはあまりないが,取材を受けている津田医師の原著論文はこれがabstractで,アプローチの方法がユニークだと思う。ジャーナリストは(とくにウェブメディアなら尚更),原著論文が出ているネタを取材したなら,それ(本文非公開ならabstract。最低限doiなど書誌情報)へのリンクを張るべき。なお,津田医師の論文に掲載されているグラフで目立つ,2013年5月の報道ピークの中身は,同年6月に書かれていたこの記事を読むとわかる。ただ,Buzzfeedの記事も含めて相変わらず昨年暮れの鵯記に書いたような,包括的なリスクベネフィット評価をしたらいいという見方はほとんど出てこない。男性にも接種すべきという議論もメディアはあまり取り上げない。今週月曜にやった公衆衛生学の講義資料にも書いたが,そもそもHPVワクチン接種は予防接種法のA類だから個人予防ではなく蔓延予防や集団予防を目的としているという位置づけを考えたら,(子宮頸がんのPopulation at riskは女性だけだから子宮頸がんの感受性ホストを減らせばいいと考えて女性だけを対象としているのだと思うが,)HPV感染自体は男性も感受性ホストだし,性感染症だから女性への感染源は主に男性なので,男性を接種対象にしないのは不合理ではないか。それに加えてHPV-16陽性だと男性でもかかる中咽頭扁平上皮がんのリスクが10倍前後になるという報告(NEJM2007Oral Oncology 2014World Journal of Clinical Cases 2014のレビュー論文等々)もあるので,男性も接種対象にする合理性はかなりあると思う。ワクチン接種戦略としては,拙速に勧奨再開するよりも,最初から見直した方が良いのではなかろうか。

米国のインフルエンザワクチン(2017年2月12日の鵯記

米国のインフルエンザワクチンといえば,かつては経鼻吸入の弱毒生ワクチンが普通だったが(だから接種を受けた人への感染阻止効果も期待できたが),今シーズン(2016-7)は,不活化ワクチンの注射推奨なので,感染したときの症状を軽減することと,他人に感染させないことが主目的と考えられる。6ヶ月以上の人は誰でも毎年接種すべきと言っているが,たぶん米国民対象であることを忘れてはいけないと思う(世界中の人を対象にしたらリソースが足りなくなる)。毎年接種すべきというのは,流行する株が毎年変わるからだろう。

インフルエンザワクチン接種戦略について(2017年10月26日の鵯記

医療関係者はウイルスに高頻度で曝露する危険が高いハイリスク群だから,毎年流行する株が変わるインフルエンザへの院内感染を防ぐため,流行シーズン前に毎年ワクチンを接種するのは当然だと思うし,同じ理由で(+学校で感染して家庭に広げる感染拡大の主役となる可能性が高い)学童に接種を勧めるのもわかるし,感染したときの死亡リスクが高い高齢者への接種も当然と思うが,スタンダードプレコーションでほぼ感染を防げるはずの健康な成人に対しても接種勧奨する医療関係者が多いのは,どちらも確率は非常に低い副反応と超過死亡を天秤に掛けた結果の判断だろう。

しかし,公衆衛生的には,ワクチン製造コストや接種コスト,医療施設がそのために使われるべきかどうかといった点についての社会的議論も合意もない状態で勧奨するのは正しい態度とはいえまい。インフルエンザ以外の場合も,実用されているワクチンがある疾患の場合,ワクチンが最強の予防手段であるのは確かだが,ワクチンだけが予防手段なのではないし,ワクチンの有効性でさえ100%ではないという事実も踏まえて包括的に考えるべき。

ともかく副反応を絶対的に忌避する反対派と,ワクチンの予防効果が明らかに稀な副反応のデメリットを上回るということしか考えない医療関係者の多数派が噛み合わない対立をしているだけではダメで,定量的なリスク評価とCVMなどで価値観や代替手段の可能性も評価に含めた包括的な議論をするオープンな場を作るべき。厚生労働省や役所がやるべきことだが,せめてマスメディアでもそういう視点で記事を書いてくれないものか。

