Latest update on 2026年5月13日 (水) at 12:24:56.
【第2076回】 会議とか講義とか(2026年5月11日)
- 月曜は会議と講義と卒業研究対応のため名谷に出勤。
- いろいろ終わったら19:00を過ぎていたので帰途に就く。
- 今年の卒研生は全員就職希望なので、関心があるテーマの中で無難にできそうなものを相談しながら探っていくという形で進めていて、今日測定機械を貸与して、後は測ればデータはでるだろうと思われるので、4人中1人はゴールが見えた。
- その関連で、卒業研究についてつらつら思い出したことをメモしておく。プロフィールに書いた通り、ぼくは小学校6年生のとき複合汚染(と後に沈黙の春)を読んで研究者を志し、東大人類生態で鈴木継美先生と大塚柳太郎先生に師事して研究者になった。2年生の冬学期が終わる頃、鈴木先生と初めての面談のとき、ぼくは複数の微量な有機汚染物質の同時曝露が生体に及ぼす影響を、たしか鯉か何かの魚を使って実験したいと言って、そんな研究は何十年も前に終わっとると言われ、卒論は新しい人口モデルを作るというある意味無謀な試みにテーマを変えた。結果、モデルとしては完成しなかったのだが、別に後悔はない。このときの、「そんな研究は何十年も前に終わっとる」という鈴木先生のお言葉は、本当にやりたいのだったら、ちゃんと先行研究を調べて、反論できるファクトを示す覚悟を問われていたのだ、とずっと思っていた(実際、複数の有機汚染物質の同時曝露の影響など、いまだにわかっていないことが多いし、テオ・コルボーンの『奪われし未来』がベストセラーになって内分泌攪乱化学物質に世界の注目が再び集まったのは、ぼくが助手だった頃だし)。ただ、たぶんその認識ではまだ不十分だということに気づいたのは、自分が学生を指導するようになって暫く経ってからだった。学生がやりたいテーマとして、複数の微量な有機汚染物質の魚への同時曝露の影響を見るというだけでは、まだ雑すぎて、具体的なResearch Questionになっていないので、実験計画が立てられないのだ(しかも、ざっくりと考えても、得られるデータを解析するには複雑な統計モデルが必要で、疫学教室で開発されてPC9801で使っていたHALBAUのメニューにはなかったし、医学図書館のコンピュータで使えたSPSSでもSASでもたぶんプロシージャとして実装されていなかったようなモデルの当てはめが必要になったと思う。そういう意味ではRやPythonでさまざまな解析手法が無料で実行できる、いまは幸せな時代だと思う)。そこを乗り越えて具体的なResearch Questionを立てられたとしても、それまで指導経験がないテーマである場合、よほど学生に自力で進める覚悟がないと(それは普通は卒業研究で求めるものではない)、実験過程で遭遇する可能性がある具体的な困難を乗り越えるためのアドバイスに限界があり、空中分解する危険がある(まあ、人口モデルも空中分解に近かったが、理論研究なので、動物の命とか実験にかかる予算といった対価は必要なく、自由にさせてくれたのだろうと思う)。自分と同期の岩井君の卒論は、異なる環境温における異なる投与量のセレンのマウスへの投与がもたらすメタロチオネイン誘導の違いについての原著論文にもなっているが、彼の研究は、それまで研究室の先輩がやっていたセレンや水銀の動物実験の経過を踏まえ、research gapに適切にaddressするresearch questionを立て、それを定量的に明らかにするための実験計画を詰め、プロトコル通りに実験を進めてデータを取り、それを分析して先行研究と照らし合わせて考察するという流れが明確であった。当時の人類生態では水銀やセレン、亜鉛、カドミウムといった元素の分析については多くの研究が進められていたが、有機汚染物質は誰も扱っていなかったので、先行研究のレビューも適切なresearch questionを立てることも、もしやるならすべて自分が一からやる必要があった。それをわかっていて、それでもやりたいのだというためには、自力で具体的に実施可能な研究計画の案を作るところまでは辿り着いている必要があったし、ぼく自身にそこまでの覚悟も能力も経験もなかった。まあ、実際にそういう卒業研究学生が来たら、どういう形でencourageしたら良いか悩ましいところだと思うが、いままでのところ、そういう学生には出会っていないなあ。
- ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』と『銀河の一票』は相変わらず良い。
- 日刊スポーツの政界地獄耳というコラムで触れられていた(5/12にはもう消えてしまっている)、現政権による緊急事態法はナチス・ドイツの全権委任法と本質的に同等であるという(主旨だったと記憶している)指摘はもっともだと思う。麻生氏が以前提唱していた、ワイマール憲法下でその精神に反する全権委任法を成立させたやり方に倣って、日本国憲法下でその精神に反する緊急事態法を成立させてしまって既成事実を作ろうというのが、現政権の目論見と思われる。
🦋 (list)
▼前【2075】(ダメな日曜(2026年5月10日)) ▲次【2077】(講義3コマ(2026年5月12日)) ●Top
🦋 = Cite and link this article to post bluesky, if you have logged in bluesky.
Notice to cite or link here | [TOP PAGE]