グローバルヘルス合同大会にて(2017年11月27日の鵯記

グローバルヘルス合同大会でプレゼン中にオーディエンスに対して挙手を促すものがいくつかあったが,どうして白か黒かの2通りに絞らせたがるのだろう。「なぜ日本では反HPVワクチン運動が盛んなのか」と題した(英語タイトルはもっと煽っているものだった)久住医師のプレゼン(おそらく反対運動のプロパガンダが成功したためといいたいのだろう。最後にリスコミを否定するのか尋ねたら反対運動の人たちは聞く耳をもたないので無視するというようなお答えだった)でも賛否だけ尋ねられたが,日本ではサーバリックスがカバーしている16型と18型による感染が欧米よりかなり低いので,RCTでエビデンスが出たが日本では未認可の9価ワクチンが認可されるまで待つべきとか,それも含めてコンジョイント分析や仮想評価法で総合的な判定をしてからでないと公衆衛生的な意思決定はできないといった意見は白にも黒にも含まれない。学生部会では学生が伝統医療への賛否を尋ねていたが,それこそ伝統医療も千差万別なので一括りにするのは不可能だ。こういう,話を単純化したがる態度こそ,グローバルヘルスでは避けるべきではないだろうか。

二項対立を煽っては問題解決に結びつかない(2017年12月1日の鵯記

HPVの型についての情報が以前見たときと変わった気がする。いずれにせよ欧米よりは日本の方が16型と18型のシェアは低いわけだが。

Women's health champion, Dr Riko Muranaka, awarded the 2017 John Maddox Prize for Standing up for Scienceの説明には,そういう情報は含まれていない。そもそもJohn Maddox賞というものが,世間で物議を醸している問題について果敢に切り込んだ個人に与えられる賞であって,科学サイドからのカウンターアクションとしての効果の大きさが評価対象であり,必ずしも科学的知見そのものとしての正確さには拘っていないように思われるし,ましてやHPVワクチンの公費での定期接種と積極勧奨についての公衆衛生政策としての妥当性が保証されたわけではない

以前も書いたが(参照:2013年12月22日2014年1月7日2015年1月14日2015年12月25日2016年1月9日2016年12月7日2017年11月27日),そのためには十分なリスコミをした上でのCVMやCRAやコンジョイント分析をするのが真っ当なやり方で,「反ワクチン派」がデマゴーグとして実存すると主張し叩く村中氏の二項対立を煽るやり方はある意味マイナスと思う。

数年前の風疹流行時に,国費で未接種者への無料ワクチン接種を全国展開すべきという意見に対しての厚生労働省の回答が,水疱瘡の予防接種すら予算が足りなくてできていない(注:2014年10月から定期接種化された)現状で,風疹を優先させることはできないというものだったことを思い出す。政策は実施によって得られるメリット・デメリットと,実施に掛かるコストを総合的に判断して立案されるべきで,リスコミを諦めてプロパガンダ合戦に走るのは筋が悪い。もちろん,ナイジェリア北部でポリオワクチンがムスリムを不稔にするための陰謀だというデマが流れたせいでポリオワクチンの接種をやめて周辺諸国まで広がるポリオ・アウトブレイクが起こったような惨事(もちろんこれも,World Health Report 2007にそう報告されているということに過ぎず,ナイジェリア政府の決定に至るプロセスの詳細はわからないが)は避けるべきだが,子宮頸がんを巡る状況はそうではない。何より大切なのはワクチンが効く仕組み,つまり免疫学の基礎まで含めた正確な情報共有だと思う。免疫学の基礎は高校数学を理解するより抽象度が低くてずっとわかりやすい話なので,中学レベルで必修にしてもいいと思う。最近脚光を浴びつつあるhealth literacyはそういう話で,しかしコンテンツをどうすべきかは十分に整理されていないし,不断のアップデートが必要になるから教材になるような情報を整理するのが難しいのは間違いないが,厚労省はそういう仕事をしなくてはいけない。

違う角度からみると,これも「我々」と「彼ら」を対立項として相互理解を拒否する態度に他ならないので,追い詰められた側は窮鼠猫を噛む危険が常にある。鄭 雄一『東大理系教授が考える道徳のメカニズム』(ベスト新書)がいうところの第二の相対的な掟が肥大化しつつあるのはまずい事態だと思う。そう考えると,John Maddox Prize自体,それを煽る可能性がある賞という側面は否めず,評価できない。岩田健太郎『予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える』光文社新書の方が遥かに真っ当な専門家の文筆活動だが,真っ当な活動は物議を醸さないから受賞対象にはならないわけで。

ほぼ無意味なパフォーマンス(2017年12月13日の鵯記

議員や有名人がHPVワクチン接種してSNSで広報するのが流行っているようだが,医療関係者でない限り,50代以上の既婚男性がHPVワクチンを打つことにはパフォーマンス以外の意味はほとんどないと思う。風俗に行くか浮気をするかしない限り,HPVに感染するリスクも,自分がキャリアであった場合に新規感染させるリスクもほとんどないはず。そもそも定期接種ワクチンとしてのHPVワクチンはA類だから,第一義的には集団免疫が目的のはずであり,ほぼpopulation at riskから外れている中高年既婚男性が打つのは目的に適わない。未婚男子が打つならまったく別の話で,アウトカムとして罹患率が低い中咽頭がんや致命割合が低い尖圭コンジローマの予防ではコストベネフィット的に引き合わないとしても,もしアウトカムとしての子宮頸がんによる死亡率を下げることがコストベネフィット的に引き合うならば,感染源対策として(子宮頸がんのpopulation at riskである女性へのHPVの感染源は概ね男性であるはずだから)若年未婚男子に接種することは集団免疫向上の点で大きなメリットがあるはずだから,そもそも女子だけに接種という形態が筋が悪かった。何度も書いているように,2価のサーバリックスや4価のガーダシルが日本でどの程度有効なのかも含めて,コストとメリットとデメリットについて妥当性のある予測値を出すのは推進したい側の責務だろう。ほぼ無意味なパフォーマンスをしている暇があったら計算すれば良いのにと思う。自分でやっている暇はないが,たぶん二次資料の分析だけでいけるし,卒論とかでやりたい学生がいたら指導するんだがなあ。

厚労省リーフレット見直しは一歩前進と思うが(2017年12月23日の鵯記

厚労省の第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成29年度第10回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催) 資料。正しい情報提供という観点から,ぼくは資料に掲載されているリーフレットの見直しは一歩前進と思う。しかし,具体的な数値を掲載したという見直しについて,効果の部分だけ数字を出したbuzzfeedは片手落ちというかリスコミの観点からはマイナス。何度も書いているように大事なのはコストとメリットとデメリットを含めた全ての情報を共有して総合的な判断ができるようにすることなので,対立を煽る方向は絶対的に止めるべきだし,今回の調査会が打ち出した方針もそこに配慮していると思う。それをメディアがぶち壊してどうする? 今回の検討部会・調査会でとられた方向性は公衆衛生学的に正しいので,まっとうな保健・医療関係者なら支持すべき。

WERのロタワクチンとポリオワクチンの話(2017年12月26日の鵯記

随分遅くなってしまったが,やっとwerの専門委員としての査読が終わった。No.44の前半はポリオウイルスワクチン,後半はアフリカでのロタウイルスワクチンについての話だったが,根絶が近いと考えられているポリオはともかく,ロタに関して衛生環境改善の可能性に触れられていない点には違和感があった。WHOのポジショントークとしては,ワクチン接種率の上昇によって患者が減るエビデンスがあるのだから,アフリカにおける下痢による乳幼児死亡を減らすためにワクチン接種推進は有効という立場を明示するのは当然かもしれない。たしかに緊急避難的にはワクチン接種が有効だし必要なのだろうが,より長期的な視野に立てば衛生環境改善の方が根本的かつ持続可能な公衆衛生政策だと思うので,World "Health" Organizationであるならば,そこにも目配りが欲しいと思う。担い手の主力が医者であるせいか,どうしてもWHOの政策は医療介入に偏りがちな気がする。

週刊医学界新聞記事へのコメント(2018年2月5日の鵯記

週刊医学界新聞の栄養疫学の連載の今週の記事はいろいろ謎。まずHPVの話は栄養疫学ではない。次に引用の仕方が杜撰。「昨年,HPVワクチンによる有害事象のリスクは非常に低いという日本独自の推定が得られました」といって引用しているのが,確かに2017年のVaccineというジャーナルに掲載されたものだけれども,原文を読むとワクチン接種に"Expert Council on Promotion of Vaccination"という立場で関わる17学会共同のCommentaryで,副反応について掲載されているデータは2015年9月17日の厚労省の会議資料なので「昨年得られた」値ではない。しかも「接種後1週間未回復を有害事象として<10人/10万人」というのは,たぶん接種後有害事象が1週間以上継続した事例を有害事象とした,という意味だと思われるが,リスク計算の分母が接種人数(回数は提示されているが無意味と思う)なのに,分子にしているのが,副反応疑い報告数のうち>発症日・転帰等が把握できた人のうち>集計時点でも未回復の人が186人という値で,元資料には発症日・転帰等が把握できた1739人のうち1週間以内回復が1297人ということは,1週間以上継続した人が442人いたということなので,接種人数338万で割れば,10万人当たり約13であって明らかに間違っている。何が「非常に有意義」なのかわからない。最後に,「有害事象とその救済を考慮し,リスクベネフィットや経済効果,不確実性を鑑みて政策を執る段階と思います。」といいながら,国内外のHPVタイプの違いや人の遺伝子型の違いを考慮したリスクベネフィット評価もせず,人々が何を重視するのかという価値観をCVMなどで評価することを含めた経済効果の予測もせず,不確実性の取り入れ方も極めて曖昧な現状で,どうして「私個人としては積極的推奨を特定の層に対して行うべき」と言ってしまえるのか,公衆衛生学的にはまったくわからない。なんだこれ?

週刊医学界新聞の件について,著者からtwitterでご返事いただいたが,まったく納得がいかない。疫学者を名乗るなら論文を批判的に読まない態度はありえないし,重要な数字を孫引きで済ませることもありえない。しかもVaccine誌の引用としても「接種後1週間未回復を有害事象として」は明らかな誤りなので,連載次回で訂正すべきと思う。

ちなみに,リスク論では,10年近く前に作った講義資料に書いたが,ゼロリスクはありえないので,開発などの反作用(環境形成作用,広く捉えれば農薬散布や医薬品の予防内服やワクチンも同列に考えることができる)において100万分の1とか10万分の1のリスクならば許容すべきという場合が多いとされている。それを考えると10万分の1のオーダーなのか1万分の1のオーダーなのかというのは大きな違いで,ここでリスクを過少評価側に間違えることは致命的な誤り。(もちろんリスクベネフィットが上述の意味でクリアに示されれば,1万分の1のリスクでさえ乗り越えられる場合もあるけれども,そんな評価はされていないわけだし。少し書き始めると次々に書きたいことが出てくるが時間が無いので無理。麻疹や風疹やジフテリアや百日咳やおたふく風邪や破傷風や水痘やポリオのワクチンはリスク一定の原則レベルでもリスクベネフィット評価からしても全世界的に受けた方が良いと言えるが,HPVは話が違う。WHOのポジションペーパー原文;なぜか厚労省の審議会資料にある仮訳だと表現がぼかされているが)を見ても,女性のカバー率が80%を超えたらジェンダーニュートラルな接種は費用対効果が悪いとか書いてあって,なぜ女性が怒らないどころか推進する女医がいるのか不思議。そのロジックならboys-onlyで100%接種だって,たぶん同じくらい子宮頸がんは減るはずだから)

コクランレビュー論文が謎だらけな件(2018年5月9日の鵯記

HPVワクチンのメタアナリシスがコクランレビューに載って有効性と安全性が確認された,と国内外の医療関係者(英国BBCのニュースBritish Medical JournalのNews英国National Health Service(NHS)のニュースIRISH TIMESの記事IRAN DAILYの記事ニュージーランドのHealth Centralなどでコメントしている人も含む)や毎日新聞BuzzFeed(毎日新聞記事を引用してのコメントだが)が一様に礼賛しているのだけれども,ちょっと見るだけでもいろいろ謎。

使われているワクチンが1価,2価,4価と書かれていたが,なぜ1価が入っていて9価が入っていないのかがまずわからない(古い研究しか使われていないのか? 似たようなメタアナリシスで別のグループから去年発表された論文では2価,4価,9価の臨床試験について書かれていて,メタアナリシスは2価と4価の結果しか出ていないので,たぶん9価の研究はまだ少ないのかもしれないが……)。最大の謎はRCTでの対照群にはアジュバントを接種という点。有効性評価はウイルス抗原が入っているかどうかだからロジックとしてわかるが,副反応はこのワクチンの効果を長期継続させるための特殊なアジュバントの影響が大きいのではないかと疑われているのに,対照群がアジュバントじゃダメだろ(今年発表された,メタアナリシスの発表バイアスを考えるために臨床試験をデータベース化したという論文の表1によると,製薬会社出資の研究とそれ以外の出資による研究に分けて集計されているのだが,プラセボ対照の研究では両者ともにそこそこ数があるけれども,アジュバント対照の研究は製薬会社出資の研究に限られているのが目立つ。しかし,これだと9価の研究も結構あるなあ)。

ワクチン群と副反応リスクに有意差はないと書かれているが,そもそもリスクが約7%という値は高すぎでは? 対照群は何のメリットもないのに,これだけ高い副反応重篤な有害事象って,倫理的に大丈夫なのか? 以前,セレノメチオニンサプリメントのRCTで,中間解析で糖尿病増加が判明したことで中止されたものがあったが,このレビューで取り上げられている副反応発生も研究中止しなくてはいけないレベルのように思う。ざっと見ただけだが,なんでこんな研究がコクランレビューに載ったのだろう? 時間が無くざっと見ただけなので後でちゃんと読んでみなければ(11日金曜朝,読む時間はまだないが,後でチェックするためリンクだけ追加した)。

子宮頸がんの死亡率(2018年5月14日の鵯記

▼子宮頸がん死亡率が上がっているというのはデマといっていい。少なくともミスリード。たぶん発信源は産婦人科学会のこれとかこれとかこの辺(またはそれを見た素人)か? 「2015年6月に発表された国のがん対策推進基本計画の中間評価報告書においても、主ながんの中で子宮頸がんのみ死亡率の増加が加速しています」という文章と棒グラフで,1995年に比して2005年,2005年に比して2015年に,75歳未満年齢調整死亡率が数パーセント増えているというのだが,時期的に勧奨の差し控えとは無関係だし,10万分の2前後の値の数パーセント(つまり100万分の1以下の)増減にどれほど意味があるのか疑問。「子宮頸がんの予防対策として細胞診による検診が行われてきましたが、日本の検診受診率が30~40%台(2013年は全国平均32.7%)であり、欧米先進国の70~80%台と比較して低いことから、検診のみでこれ以上子宮頸がんの死亡数を減少させることは難しい」という文章はロジックとしてまったくわからない。欧米の半分しかない検診受診率を上げることで早期発見を増やし死亡数を減らす余地が大いにあると考えるのが論理的帰結ではないか。

2010年の国際比較論文では,日本の子宮頸がんの年齢調整死亡率は先進国でも平均的なレベル。2016年の続報ではWHOのポジションペーパーを引用して検診とワクチンの併用を勧めているだけで,先進国における具体的な話は何も書かれていない。国立がん研究センターのデータによると最近は横這い。Rでグラフを描いてみると,1994年まで低下し続けていたのが1995年に急上昇したのはわかるが(これは他の死因と同様,死因分類がICD-9からICD-10に切り替わった影響と思われる),それ以降は増減しながらもほぼ横這いとみるべきだろう。
日本の女性の子宮頸がんの年齢調整死亡率(基準集団は世界人口)の年次推移

香港のデータでも横這いで(Figure 1),日本と同レベル(基準集団が同じかどうかわからないが)。ブラジルは日本よりずっと高い(これも基準集団が同じかどうかわからないが)。まあ当たり前か。韓国でAPCモデルで解析した論文があって,主旨が違うのでトレンドはわからないし基準集団もたぶん違うが,年齢調整死亡率は日本と同レベル。

▼そもそも4価ガーダシルの発売が2006年,サーバリックスの発売が2007年。日本でのサーバリックス承認が2009年,4価ガーダシル承認が2011年で,定期接種になったのは2013年4月から。積極的勧奨を控えると通知があったのは同年6月。積極的勧奨の差し控えで接種率が下がったとするなら,定期接種による高接種率は,年次統計から効果を見ることができるほど続いていない(参考)。経過時間が短すぎて,死亡率への効果はわからないとしかいえないだろう。

続・コクランレビュー論文について(2018年5月18日の鵯記

先週触れたコクランレビューの論文の件,結局本文はダウンロードできないので読めていないままだが,「深刻な副反応」というのが毎日新聞等の誤訳だとしても,原文abstractに"The risk of serious adverse events is similar between control and HPV vaccines in women of all ages (669 versus 656/10,000, RR 0.98 (0.92 to 1.05), high certainty)."と書いてあり,日本臨床腫瘍研究グループの臨床安全性情報取り扱いガイドラインによると「重篤な有害事象」であるところの"serious adverse events"(下枠内参照。コクランの論文は本文が読めないので何を「重篤な有害事象」としているのか不明だが,そんなに違いはないだろう)

重篤な有害事象または副作用とは、投与量にかかわらず、医薬品が投与された際に生じたあらゆる好ましくない医療上の出来事のうち、以下のものをいう。

①死に至るもの

②生命を脅かすもの 注) ここでいう「生命を脅かすもの」とは、その事象の発現時点において患者が死の危険にさらされている場合をいい、仮にもっと重度であれば死に至ったかもしれないという意味ではない。

③治療のための入院または入院期間の延長が必要となるもの

④永続的または顕著な障害・機能不全に陥るもの

⑤先天異常・先天性欠損を来すもの

⑥その他の医学的に重要な状態と判断される事象または反応

この場合において、直ちに生命を脅かしたり死や入院に至らなくとも、患者を危機にさらすおそれがあったり、または上記の定義に挙げられているような結果に至らないように処置を必要とするような「重要な医学的事象」は重篤であると判断すべきであり、そのような状態か否かについては医学的および科学的根拠に基づいて判断する必要がある。

が,ワクチン接種群だろうと対照(としてワクチンアジュバントまたは別の対照ワクチンを接種した)群だろうと,6.5~6.7%も生じるというのは高すぎると思う。対象者は患者ではなく,健康な若年女性ボランティアであるはずで,接種を受けることに(もしかしたら謝金は受け取っているかもしれないが,少なくとも身体的には)何のメリットもない対照群で,こんなに高い割合で「重篤な有害事象」が生じることが倫理的に許されるとは到底思えない(「観察期間が長いのでこれくらいの数値になります」と平然と書かれている医師? らしきtweetがあって,そこに「いいね」したりRTしている医療関係者が多数いらっしゃるのだが,心底問題ないと思っているとしたら,大変まずい認識だと思う)。参加者のインフォームドコンセントが十分だったかさえ疑問に思う(実際に使うとき,そんな説明をしたら同意するボランティアはいないんじゃなかろうか)。少なくとも,普通の治験なら中止にしなくてはいけないレベルだろう。繰り返すが,研究参加者の多くは健康な若年女性ボランティアであって,患者でもなければ高齢者でもないので,数年間の観察期間があったとしても,こんなに「重篤な有害事象」が生じるのはおかしい。ワクチン接種群と対照群でリスクに差がないという結果で,ともに高リスクなら,「ワクチンが有害事象発生を高めることはない」という推論ではなく,「共通して入っている成分(つまりアジュバント)が有害事象発生リスクを高める可能性がある」と推論する方が論理的帰結ではないか? 「観察期間が長いのでこれくらいの数値になります」を是としている方々にお尋ねしたいのだが,本当に他のワクチンの治験でも「重篤な有害事象」が生じる確率はこんなに高いのですか?

ちなみに,米国FDAのガーダシル4の認可関係の文書を見ると,7ページから"serious adverse reactions"について書かれているが,"serious systemic adverse reactions"(重篤な全身性の有害反応)を示したのは,ガーダシルを接種した15,706人のうち128例,AAHS(アルミニウム含有アジュバント)プラセボを接種した13,023人と生理食塩水プラセボを接種した594人のうち130例,とされていて,両群とも約1%である。これでも健康な人に打っていることを考えたら高いと思うが,1%と7%の差を,全身性の有害事象に絞ったことと観察期間の差だけに帰するのは,少々無理があるのではないか。この文書にも問題があって,プラセボ群の130例の内訳(どちらのプラセボだったのか)が書かれていない。生理食塩水プラセボを打った群での重篤な全身性の有害反応の数字を明記しておいてくれれば,いろいろな疑問が氷解するのに,残念としかいいようがない(もし130例のすべてがAAHSプラセボ群ならば, prop.test(c(130,0), c(13023, 594))で検定すると5%水準で生理食塩水プラセボと有意な差があるといえるので,AAHSが重篤な有害事象を起こす可能性が示唆されるし,その場合は認可されなかったかもしれない。だから,内訳を書くことには統計的にも大きな意味がある。その場合,ガーダシル接種群と生理食塩水プラセボの比較でもprop.test(c(128,0), c(15706, 594))と5%水準で有意な差が出る)。というか,そもそも2種類のプラセボを用意する理由としては,副反応評価のためにはAAHSプラセボではなくて生理食塩水プラセボを対照として使うため以外の理由は考えられないのだが,なぜそこの情報が記載されていないこの文書にFDAが文句を言わないのかわからない。次の段落に,全員(29,323人)のうちワクチン関連と研究者によって判定されたのは,重篤な全身性の有害作用を示した人の0.04%だったと書かれているが,この0.04%という数字だけ人数が付記されていないのは不思議に思った("of"を普通に解釈するとこう読めるが,もしそういう意味ならこれは悪文で,「全員のうち」よりも,前段を受けて「重篤な全身性の有害反応を示した人(合計258例)のうち」と書いた方が誤解しにくい)。なお,日本のPMDAにあるガーダシルの説明文書には米国FDA文書に載っている「重篤な全身性の有害反応」の数字はなく,「重大な副反応」としていくつかの症状が「頻度不明」で載っているだけであり,接種を受ける人に対する十分な情報提供になっているとはとてもいえない。最新の正確な情報を提供することが何より大事だし,それは提供者側の義務である,というのが,医療法に書かれているインフォームド・コンセントの主旨なので,もし今でもガーダシルの添付文書がこれだとしたらMSDは説明義務を怠っていると言えるのではなかろうか。

リスク管理の原則では,あるリスクの削減方策を実施する前提の一つとして,その方策が別のより大きなリスクを生まないという条件が満たされねばならないのだが,年齢調整死亡率が10万分の2とかのレベルの死亡を防ぐために100分の7の確率で起こる重篤な有害事象リスクを受け入れろというのは,この原則に反している,というか,あまりにもバカげている。こうまで強引に支持されると,逆に何かあるんじゃないかと勘ぐりたくなってくるほど。

人口学会数理モデルセッションにて(2018年6月3日の鵯記

感染症の数理モデル
第5演者は東京理科大の江夏さん。バックグラウンドは応用数学で感染症の数理モデルをしている。とくに時間遅れのある感染症伝播モデルが専門。パンデミックの事前回避のための流行規模の予測が有用。感染症の流行メカニズムを定式化。Malthusモデル+Kermack-McKendrickモデルの話と,近年の応用という話。イントロ部分は広く知られている話。Kermack-McKendrickでは,R0=βS(0)(1/γ)。データからR0を計算する方法はContagionでも出てくるという話。出生と死亡を考慮したSIRとしてHethcote (1976)の紹介。b=dのときは似たような微分方程式を立てることができ,終局的な感染予測ができる。b=0.01,d=0.0123だと1/d=80.98が平均寿命となりデータに当てはめやすい。厳密解を解くことが難しい場合でも,平衡点の安定性解析をすれば,収束点がわかる。個体の空間移動を考慮したモデルとかも立てることができる(出典:Du, Lin, J. Eur. Math. Soc. 17 (2010) 2673-2724)。質疑。最近の日本でクラミジアや淋病はそんなに増えていないのに梅毒だけ凄い勢いに増えている(とくに若い女性で)のは何故か? ということにimplicationある? 今後共同研究できれば,という話。bを考える話としては,難民や災害で新生児へのワクチン接種ができないときに麻疹のアウトブレイクが起こるという話があるが,どれくらいカバー率が下がるとアウトブレイクが起こるのかという境界条件の研究とかされているのかなあ。
性器ヘルペス感染症に対する数理モデルの構築と解析
第6演者は神戸大学の國谷さん。性器ヘルペス感染症(HSV-2)に対し,ワクチン効果と免疫の失効,再発の影響を考慮できる数理モデルを構築する。R0を導出し平衡点の安定性解析。SIRの例示。R0の説明。SIRではR0=β(b/μ)/(1+(μ+γ))。Gao et al.(2016)によるとブラジルのジカ熱のR0は2くらいだった。2種類の平衡点。R0>1のときはendemicな平衡点,R0<1のときはdisease-freeな平衡点が安定。R0>1でendemicな平衡点で安定であると仮定されることが多いが,これは自明ではなく不安定になる(周期解とか)こともありうる。安定性解析が必要。HSV-2については,ワクチンは未開発。再発リスクあり。Blower (2004),Alsallaq et al.(2010)はワクチン効果の検証をしているが,安定性解析はされていない。Lou et al.(2012)は女性のみワクチン接種可能なモデルを立てているが,最適なワクチン配分の男女比は議論されなかった。今回はSVIRモデルを立て,その辺も検討。Vはワクチン接種人口。防御は完璧で無い。1-σがワクチン効能。再発の項が特徴的。dI(t)/dt=(S(t)+σV(t))βI(t)-()I(t)+∫[0,+∞] δ(ξ)γI(t-ξ)exp(-μξ)dξ。さらに集団構造を考える。iとして個体の異質性(性別やパートナー数などを示す添え字)を考慮した拡張。E*としてendemicな平衡点,E0としてdisease-freeな平衡点,次世代行列,基本再生産数を求めた(Wang, Tessmer, Omori, 2017)。2001年~2014年の米国性器ヘルペス感染症の患者報告数データを利用。過去一年間のパートナー数が0人~5人以上の6通り×男女でiは1:12。R0=2.07 [2.03, 2.11]となり,感度分析すると2~3の範囲となった。σが0.3以下ならば接種率vを上げることでR0<1にできるが,0.4以上だとvを上げてもR0<1にできない。接種率より効能が重要。男女配分は,均等にした方がR0を最小化できることがわかった。質疑。これ面白いなあ。HPVVのWHOのポジションペーパーだと女性だけ80%以上ワクチン接種すれば男性にはしなくていいなんて書かれているが,それってHPVとHSV-2の違いなのだろうか? と尋ねたら,HSV-2は再発が特徴的で,そのせいかもしれないということだった。もちろんWHOのポジションペーパーで採用されている研究が妥当でない可能性だってあるわけだが,ウイルス感染の自然史が異なるならモデルが違って当然だから,そこを確認してみたわけだ。ただ,再発の違いで男女配分の違いが出てくるとは思えないがなあ。早乙女先生から,再発中の感染リスクが変わるなど,実はもっと複雑というコメントがあった。

人口動態統計で肺炎の死因順位が下がったこと(2018年8月14日の鵯記

人口動態統計の平成29年の月報年計(概数)の死因別死亡では前年まで3位だった肺炎が5位になり,変わって再び脳血管疾患が3位になったということが,EARLの医学ツイートで取り上げられているが,これって,単純に考えて,2014年から予防接種法のB類として高齢者の肺炎球菌ワクチン接種を取り入れた効果じゃないのだろうか。

インプットは重要(2018年10月16日の鵯記

ノーベル賞受賞者の本庶先生がどうしてあそこまで積極的にHPVワクチン接種勧奨再開を提言されるのか謎だったが,村中璃子氏のtweetを見て合点がいった。どんなに聡明な人でも情報のインプットが偏ると判断を誤ることがあるというのは,中西準子さんに対して宇井純さんが語っていたことだが,同じ問題が起こっているように思う。


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